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差押禁止財産とは?差し押さえられない物をわかりやすく解説!

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リーガライフラボ

自分で購入した物は、自分で自由に処分できるのが原則です。
もし強引にその物を奪っていった人がいたなら、その人に損害賠償を請求することになるかもしれませんし、警察に窃盗罪や強盗罪の被害届を提出することになるかもしれません。ところが、所有者の意思に反して、強制的にそのモノを処分しても合法な場合があります。それが「差押え・強制執行」です。
今回は、差押えがどのようなものなのかをはじめ、差押えの対象となるものなどについて弁護士が詳しく解説します。

差押えとは

差押えとは、

金銭債権を強制執行できるようにするため、債務者が財産譲渡などの事実上または法律上の処分をすることを禁じる目的で行われる手続き

引用:三省堂編修所(編集)『デイリー法学用語辞典』三省堂 236P

のことです。

一般的に差押えというと、財産を強制的に奪うことまで含むイメージかもしれません。
しかし、財産を奪う手続きは「強制執行」にあたり、「差押え」はあくまでも処分を禁じる手続きです。

簡単な事例を想定してみましょう。

X社から500万円を借りていたAさん。お金を返せなくなってしまったAさんは、唯一の財産であるY銀行の預金200万円を引き出して、行方をくらまそうとしています。

もしAさんがY銀行の預金を引き出して行方をくらましてしまったら、X社はお金を回収することができません。X社としてはY銀行に、Aさんに引き出さないで欲しいと伝えたいところです。
この申し出が法的に認められたものを「差押え」だとイメージするとわかりやすいでしょう。

一方、Aさんは唯一の財産である200万円を引き出せなくなったら、生活に困ります。
このように差押えは個人の財産権に対する重要な制約にあたるため、きちんと手続きを踏む必要があります。
そこで必要となるのが「債務名義(さいむめいぎ)」です。

債務名義とは、

法律上執行力を認められている公の文書であり、強制執行によって実現されるべき請求権の存在・範囲を表示する文書

引用:三省堂編修所(編集)『デイリー法学用語辞典』三省堂 233P

のことです。
簡単に言うと、債務名義とは、強制執行できる範囲を明確に示した公的な文書です。

先ほどの事例で、本来であればY銀行は預金者であるAさんに支払って問題ないはずです。
逆に、突然、何の根拠もなくX社が「Aではなく私に200万円を渡してほしい」と言っても、Y銀行はX社の言い分を信じずに払戻しには応じないでしょう。そのような状況において、裁判所のお墨付きである債務名義をX社が提示すれば、混乱を抑えられるというわけです。

実務においてよく用いられる債務名義は次の4つです。

  • 確定判決……確定した裁判所の判断
  • 仮執行宣言付判決……直ちに執行できることを許した裁判所の判断(未確定でもOK)
  • 和解調書……裁判所が和解の内容をまとめた書面
  • 執行証書……一定の条件を満たす公正証書

差押え可能な財産

では、どういったものが差押え可能なのかをみていきましょう。

(1-1)不動産

民法上、土地及びその定着物が不動産として扱われています(民法86条1項)。
ただし、不動産に対する強制執行においては、灯篭など登記することのできない土地の定着物は、不動産ではなく動産として扱われます(民事執行法43条1項かっこ書)。
一方、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行では、不動産の共有持分、登記された地上権及び永小作権並びにこれらの権利の共有持分は、不動産として扱われています(同条2項)。

執行方法の違いはあるにしても、不動産としてイメージされるものは差押え可能であると考えて良いでしょう(あくまでイメージの話ですので、実際に、強制執行をするという場面では担当の弁護士等に詳細をお尋ねください)。

(1-2)債権

次の条件を満たす債権は、差押えの対象となります。

  1. 原則として執行開始当時に債務者(差押えを受ける人)に属する債権
  2. お金に換えることのできる独立の債権
  3. 債務者以外でも行使できる債権
  4. 差押禁止債権に該当しない

これらの条件に付いてもう少し詳しくご説明します。

  1. 執行開始当時に債務者に属する債権
    条件付き債権(「出世したら返す」のように〇〇したらという条件の付いているもの)や期限付き債権(「2021年1月1日に返す」という期限のついているもの)でも差押えの対象になります。
    また、退職金債権(の4分の1)や保険契約の解約返戻金請求権のように、将来支払ってもらえる債権も差押禁止財産ではありません。具体的には、発生の基礎となる法律関係が既に存在しており、かつ、近い将来その債権の発生が見込まれ、特定できる場合には、差押え可能です。

  2. お金に換えることのできる独立の債権
    医療契約に基づく診療を受ける権利などお金に変えることのできない権利は差押えできません。

  3. 債務者以外でも行使できる債権
    当事者間で「第三者に譲渡しない」と約束していても差押えはできますが、扶養請求権のように差押債務者にしか行使できない権利(一身専属権)は、差押えすることができません。

  4. 差押禁止債権に該当しない
    例えば、債務者等の生活に欠かせない衣服、寝具、台所用具、畳、建具、1ヶ月分の食料などは差押え禁止債権です。
    基本的に給与(原則手取りの4分の1まで)、預金、売掛金などは、差押えの対象です。

(1-3)動産

動産執行の対象となるのは、次の4つです(民事執行法122条1項など)。

  • 土地及びその定着物を除く有体物
  • 登記することのできない土地の定着物
  • 土地から分離する前の天然果実で1月以内に収穫することが確実であるもの
  • 裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券(手形・小切手など)

身近な例としては、66万円を超える現金、車、貴金属等が差押え可能な財産に該当します。

差押禁止財産とは?

差押禁止財産には、「差押禁止動産」(民事執行法131条)と「差押禁止債権」(同法152条)の2つが存在しますので、その2つについて詳しく解説しましょう。
ただし、後述しますとおり差押え禁止の範囲は変更可能であることを覚えておいてください。

(1)差押禁止動産

民事執行法131条では、差押禁止動産が次のとおり規定されています。

一 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料
三 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭
四 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
五 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
六 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
七 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
八 仏像、位牌はいその他礼拝又は祭祀しに直接供するため欠くことができない物
九 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類
十 債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
十一 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
十二 発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
十三 債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
十四 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

引用:民事執行法131条|e-Gov法令検索

上記の「三 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」とは、66万円以下の金銭(民事執行法施行令1条)をいい、66万円以下の金銭は原則として差し押えできません。

民事執行法131条のほか、生活保護法58条(生活保護金品や進学準備給付金)や信託法23条(一部の信託財産)のように個別法で差押えが禁止されていることがあります。

(2)差押禁止債権

民事執行法152条では、差押禁止債権が次のとおり規定されています。

1 次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。
一 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権
二 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権
2 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。
3 債権者が前条第一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。

引用:民事執行法152条|e-Gov法令検索

差押禁止動産同様、民事執行法152条のほかに生活保護法58条(生活保護で受給する権利などは)や厚生年金保険法41条・国民年金法24条(公的年金を受給する権利 ※)のように個別法で差押えが禁止されていることがあります。
※公的年金を受給する権利は、国税滞納処分など例外的に差押え可能な場合があります。

差押禁止財産の範囲を変更するポイント~年金を例に~

国民年金や厚生年金は、原則として差押禁止財産です(国民年金法24条、厚生年金保険法41条)。

ところが、これらの公的年金が預金口座に入金された時点で「公的年金」ではなく、単純な「預金」扱いとなるため、差押え対象になってしまいかねません。
もっとも、本来債権者が当てにすべきでないお金が入金された途端、債務者から奪われてしまうのは不合理でしょう。また、公的年金が差し押さえられると、債務者が最低限の生活を維持できなくなるおそれがあることには変わりません。

そこで、裁判所に「差押禁止範囲変更」の申立てをして、年金の入った口座への差押えも禁止の対象として認めてもらうことで、年金の差押えを防ぐことができる場合があります。

例えば、主に次の2つのことを立証できた場合に、差押禁止範囲の変更の申立てが認められることがあります(その他にも一定の事項を疎明する必要があります)。

  1. この口座に残っているお金の出どころが公的年金給付によるものであると特定できること(その口座を公的年金受給のみに使用している場合など)
  2. 公的年金の入った口座を差し押さえられると生活を維持することができないこと

債権者が取立てを完了するまで、つまり、預金を引き出してしまうまでに差押禁止範囲が変更される必要があります。
というのも預貯金口座の差押えの場合は、債権者が取立てをしてしまったら、差押禁止財産の範囲の変更の申立てをしても、差押禁止財産の範囲の変更は認められなくなってしまうからです。

差し押さえられた人(債務者)が、債権差押命令正本を受け取ってから1週間経過後に債権者は取り立てが可能となってしまいます。
そのため、「差押禁止範囲変更」の申立ての際には、取り立てを一時的に止めるため、「支払その他の給付の禁止」を裁判所から命じてもらう必要もあります(民事執行法153条3項 ※この際、債務者が担保を立てる必要があるとされることもあります)。

なお、「転付命令」というものが出されている場合は、「支払その他の給付の禁止」を命じてもらうだけでなく、「執行抗告」というものを提起して、転付命令が確定しないようにする必要もありますので注意しましょう。
差押禁止範囲変更の申立てには様々な書類を準備する必要があります。

支払督促や差押予告通知が届いた段階で、その後の対応を弁護士に相談することをおすすめします。

【まとめ】借金を滞納して差押えをされる前にアディーレ法律事務所にご相談を!

金融機関が費用をかけて強制執行しようとするのは、財産のある人です。
そのため、無職で、不動産や預金、自動車、時計など目立った財産がなければ金融機関も強制執行をしようとは思わないかもしれません。しかし、「強制執行しない」とは言い切れません。生活に必要最低限の範囲で差押禁止財産が定められているとはいえ、自分の財産を自分の意思に反して第三者に奪われる精神的なダメージは大きいでしょう。
早めに弁護士に自己破産など債務整理を依頼することで、差押えを回避できる可能性があります。借金の返済が困難な場合は、自己破産を含めて債務整理を検討する必要があります。
債務整理についてお困りの際はアディーレ法律事務所にご相談ください。