離婚届の不受理申出とは?申し出の方法や注意点を弁護士が解説

  • 作成日

    作成日

    2023/12/28

  • 更新日

    更新日

    2024/02/14

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目次

離婚届の不受理申出とは?申し出の方法や注意点を弁護士が解説
「離婚したくないけれど、夫(妻)が勝手に離婚届を提出してしまったら、どうしよう…」

このような状況でお悩みの方はいないでしょうか?

離婚の成立には、法律上、夫婦の離婚の意思および離婚届の提出意思が必要だと考えられています。
しかし、離婚届は形式的な不備がなければ役場に提出できるため、夫婦の一方が勝手に離婚届を提出すると、戸籍上は形式的に離婚が成立してしまう、という事態が生じかねません。

そこで、このような事態を事前に防ぐために、離婚届の不受理申出という制度があります。

このコラムでは、離婚届の不受理申出について弁護士が解説します。

離婚届の不受理申出とは

離婚届の不受理申出は、配偶者が勝手に離婚届を提出したせいで、戸籍上は離婚したことになってしまう事態を予防するための制度です。

そもそも、婚姻、離婚、養子縁組などは、市区町村役場への届出によってその効力が生じます。
届出という簡単な手続によって、夫婦や親子といった身分関係が変動するため、届出は当事者間の合意が前提とされています。

離婚の場合、当事者に離婚の意思や届出の意思が必要だと考えられており、そのような意思がなければ、離婚は無効です。

しかし、役場の窓口では、合意があるかどうかなど実質的な部分までは調査できません。

協議離婚(夫婦間の話合いによる離婚)は、離婚届の提出によって成立し、その効力を生じます(民法第764条、第739条)。
そのため、一度勝手に離婚届が提出され、形式的には離婚が成立してしまうと、離婚を無効とするためには家庭裁判所での調停や訴訟といった手続が必要になってしまうのです。

そこで、不受理申出の制度が設けられています。

ちなみに、離婚届の不受理申出の有効期限は、申出人が取下げをしない限り、無期限です。

夫婦で話し合った結果、離婚に合意できたら、離婚届不受理申出を取り下げたうえで、離婚届を提出することになります。

協議離婚であれば、次のような流れになります。

【離婚届の不受理申出をしてから、離婚が成立するまでの流れ】

  1. 離婚届の不受理申出をする

  2. 離婚について話し合う

  3. 離婚に合意する

  4. 離婚届の不受理申出を取り下げる

  5. 離婚届を提出する

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不受理申出をする理由

離婚届の不受理申出は、勝手に離婚されてしまうのを防ぐ制度ですが、この制度を利用する理由の多くは、次の2つです。

(1)離婚条件などに合意できたタイミングで離婚するため

口論
夫婦によっては、離婚意思はなくても、何らかの理由であらかじめ必要事項を記載した離婚届を配偶者に交付している方もいます。

また、一度は離婚に合意して離婚届を配偶者に交付したけれども、「やはり離婚したくない」、「離婚条件の話合いが不十分だから、納得できるまでは離婚したくない」など、あとから離婚意思や届出意思を失う方もいます。

しかし、必要な事項が記載されているなど、形式的な要件を満たしていれば、離婚届が役場に受理され、戸籍上は離婚が成立したとして取り扱われることは、先ほども述べたとおりです。

そのような場合に備え、離婚届の不受理申出をしておくことで、離婚や離婚条件についてしっかりと話し合い、合意ができたタイミングで離婚を成立させることができるのです。

(2)親権を勝手に取られないようにするため

家族
夫婦に未成年の子どもがいる場合、離婚する際には、親権者をどちらにするか決めなければなりません(民法第819条1項)。
離婚届には、どちらの親が未成年の子どもの親権者となるのか記載する欄があります。
配偶者がその欄を勝手に記載して提出すると、親権を失ってしまうことになりかねません。

離婚自体には合意していても、親権を争っているときには、親権者を記載した離婚届を勝手に提出されることを防ぐために、離婚届の不受理申出を行うことがあります。

離婚自体には合意していれば、親権者の欄以外の必要事項を記入しておくこともあるでしょう。
しかし、親権で争っている場合、どちらかが勝手に親権者指定の部分まで記入して離婚届を提出してしまいかねません。
それを避けるために、不受理申出の制度が利用されることもあります。

離婚届の提出により形式的に離婚が成立してしまったあとに、当事者の話合いだけで親権者を変更することはできません。
家庭裁判所に親権者変更の調停を申し立てることが必要です。
親権者を指定する調停が成立するか、調停不成立の場合には親権者を指定する審判が確定したあとに、役場に親権者変更届を提出することになります。

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そもそも離婚届を勝手に作成し、提出するとどうなるのか

そもそも離婚届を勝手に作成し、提出するとどうなるのか
離婚届の配偶者の署名欄に勝手に署名したり、勝手に提出したりする行為には、次のような犯罪が成立する可能性があります。
・有印私文書偽造罪(刑法第159条1項)
・偽造有印私文書行使罪(同第161条1項)
・電磁的公正証書原本不実記録罪(同第157条1項)
ただし、繰り返しになりますが、たとえ勝手に離婚届を作成され、提出されたとしても、不受理申出をしていなければ、離婚は成立すると考えられます。
一度成立した離婚を無効にするためには、家庭裁判所に協議離婚無効確認の調停の申立てを行うなど、裁判上の手続が必要です。

不受理申出の方法

離婚届の不受理申出を行う方法を具体的に説明します。

(1)離婚届の不受理申出書を入手する

まずは申出書の書式を入手しましょう。
書式は、居住する自治体の役場で入手可能です。
窓口で書式を受け取ることもできますし、自治体のHPからダウンロードできることもあるため、まずはHPを確認しましょう。

(2)必要事項を記入する

次に、書式に従って、必要事項を記載します。
必要事項は、たとえば次のような事項です。
• 申出人および配偶者の氏名、生年月日、住所および本籍
• 申出人の署名押印
• 申出人の連絡先     など

(3)提出する

提出先は、申出人の本籍地の市区町村役場の窓口が望ましいですが、遠方に居住しているなどで難しれば、居住地など任意の市区町村役場での提出も可能です。

窓口名は、市区町村役場によって異なりますが、「住民課」「戸籍課」などが担当していることが多いでしょう。
提出時には、本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)が必要ですので、忘れずに持参してください。

不受理申出の取下げ方法

話合いによって離婚に合意できたなど、不受理申出が必要なくなったときには、取り下げます。
取下げ書の書式は役場で入手可能ですので、本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)を準備して役場に行き、役場で取下げ書に記載して提出しましょう。

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離婚届不受理申出について知っておきたいこと

離婚届不受理申出に関して、知っておきたいポイントを解説します。

(1)申し出は配偶者に気付かれるのか

役場に離婚届不受理申出をしても、申し出があったことは配偶者に通知されません。

ただし、配偶者が実際に離婚届を提出すると、不受理申出の効力により、役場は離婚届を受理できません(戸籍法第27条の2第4項)。
そのため、配偶者が離婚届を勝手に提出した場合、その際に不受理申出をしたことを知られると考えられます。

なお、勝手に離婚届を提出されると、その事実は申出人に通知されることになっています(同第5項)。

(2)休日でも提出できるのか

離婚届の不受理申出は、戸籍の窓口が閉まっている夜間や休日であっても、所定の窓口で提出できます。

具体的な時間や休日のスケジュールなどは各自治体で異なるため、事前に確認するとよいでしょう。

ただし、夜間窓口では申し出を「預かる」だけで、書式に不備があるかどうかまでは確認しません。

そのため、あとで不備があるとわかり、修正して再提出するよう求められることがあります。
再提出するとなると、修正している間に離婚届が提出されてしまうおそれがあるため、なるべく早い対応が必要です。
したがって、提出は平日の日中が望ましいでしょう。

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【まとめ】離婚届不受理申出は勝手な提出を防ぐための制度!早めの対応が吉

離婚届の不受理申出は、夫婦の一方が離婚届を勝手に作成し、提出してしまうのを防ぐ制度です。

離婚届が提出され、戸籍上形式的に離婚が成立してしまうと、調停や訴訟を経なければ離婚の効力を否定できないため、余計に時間や労力がかかってしまいかねません。

そのため、配偶者に勝手に離婚届を提出されてしまうおそれがある場合には、速やかに離婚届不受理申出を提出しておくようにしましょう。

また、離婚やその条件についての話合いがこじれている場合や、配偶者との話合い自体にかかるストレスが大きい場合には、弁護士が代わりに配偶者と話し合うこともできます。
一度、離婚問題を取り扱っている弁護士に相談してみるとよいでしょう。

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この記事の監修弁護士

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

林 頼信の顔写真
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