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報復人事かも?不当な異動の定義と事例、被害に遭った時の対処法とは

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「上司に意見したら突然、へき地に転勤を命じられた。これって報復?」

報復を目的とした人事(報復人事)の場合、ケースによっては無効であったり、慰謝料請求が認められる可能性があります。

  • 報復人事の定義と事例
  • 報復人事の被害に遭った時の対処法

について弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

報復人事とは?

報復人事とは、法律上の用語ではありませんが、一般的に、「人事権を持つ上司や担当者などが、特定の労働者に報復をするために、降格や異動を命じること」を意味します。
報復人事は、懲罰人事と呼ばれることもあります。

報復人事はパワーハラスメントの一種にあたることもあります。

報復人事の人事異動には「転勤、転籍、出向、昇格、降格、昇進、降職」などが含まれます。
転勤と同時に昇格をした場合、社内では単なる配置転換に過ぎないと捉えられることもあります。

報復人事のよくある原因

では何をきっかけに報復人事が行われるのでしょうか。
報復人事を受けやすいケース、よくある原因を紹介します。

(1)内部告発・内部通報

内部告発や内部通報は本来、企業内の問題や違法行為を明らかにし、是正を図るためのものです。
しかし、従業員の内部告発に対して企業側で「会社を裏切った」と捉えた場合、内部告発が原因で報復人事につながることもあります。
例えば、上司の不審な行動をコンプライアンス室に通報した部下が、業務上の必要性とは無関係な配置転換を受けた場合、報復人事である可能性があります。

(2)上司とのそりが合わない

上司に対して業務改善の意見を頻繁に伝えたり、上司の意にそぐわない行動が多い部下も、報復人事の対象になりやすいです。
例えば、上司と部下が業務対応を巡って口論になった直後に配置転換され、その人事の必要性が乏しい場合は、報復人事である可能性があります。
ただし、対象社員の適性や業績に問題があった場合は、意見の衝突が原因の報復人事ではないこともあるため、この判断は難しいともいえます。

(3)勤怠状況があまり良くない

遅刻や早退、欠勤が過剰に多い場合、それが原因で業務がまわらず、上司自身が「損をしている」と感じた場合に、報復人事につながることもあります。
ただし、遅刻、早退、欠勤が過剰に多い場合には、これ自体が人事異動の理由にもなり得るため、報復人事であるかの判断は難しいことが多いです。

また、有給休暇や残業代請求といった法律的に認められたことでも、企業や上司の反感を買い、報復人事につながることもあります。

(4)法定休暇を取得した

例えば、育児休暇や介護休暇、産前産後休業などは、労働者の権利です。
しかし、長期休暇をとりにくい雰囲気や風土のある会社の場合、こうした休暇・休業の取得をするだけで、反感を買って報復人事につながることもあります。

報復人事と普通の人事異動の違い

報復人事と感じられる状況に陥った場合、多くの人が「これは正当な人事なのか。それとも不当な人事なのか?」という点で頭を悩ませるものです。

まず、会社には基本的には人事権があります(ただ一部の人事の場合には、就業規則等の労働契約上の根拠が必要と考えられています)。

会社に人事権があると認められる場合で、以下のような適正な目的を根拠とした適正な人事異動は、会社の判断で行うことができます。

  • 適材適所
  • 人材育成
  • 雇用の維持
  • 不正の防止 など

労働者自身が受けた人事が「報復人事かどうか?」を考えるには、これらの本来の目的に合っているかも大事なポイントになります。
一方で報復人事は基本的に、嫌がらせを目的としていると言っても過言ではありません。
そしてこのような嫌がらせを目的とした報復人事、「人事権の濫用」にあたると考えられます。
「人事権の濫用」とは、社会通念上妥当な範囲を逸脱した人事権の行使であること、正当性が認められないことをいいます。

人事権の濫用と判断されるときは、当該人事が違法となります。

報復人事が人事権の濫用と認められる基準とは

では、報復人事が人事権の濫用と認められるのはどのような場合でしょうか。

従業員が報復人事と感じる状況が人事権の濫用にあたるかどうかは、労働契約内容や人事異動の内容によっても変わってきます。

ここでは、報復人事で多い配置転換と降格について、過去の判例から見えてくる基準やポイントを紹介します。

(1)配置転換の場合

東亜ペイント事件(最高裁第二小法廷判決昭和61年7月14日労判477号6頁)では、転勤命令が人事権の濫用にあたるか、が争われました。

(1-1)人事権行使の可否

まず、当該判例では、次の理由により「当該会社は個別的同意なしに当該労働者に転勤を命じる権限がある」と判断されています。

  • 労働協約及び就業規則には、当該会社は「業務上の都合により転勤を命ずることができる」旨の定めあり
  • 現に当該会社では、特に営業担当者の転勤を頻繁に行っている
  • 当該労働者は営業担当として入社
  • 労働契約の際も勤務地を大阪に限定する旨の合意はない

(1-2)人事権濫用の有無

このように当該企業には転勤を命じる権限があると判断されたわけですが、いかなる場合にも転勤命令が許されるわけではありません。
転勤命令が人事権の濫用となり得るのは例えば、次の場合であると判示しています。

  1. 転勤命令に業務上の必要性がない場合
  2. 当該転勤命令には他の不当な動機・目的がある場合
  3. 労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合

当該判例では、以下のような「企業の合理的運営に寄与する点がある」場合は、「1.転勤命令には業務上の必要性があり」、と判示されています。

  • 労働力の適正配置
  • 業務の能率増進
  • 労働者の能力開発
  • 勤務意欲の高揚
  • 業務運営の円滑化など

なお、

当該転勤先への異動が余人をもつては容易に替え難いといつた高度の必要性

引用:最高裁判所第2小法廷判決昭和61年7月14日労判477号6頁

がなくとも、業務上の必要性ありと判断されることがあります。

(1-3)判例のポイント

この判例のとおり、報復人事と思われる配置転換が人事権の濫用かどうかを判断するには、「業務上の必要性」と「労働者に与える不利益など」ついて細かなチェックをする必要があります。

(2)降格の場合

バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件(東京地方裁判所判決平成7年12月4日労判685号17頁)の判例では、課長職からの降格につき、人事権の濫用ではないかが争われました。

(2-1)人事権行使の可否

使用者は、その一定の裁量により、降格の人事を行うことができます。
すなわち、当該判例では、「採用、配置、人事考課、異動、昇格、降格、解雇等」の人事権については、雇用契約に基づき、使用者の経営上の裁量的判断に委ねられている、と判断されています。

(2-2)人事権濫用の有無

このように当該企業には、降格を命じる権限があると判断されたわけですが、いかなる場合にも降格が許されるわけではありません。
当該判例では、「社会通念上著しく妥当を欠く場合」、人事権の濫用に当たり、「人事権の行使は、労働者の人格権を侵害する等の違法・不当な目的・態様をもってなされてはならない」と判断されています。

そして、人事権の濫用にあたるか否かは、以下の点を考慮して判断されています。

  • 使用者側において組織上・業務上の必要性はあるか
  • 労働者がその職務・地位にふさわしい能力・適性を持っているか
  • 労働者がどのような性質・程度の不利益を受けるか

(2-3)判例のポイント

この判例からすれば、組織上・業務上の必要性などが見当たらない報復目的の降格の場合、ケースによっては人事権の濫用に当たる可能性があります。

報復人事の無効と拒否権

まず、報復人事が人事権の濫用であると認められた場合、その人事は無効となることがあります。

人事が無効となる可能性がある具体的なケースには、以下のようなものがあります。

  • 就業規則に当該人事に関する定めがないのに、職能資格を引き下げた
    ※職能資格とは、職務遂行能力の到達レベルを表すもので、職務・役割等級とは異なります。
  • 採用時に勤務地の限定の合意をしているのに、一方的に転勤を命じられた。
  • 採用時に、職務限定の合意をしているのに、一方的に別の職務に就かされた。
  • 業務上の必要性がない人事異動である
  • 人事異動により、労働者が通常甘受すべき範囲を大きく超えた不利益がある
  • 労働契約法や育児介護休業法に反している
  • 不当な動機や目的が認められる人事異動である

拒否しても報復人事の問題解決しない場合は?

不当な報復人事に「拒否します」と伝えても、適切な対処が行なわれない場合は、「裁判で今回の人事の無効を主張する」か、その異動などによって精神的苦痛を受けた場合には、慰謝料を請求するという選択肢があります。
前述の、バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件では、慰謝料100万円が認められています。

これらの方法により報復人事について争う場合、その事実が人事権の濫用と認められるだけの証拠が必要です。
例えば以下のものが証拠となります。

  • レコーダーによる上司や人事担当者との音声記録
  • 同僚などの証言
  • (報復人事によってうつ病などになった場合には、)診断書
  • 日記などの日々の記録を詳細かつ正確に記したものなど

※なお証拠により、証明する力の強弱がありますので、どれか一つではなく広く証拠を集めることをお勧めします。

【まとめ】報復人事については総合労働相談コーナーなどにご相談ください

報復人事とは、人事権を持つ人事担当者や上司などが、特定の労働者への報復目的で異動や降格を命じることです。
社会通念上妥当な範囲を逸脱していたり、正当性が認められない場合は、権利の濫用で人事の無効や慰謝料の支払いが認められる場合があります。
報復人事とも言える扱いに悩まされている場合は、各都道府県労働局、全国の労働基準監督署内に設置されている総合労働相談コーナーなどにご相談ください。

参考:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

この記事の監修弁護士
弁護士 髙野 文幸

中央大学卒、2006年弁護士登録。アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。現在、東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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