退職までの最短期間は?雇用契約の形態別に法律上のルールを解説

  • 作成日

    作成日

    2023/11/16

  • 更新日

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    2023/11/16

目次

退職までの最短期間は?雇用契約の形態別に法律上のルールを解説
会社を辞めようと思った場合は、退職の決意が固まった以上、1日も早く職場から去りたいと思うのが自然な感情でしょう。

辞めると決まっているのにずるずると会社に残っているのは、労働者にとってよいことではありませんし、会社にとっても非生産的ですから、決して好ましい状況とはいえません。

ただ、実際には、すぐに辞められると困る、引継ぎが終わるまでは何とか頼む、などと理由をつけて、退職を引き止められるケースもあるところです。
中には、会社から損害賠償を請求されるようなことも考えられます。

トラブルなく最短期間で退職するにはどうしたらいいのか、トラブルが発生した場合はどのように対処すればよいのかなど、「最短期間での退職」について、今回は解説していきます。

退職までの最短期間は雇用契約のあり方によって異なる

労働者がいつ退職できるのかは、雇用契約に期間の定めがない場合と期間の定めがある場合とで異なります。

「正社員」は雇用契約に期間の定めがなく、「契約社員」、「嘱託社員」、「パート」や「アルバイト」などは、雇用契約に期間の定めがあるというのが一般的でしょう。

自分と会社の結んだ雇用契約に期間の定めがあるかどうかは、労働条件通知書で確認することができます。

【退職までの最短期間】期間の定めのない雇用契約の場合

まず、期間の定めのない雇用契約を結んでいる場合の、退職の申し入れから退職までの期間について、法律上のルールを説明していきます。

(1)原則として2週間前の告知で足りる

退職とは、労働者の意思にもとづいて雇用契約(労働契約)を一方的に解約することをいいます。

期間の定めのない雇用契約を結んでいる場合、労働者側からは、いつでも退職(雇用契約の解約)を申し入れることができます。
そして、その申し入れから2週間が過ぎると、退職の効果が発生します。

つまり、2週間前に告知すれば退職できるということになります。
このとき、退職についての会社の同意は必須ではありません。
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
引用:民法第627条1項

(2)日数の数え方

上記の「2週間」には、休日や祝日を含みます。
また、退職を申し入れる日は期間に含めません(民法第140条により初日は不算入)。
一方、退職日は期間に含めます。

たとえば、期間の定めがない雇用契約を結んでいる場合に、3月1日に退職を申し入れたとすれば、最速で3月15日を退職日として、退職できるということになります。
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、参入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
引用:民法第140条

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【退職までの最短期間】期間の定めのある雇用契約の場合

期間の定めのある雇用契約を結んでいる場合は、その期間中の労働力提供を約束していることになるため、原則として、契約期間中の退職ができません。

このような有期雇用契約の場合は、「やむを得ない事由」があるときに限って、すぐに退職できるとされています(民法第628条)。
「やむを得ない事由」については、法律上の定義はありませんが、病気・妊娠・出産・育児・介護・パワハラ・賃金未払いなどは、「やむを得ない事由」に当てはまると考えられています。

なお、「やむを得ない事由」が労働者側の過失によって生じた場合は、使用者側から損害賠償を請求される可能性があるので注意しましょう。
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
引用:民法第628条
なお、雇用期間が5年を超えているか、雇用期間の終期が不確定であるときは、当事者の一方は、5年を経過した後に、いつでも雇用契約を解除できることとされています。
また、労働者から退職(雇用契約の解除)を申し入れる場合は、2週間前に予告する必要があります。
1項 雇用の期間が5年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
2項 前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは3箇月前、労働者であるときは2週間前に、その予告をしなければならない。
引用:民法第626条
なお、契約期間の初日から1年以上が経過している場合は、労働基準法第137条の規定により、一定の例外的な場合を除いて、いつでも退職することができます。
期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が1年を超えるものに限る。)を締結した労働者(第44条第1項各号(専門職・高齢者の例外)に規定する労働者を除く。)は、労働基準法の一部を改正する法律附則第3条に規定する措置が講じられるまでの間、民法第628条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から1年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
引用:労働基準法第137条

就業規則に退職までの最短期間が定められている場合は?

就業規則に「○ヶ月前に退職の申し出を行わなければならない」などの定めがあるケースもあります。

もっとも、民法の規定の多くは任意法規と解されておりますが、就業規則によっても予告期間を延ばすことはできないと考えられています。民法第627条1項は、使用者が不当に労働者を拘束することを防止するための規定であることが理由とされます。

この点については、民法で定められる2週間の予告期間を使用者のために延長することはできないとした裁判例もあるところです(高野メリヤス事件 東京地裁判決昭和51年10月29日労判264号35頁)。

なお、「任意法規」とは、法律の規定であって、当事者の意思によって適用しないことができるような規定のことをいいます。同じ意味で「任意規定」ということもあります。
これに対して、当事者の意思によって、その内容や適用する・しないなどの点を変更することが許されていない規定のことを、「強行法規」あるいは「強行規定」といいます。

上記の裁判例(高野メリヤス事件)は、民法第627条を強行法規と解しているということになります。

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最短期間で退職したい場合にありがちなトラブル

それでは、最短期間で退職したいと思った人が、退職を申し入れたときに巻き込まれがちなトラブルについて、以下で例を挙げて紹介していきましょう。

(1)会社が退職を許可してくれない

退職を申し入れても、会社側に退職届の受理を拒否される場合があります。
中には、退職を考えていること自体を、厳しい言葉で責められてしまうようなケースもみられるところです。
直属の上司に伝えても、人事部などに話が通っていないというケースもあります。

しかし、法律上、会社は労働者の退職を拒否できません。
会社が退職届の受け取りを拒否したとしても、退職の意思が使用者に到達していれば、法律で定められた期間の経過後に退職の効果が発生します。
退職についてトラブルが予想されるような場合には、退職の意思が使用者に到達したことを証明するため、メールや内容証明郵便を送ったり、録音しながら口頭で伝えたりするとよいでしょう。

(2)有給休暇を消化させてくれない

退職を申し入れたあとに、残っている有給休暇を消化しようと考える人も多いでしょう。

しかし、なかには退職に際しての有給休暇の取得を阻む会社もあります。

原則として、会社は、労働者が好きな日に有給休暇を取得することを阻止できません。
例外的に、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限って、使用者側が有給休暇の取得時季を変更できるという「時季変更権」の規定もありますが、退職をする際の有給休暇の消化については会社は時季変更権を行使できません。
したがって、会社は、退職前の有給休暇の取得を拒むことはできないということになります。

(3)退職するなら損害賠償請求すると言われる

「退職するなら損害賠償を請求させてもらう」などと会社から言われることもあります。

もっとも、一般論として、退職を理由とした労働者への損害賠償請求は、当該労働者の退職と会社に生じた損害との因果関係の立証が難しいため、認められない可能性が高いでしょう。

損害賠償請求をちらつかせるなど、脅迫の要素を含む言動によって労働の継続を強制することは、労働基準法第5条の規定に違反する可能性もあります。
使用者は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意思に反して労働を強制してはならない。
引用:労働基準法第5条

退職トラブルには弁護士による退職代行サービスがおすすめ

退職関連のトラブルを回避したい場合や、すでに発生しているトラブルに対処したい場合には、弁護士による退職代行サービスを利用するという手段もあります。

退職代行サービスには弁護士によるものとそうでないものがありますが、トラブルに対処できるのは弁護士によるもののみとなっています。

弁護士でない業者は、書類の提出などを代行することはできますが、会社との交渉を代行することができません。もし交渉を代行すれば、「非弁行為」(弁護士でない者が報酬目的で行う、法律事務の取扱い行為又は訴訟事件や債務整理事件等の周旋行為)として弁護士法違反となってしまいます。

また弁護士であれば、使用者による損害賠償請求や退職金の不払いにも対応できます。

【まとめ】雇用契約のあり方によって、退職までの最短期間は異なる

以上のように、退職を申し入れてから手続きが完了するために必要な期間は、雇用契約のあり方によって異なってきます。

期間の定めがない雇用契約であれば、使用者に対する告知から原則として2週間で退職の効力が生じます。
期間の定めがある雇用契約でも、やむを得ない事由があればいつでも退職できます。

アディーレ法律事務所では、退職に悩む方のお力になるべく退職代行のご相談を承っております。

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この記事の監修弁護士

中央大学卒、アディーレ入所後は残業代未払いの案件をメインに担当し、2018年より労働部門の統括者。「労働問題でお悩みの方々に有益な解決方法を提案し実現すること」こそアディーレ労働部門の存在意義であるとの信念のもと、日々ご依頼者様のため奮闘している。東京弁護士会所属。

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