あなたの子供が交通事故に遭ってしまった場合、親としては、「子どもに後遺症が残ってしまったら」、「子どもの人生に悪影響がでないか」、「親として何ができるのか」など、子どもに対する心配と同時に不安が尽きないのではないのでしょうか。
子供が交通事故によって怪我をしてしまった場合、親としては子供へのサポートはもちろんのことですが、子どものためにも加害者側からきちんと適切な慰謝料や賠償金を受け取っておくべきでしょう。
そのためには、交通事故の慰謝料や賠償金の仕組みや算定基準についてきちんと理解しておかなければなりません。
この記事では、交通事故の慰謝料や賠償金の項目や算定基準、さらに、慰謝料や賠償金を少しでも多く得るためにはどうすべきかについて弁護士が詳しく解説します。
愛知大学、及び愛知大学法科大学院卒。2010年弁護士登録。アディーレに入所後、岡﨑支店長、家事部門の統括者を経て、2018年より交通部門の統括者。また同年より、アディーレの全部門を統括する弁護士部の部長を兼任。アディーレが真の意味において市民にとって身近な存在となり、依頼者の方に水準の高いリーガルサービスを提供できるよう、各部門の統括者らと連携・協力しながら日々奮闘している。現在、愛知県弁護士会所属。
- 基本的に「子どもだから」という理由で慰謝料が増額・減額されることはない
- 子供に後遺症が残った場合、後遺障害等級が慰謝料の算定基準となる
- 子供が交通事故に遭ってしまったら…慰謝料以外にもしっかり請求したい損害賠償の項目
- 子供の飛び出し事故の場合、子供にも過失割合が付くが、減らせる場合がある
- 子供が交通事故に遭ったときに、損害賠償請求を弁護士に依頼した方がいい理由
- 16歳男性の事例・8級相当で3300万円以上の賠償金を獲得
- 14歳女性の事例・12級14号で1100万円以上の賠償金を獲得
- 【まとめ】子供が交通事故の被害に遭ってしまった場合、交通事故の損害賠償請求はアディーレ法律事務所にご相談ください
基本的に「子どもだから」という理由で慰謝料が増額・減額されることはない
交通事故の被害者が子どもの場合、子どもであることを理由に、慰謝料が増額・減額されることはありません。
人身事故が発生すると、被害者は自身が受けた精神的苦痛に対して、治療費などとは別に「慰謝料」を請求できます。
もっとも、受ける精神的苦痛の程度は、大人と子供に差はないため、子どもであることを理由に慰謝料が増額・減額することはできないのです。
では、交通事故の慰謝料の種類と金額の算定基準について説明します。
(1)交通事故で代表的な慰謝料
そもそも「慰謝料」とは、相手の加害行為によって受けた精神的苦痛を金銭に換算したもので、不法行為に対する損害賠償として位置付けられています(民法709条)。
交通事故での慰謝料の種類については、次のものがあります。
(1-1)入通院慰謝料
(1-2)後遺症慰謝料
(1-3)死亡慰謝料
(1-4)近親者慰謝料
順番に説明します。
(1-1)入通院慰謝料
「入通院慰謝料(傷害慰謝料)」とは、入通院をしたことの精神的苦痛に対して支払われる賠償金のことをいいます。
怪我の受け止め方は人それぞれですが、交通事故の賠償上は、怪我の部位や程度、症状固定日(治療を続けても症状の改善が見込めなくなった日)までの入通院期間の長短などによって、ある程度画一的に算定されます。
例えば、交通事故のむちうち症で6ヶ月間通院した場合、入通院慰謝料は89万円となります。また、交通事故の骨折で入院を1ヶ月(30日入院、むち打ち症ではない)した場合、入通院慰謝料は53万円となります。
(1-2)後遺症慰謝料
「後遺症慰謝料」とは、後遺症が残ってしまった場合の、後遺症が残ったこと及び後遺症を抱えて生きていくことの精神的苦痛に対する賠償金のことをいいます。
後遺症慰謝料は、基本的に、後述する「後遺障害等級」(1~14級)に応じて、金額が算定されることになります。
交通事故の治療後に残ってしまった症状は「後遺症」で、そのうち、自賠責保険や労災保険が等級認定したものが「後遺障害」となります。厳密には、「後遺症慰謝料」という方が正しいのですが、ほとんどの事件では自賠責保険の認定した後遺障害等級を基礎にして「後遺症慰謝料」を算定しますので、「後遺障害慰謝料」と言ってもほとんど同じです。
後遺症慰謝料の金額については、後で説明しますので、そちらをご参照ください。
(1-3)死亡慰謝料
「死亡慰謝料」とは、交通事故の被害者が死亡した場合の、本来の寿命を全うできずに不慮に死亡させられたことの無念と精神的苦痛に対する慰謝料のことをいいます。
なお、死亡慰謝料は、死亡された被害者本人の権利を相続した遺族が請求することになりますので、被害者が請求の意思を示す間もなく即死した場合に遺族が請求できるのかという問題がありましたが、昭和42年の最高裁大法廷判決で請求できるとして決着がついています。(最大判S42.11.1民集21巻9号2249頁)
慰謝料の金額の目安としては、具体的な状況に応じて加減しますが、次のようになります。
被害者が一家の支柱である場合 | 2800万円 |
被害者が母親・配偶者である場合 | 2500万円 |
その他の場合(子供の場合) | 2000万~2500万円 |
(通常の近親者慰謝料も含んだ金額とされています)
被害者が子供・幼児である場合の裁判例についても紹介します。
〔事例1〕
(事故日2014年10月29日、名古屋高判平成29年9月28日判決、自保ジ2011号105頁)
男子小学生(9歳)が交通事故で死亡した場合、死亡慰謝料として本人に対し2400万円、父母に対し各300万円、兄2人に対し、母親が被害者と一緒にいた兄を責めている等の事情を考慮して、各150万円を認め、合計3300万円の死亡慰謝料を認めました。
〔事例2〕
(事故日2010年12月26日、東京地判平成26年12月11日判決、自保ジ1942号91頁)
加害者が音楽のリズムに合わせて車体を左右に振るために、右にハンドルを急に切ったがために、大きく車体が右側に向いて進行制御を失い、歩道上に乗りあげてしまい、歩道上で信号待ちのために立っていた男児2人と衝突した。
そのため、加害者側に過失が大きいこと等を考慮し、死亡慰謝料として本人に対し、2400万円、父母に対し各200万円を認め、合計2800万円の死亡慰謝料を認めました。
(1-4)近親者慰謝料
「近親者慰謝料」とは、被害者が死亡されたり、死亡に類するような重度の後遺症を負った場合に、近親者も被害者本人とは別に、請求できる慰謝料のことをいいます。
後遺障害が重度な場合には、近親者も被害者の生活を支えていかなければなりませんし、被害者の苦痛を目にして受け止めるための精神的苦痛を受けることになります。
そのため、近親者にも被害者本人とは別に本人の慰謝料の10%から30%の範囲で慰謝料が認められているのです。
なお、被害者の年齢が幼く、後遺障害が重度である場合、近親者に対する経済的・肉体的・精神的負担はより重いといえますので、高額の慰謝料が認定されることがあります。
その他、個別事情ですが、一人っ子や、両親の期待を背負った跡取り息子(娘)が死亡したり重度の後遺症を負った場合には、両親の近親者慰謝料が高額となる可能性があります。
※なお、「近親者」とは、原則被害者の「父母」、「配偶者」、「子」であるとされています(民法711条)。
(2)慰謝料には3つの算定基準がある
慰謝料や賠償金の算定基準には、「自賠責の基準」、「任意保険の基準」、「弁護士の基準」の3つの基準があります。
「自賠責の基準」、「任意保険の基準」とは、自賠責保険会社、任意保険会社それぞれで利用されている基準のことをいいます。
一方、「弁護士の基準」とは、過去の交通事故裁判例における支払判決を例に、ケース別に慰謝料額や賠償額を基準化したものをいいます。
慰謝料や賠償金の金額は、一般に、「自賠責の基準」<「任意保険の基準」<「弁護士の基準」の順で高額となります。
つまり、同じ後遺障害等級であったとしても、どの基準を適用するかによって、慰謝料の金額は大きく変わるということです。
例えば、後遺症慰謝料について、自賠責の基準と弁護士の基準は次のように定められています(任意保険会社の基準は、非公開であるため具体的な金額はわかりませんが、自賠責の基準と同等か、もしくは、自賠責保険と弁護士の基準の間の金額に設定されていることが多く、弁護士の基準に比べると低い金額になることが多いといえます)。
等級(別表第二) | 自賠責の基準 | 弁護士の基準 |
1級 | 1150万円 | 2800万円 |
2級 | 998万円 | 2370万円 |
3級 | 861万円 | 1990万円 |
4級 | 737万円 | 1670万円 |
5級 | 618万円 | 1400万円 |
6級 | 512万円 | 1180万円 |
7級 | 419万円 | 1000万円 |
8級 | 331万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 110万円 |
※なお、「自賠責の基準」については、2020年4月1日以降に発生した交通事故に適用されます。
さらに、死亡慰謝料に関しても、「自賠責の基準」と「弁護士の基準」では大きく異なります。
「自賠責の基準」であれば本人対しては400万円、近親者がいた場合、請求者の数に応じて1人であれば550万円、2人であれば650万円、3人以上いる場合には750万円と定めています。
上記、「弁護士の基準」における死亡慰謝料(少なくとも2000万円以上)と大きく開きがあることは明らかといえます。
多くの保険会社では、自賠責の基準もしくは任意保険会社の基準により慰謝料を算定します。
しかし、被害者側に弁護士が交渉の場面に参加した場合(弁護士が介入した場合)には、弁護士の基準によって、賠償金を請求するので、弁護士の基準によって交渉することになります。
少しでも多くの賠償金を得るためには、賠償金の交渉を弁護士に依頼し、「弁護士の基準」によって賠償金の金額を算定する必要があります。
なお、この記事で説明する算定基準は、どれも「弁護士の基準」によるものになります。そのため、原則、「自賠責の基準」、「任意保険の基準」によれば、本記事で記載した算定基準で算定される金額より安くなってしまうこともあります。
交通事故における慰謝料の相場や計算方法、請求手順についてさらに詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
子供に後遺症が残った場合、後遺障害等級が慰謝料の算定基準となる
後遺症が残った場合、後遺症に対する慰謝料や賠償金の算定要素として使うのが「後遺障害等級」です。
「後遺障害等級」は、後遺症の内容に応じて、1級から14級が認定されます。
もっとも、症状が同じであっても、見えにくい、又は、わかりにくい症状については適切に評価されないこともあり、等級が適切に評価されるか否かで、賠償金の金額が大きく変わってしまうおそれがあります。
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子供が交通事故に遭ってしまったら…慰謝料以外にもしっかり請求したい損害賠償の項目
子供が交通事故に遭ってしまった場合、慰謝料以外にも、他の項目で賠償金を請求することができることがあります。
ここで、慰謝料以外の賠償金の項目について説明します。
(1)積極損害
「積極損害」とは、その事故によって生じた治療費など実費(将来に必要となる費用も含む。)に対して支払われる賠償金のことをいいます。
代表的な項目としては、次のものが挙げられます。
(1-1)治療関係費
(1-2)付添看護費
(1-3)将来介護費
(1-4)雑費
(1-5)交通費
(1-6)学習費、保育費
(1-7)装具・器具等購入費
(1-8)自宅・自動車改造費
順番に説明します。
ここでは、「弁護士の基準」よる算定基準で説明しているため、「自賠責の基準」や「任意保険の基準」であれば、これから紹介する算定金額より少なくなってしまいます。
(1-1)治療関係費
治療費に関しては、必要かつ相当な範囲で賠償金が支払われます。
医師の指示があるなど症状により有効、かつ、相当な場合には、マッサージ代、柔道整復代などについても認められます。
(1-2)付添看護費
医師の指示または怪我の程度、被害者の年齢などにより必要があれば介護ヘルパーなどの費用の分については実費全額、近親者の看護には1日につき6500円が「付添看護費」として認められます。
もっとも、被害者が幼児や児童の場合には、10~30%の範囲で増額が認められることもあります。
(1-3)将来介護費
将来介護費は、将来にわたって介護が必要な場合に、後遺症の程度、医師の指示などにより必要な限りで認められます。
介護ヘルパーなどの費用については実費全額を想定した費用、近親者が介護する場合は1日につき8000円程度が認められます。
もっとも、近親者介護費用は、怪我(後遺症)の症状と必要な介護内容によって3000~1万円程度の範囲で増減する場合が多く、上記の8000円は、「後遺障害等級1級1号や介護保険の要介護3~5の重度の要介護状態の場合、少なくとも8000円程度が認められる」という意味となっています。
(1-4)雑費
入院すると、例えば、ティッシュや身の回りの物など日用雑貨が必要となります。
このため、入院1日につき1500円が入院雑費として認められています。
さらに、入院期間以外にも、具体的看護状況に鑑みて、日用雑貨などの購入費用が認められることがあります。
(1-5)交通費
通院交通費については、実費相当額の範囲で認められます。
症状の程度によりタクシー利用が必要となれば、タクシー料金、そうでなければ公共交通機関の料金となります。また、自家用車を利用した場合は、その実費相当額となります。
近親者が付添いのために病院に通院した交通費についても認められます。
(1-6)学習費・保育費
被害者が学生、生徒の場合、交通事故の怪我の症状、入院のために、学校の勉強についていけずにさらに塾や補習が必要となる場合があります。そういった場合に必要となった学習費に関しては必要、かつ、妥当な範囲で賠償金として認められます
また、親が子の付添看護のため、他の兄弟姉妹の面倒が見られなくなり、保育所に預けたといった場合に保育費が賠償金として認められることがあります。
(1-7)装具・器具購入費用
装具・器具とは、例えば、義手・義足・車椅子・電動ベッド・歩行訓練器などが挙げられます。装具代・器具代については、必要の限りで認められます。
※器具・装具については、長年使っていると、新しい器具や装具を作り直すことがあります。このような場合も見越して、器具や装具を作り直す費用についても賠償金として含むことも出来ます。
(1-8)自宅・自動車改造費
怪我の程度、内容、後遺症の症状によっては、自宅や自動車の改造が必要なことがあります。車椅子での移動が可能なように、ドアの間口を広げたり、段差をなくしたりするということが考えられます。また、車椅子や義足なしで移動できるように手すりやエレベーターの設置などが考えられます。
このような場合、家や自動車などの改造費については、必要かつ相当の範囲で認められます。
(2)消極損害
「消極損害」とは、その交通事故がなければ、得られたはずの利益に対して支払われる賠償金のことをいいます。
例えば、次のものが挙げられます。
(2-1)休業損害
(2-2)逸失利益
「休業損害」とは、交通事故で怪我をしたことにより、治癒あるいは症状が固定するまでの間、働くことができず収入が減少することにより発生した損害をいいます。
被害者が未成年の場合、基本的には、被害者がアルバイトなどをしていなければ、被害者自身に休業損害は認められません(なお、交通事故に遭ってしまったために就職が遅れてしまったという場合には認められます)。
もっとも、被害者の介護のために、近親者が仕事を休業したという場合に、近親者につき休業損害が認められることがあります。
休業損害は、
「日額の基礎収入×休業日数」
によって算出されます。
- 休業日数については、治療もしくは症状が固定するまでの期間内で、実際に休業した日数のうち障害の内容・程度、治療過程、被害者の方が従事している仕事の内容等をみて相当な日数が認められます。
- 必ずしも休んだ日数=休業日数とはなりません。日額の基礎収入は、被害者が給与所得者である場合、事故前の3ヶ月分の給与の合計額、または事故前1年の給与総額を、それぞれ90日または365日で割ったものです。
(営業日数割を使える場合もあります) - 付添い看護費と付添休業損害を同一日について両方請求できるかは悩ましい問題です。
(2-2)逸失利益
「逸失利益」とは、本来であれば得られるべきであるにもかかわらず、得られなかった利益のことをいいます。
つまり、交通事故で後遺症が残らなければ、将来働いて得られたはずの収入や利益のことをいいます。
逸失利益は、
「基礎収入×労働能力喪失率×労働喪失期間に対応するライプニッツ係数」
によって算出されます。
順番に説明します。
- 「基礎収入」とは、原則として、交通事故前の現実の収入のことをいいます。もっとも、被害者が未成年である場合には、賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模・学歴計・男女別全年齢平均の賃金額(賃金の平均)を基礎とするのが原則です。
- 「労働能力喪失率」は、労働能力の低下の程度のことをいいます。
後遺症によって、どれくらいの労働能力が失われたかを示すもので、後遺等級に応じて定められています。
1級 | 2級 | 3級 | 4級 | 5級 | 6級 | 7級 | 8級 | 9級 | 10級 |
100% | 100% | 100% | 92% | 79% | 67% | 56% | 45% | 35% | 27% |
11級 | 12級 | 13級 | 14級 |
20% | 14% | 9% | 5% |
もっとも、被害者の職業、後遺障害の部位・程度などを総合考慮した結果によって労働能力喪失率がそのまま認められない場合もあります。
- 労働喪失期間に対応するライプニッツ係数
「労働喪失期間」とは、症状固定日(治療を続けても症状の改善が見込めなくなった日)から労働能力が制限される期間のことをいいます。
一般的には、67歳まで就労が可能であるとされているため、症状固定日から67歳までの期間となりますが、職種、地位、健康状態、能力などによって異なった判断がされることもあるため、注意が必要です。
「ライプニッツ係数」とは、中間利息控除した係数のことをいいます。
本来であれば、67歳まで働いて順次受け取るはずであったものを、一括で受け取ることになりますので、加害者は本来払う時点まで現金を保有し利息を得られた分について損をし、逆に被害者は得をすることになります。
そこで、この不公平を修正するために用いられているのが、一括で受け取る一括利益から中間利息を控除することになるのです。
逸失利益、逸失利益の計算方法について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
子供の飛び出し事故の場合、子供にも過失割合が付くが、減らせる場合がある
子供の飛び出しが事故の原因の場合、事故の状況などによっては、子供の不注意が事故の原因とされ、子どもにも過失割合がつくことがありますが、それを減らすことができる場合があります。
そもそも「過失割合」とは、加害者側と被害者側の過失を割合で表したものをいいます。
交通事故は、加害者側が一方的に悪いということもありますが、加害者側被害者双方に不注意があって、交通事故が起きてしまうことも少なくありません。
そういう場合には、加害者・被害者双方の過失の割合を認定し、被害者側の過失の分、慰謝料や賠償金が減額されてしまいます。
例えば、加害者の過失:被害者の過失=7:3であれば、慰謝料や賠償金の総額が100万円だったとしても3割を差し引いた70万円となってしまうのです。
もっとも、飛び出した子どもが児童や幼児の場合、大人の場合に比べて、被害者である子供の過失を減らすことができるのです。
通常、子供は、大人に比べて車道や車に注意する力がありません。そのため、被害者が13歳未満の子供である場合、大人が飛び出した場合に比べて、5~20%、過失割合が減ることになるのです。
もっとも、加害者側の保険会社は、被害者側に対し、子供であれば過失割合が少なくなるということを教えてくれなかったり、加害者側の話のみを聞いて、不当な過失割合が認定されてしまったりということも少なくありません。
適正な賠償金を受け取るためには、被害者が事前に知識を持っておくこと、弁護士などの専門家に相談しておくことが重要です。
子供が交通事故に遭ったときに、損害賠償請求を弁護士に依頼した方がいい理由

子供が交通事故に遭ったときに、慰謝料や賠償金請求を弁護士に依頼した方がいいメリットについて説明します。
- 慰謝料算定で「弁護士の基準」が適用される
- 交渉を弁護士に一任できる
- 適切な後遺障害等級の認定を受けられる
- 不利な過失割合が認定されるリスクを回避できる
- 不利な条件で加害者と和解するリスクを回避できる
(1)慰謝料算定で「弁護士の基準」が適用される
まず、弁護士に交渉を依頼するメリットとして挙げられるのが、慰謝料や賠償金の算定に「弁護士の基準」が基準となるということが挙げられます。
慰謝料や賠償金の算定基準には「自賠責の基準」、「任意保険の基準」、「弁護士の基準」の3つの基準があり、「自賠責の基準」<「任意保険の基準」<「弁護士の基準」の順で金額が高額となります。
もっとも、自賠責保険会社や任意保険会社はそれぞれ独自の基準で慰謝料や賠償金の算定し、個人相手ではなかなか「弁護士の基準」で交渉に応じてくれることはありません。
そこで、弁護士に交渉を依頼し、慰謝料や賠償金の算定に「弁護士の基準」を適用するように、加害者側に働きかけてもらうことで、少しでも多くの適正な慰謝料や賠償金を受け取ることができるようになるのです。
(2)交渉を弁護士に一任できる
次に、弁護士に交渉を依頼するメリットとして挙げられるのが、交渉を弁護士に一任できるということが挙げられます。
子供が突然、交通事故の被害者となった場合、親としては、子供のサポートはもちろんのこと、今後の生活のことなど、不安が尽きないことと思います。
そこに、さらに、慰謝料や賠償金の交渉となれば、親としてはさらなる負担といえましょう。
そこで、弁護士に交渉を一任してしまうことで、親としては今のしかかる負担を少しでも軽減し、子供の生活のサポートに専念することができるのです。
(3)適切な後遺障害等級の認定を受けられる
次に、弁護士に交渉を依頼するメリットとして挙げられるのが、適正な後遺障害等級の認定を受けられるということにあります。
後遺障害等級とは、慰謝料や賠償金の算定要素となるものです。後遺障害等級が少し違うだけで、慰謝料や賠償金の総額は大きく変わってしまうこともあります。
もっとも、後遺障害の中には手足の欠損など一見明らかなものもありますが、神経障害など一見明らかとはいえないものについては、加害者側が認めずに、後遺障害等級が認定されないことも少なくありません。
そのため、本来認定されるべき後遺障害等級が認定されずに、受け取るべき慰謝料や賠償金が受け取れないということもあるのです。
そこで、一見明らかとはいえない後遺障害については、医師などから診断書、カルテを収集し、加害者側に主張する必要があるのです。
もっとも、適正な後遺障害等級の認定のために、どういった資料が必要なのか、どういった資料が強いのかについては、専門的な知識が必要となります。
適正な後遺障害等級の認定を受けるためにも、交通事故に詳しい弁護士に交渉を委ねるがよいといえるでしょう。
(4)不利な過失割合が認定されるリスクを回避できる
次に、弁護士に依頼するメリットとしては、加害者からの話を鵜呑みにして、不当な過失割合が認定されてしまうことを回避することができるということが挙げられます。
先ほども述べた通り、過失割合は慰謝料や賠償金の総額を減額する要素となります。
通常は、加害者被害者双方から話を聞いて、事故状況を明らかにし、過失割合を認定するのですが、被害者が児童や幼児であれば、被害者が事故状況を説明することができないことも少なくありません。
さらに、子供が事故の状況を説明できたとしても、大人である加害者側の話を信じてしてしまうことも少なくないのです。
そこで、弁護士に交渉を依頼することで、弁護士が専門的な知識やノウハウを駆使し、加害者側の主張が一方的に鵜呑みにされ、不当な過失割合が認定されないように防ぐことができます。
(5)不利な条件で加害者と和解するリスクを回避できる
最後に、弁護士に依頼するメリットしては、本来であればもっと高額な慰謝料や賠償金が受け取れるはずであるにもかかわらず、加害者側の保険会社が提示する示談額が不利なものだとも知らずに、示談に応じてしまうことを防ぐことができます。
加害者側の保険会社との慰謝料や賠償金の交渉まで手が回らなくなってしまって、保険会社が言うなら間違いないだろうなどと思い込み、提示された示談額で示談に応じてしまうことは少なくありません。
しかし、これまで説明したとおり、「自賠責の基準」・「任意保険の基準」と弁護士の基準では賠償金額に大きな違いがあります。
また、賠償金を支払うのは加害者側となりますので、少しでも支払う金額を減額しようとあれやこれやと不利な条件を付ける場合も少なくないのです。
そのため、少しでも高額な慰謝料や賠償金を受け取るためには、交通事故に詳しい弁護士に交渉を任せてしまうのがよいといえるでしょう。
さらに、任意保険の「弁護士費用特約」に加入していれば、弁護士費用は保険でまかなわれます。お子さんが交通事故に遭い、大変な時だと思いますので、賠償金の交渉については、弁護士に任せてしまいましょう。
なお、弁護士費用特約は一定の親族が加入していれば、利用可能なことが通常です。
弁護士費用特約を利用しても、等級や保険料は変わりません。
16歳男性の事例・8級相当で3300万円以上の賠償金を獲得
ここで、弁護士が逸失利益の増額交渉に尽力し、3300万円の賠償金を獲得した事例を紹介しましょう。
Kさん(男性・16歳・高校生)
傷病名:第12胸椎圧迫骨折・第2腰椎圧迫骨折
後遺障害等級:8級相当
Kさんは、夜間に自転車に乗って交差点を走行中、左折してきたタクシーと衝突してしまいました。この事故により、第2腰椎圧迫骨折、第12胸椎圧迫骨折と診断され、その後、脊椎変形によって腰と背中に痛みが残ってしまいました(後遺等級は8級相当と認定)。
ほどなくすると、加害者側の保険会社から示談金額の提示がありましたが、Kさんのご両親は、提示された示談金が適正な金額であるのか不安を感じ、弁護士から話を聞いた上、弁護士に交渉を依頼しました。
ご依頼後、弁護士はさっそく加害者側の保険会社との交渉を開始しました。
逸失利益について、Kさんは将来、整備士を目指していたため後遺症が残ってしまったことにより、就業に大きな影響が出てしまったことを主張し、後遺症慰謝料については弁護士の基準を認めるように強く求めました。
その結果、逸失利益は約2.3倍に増額し、後遺症慰謝料は2.6倍に増額しました(賠償額全額では2.3倍増額し、金額としては1858万7858円増額しました)。
さらに、過失割合についても、加害者側の保険会社の主張に対し、事故の刑事記録を取り寄せるなどして適切に反論した結果、こちらの過失を25%から20%に引き下げることができました。最終的に賠償金の総額は3300万円以上で示談が成立しました。
14歳女性の事例・12級14号で1100万円以上の賠償金を獲得
次に、未成年の外貌醜状につき後遺障害が認定され、逸失利益を獲得し、賠償金総額が1100万円以上になった事例を紹介しましょう。
Tさん(女性・14歳・学生)
傷病名:右手関節骨折・左股関節捻挫・頭部・顔面打撲挫創
後遺障害等級:12級14号
Tさんは、自転車で走行中、カーブで乗用車と正面衝突していまい、その結果、頭部・顔面打撲挫創、右手関節骨折、左股関節捻挫と診断されました(その後、Tさんの顔には傷跡が残り、後遺障害等級は12級14号が認定されました)。
その後、加害者側の保険会社からTさんのご両親に示談金額が提示されましたが、Tさんのご両親は賠償金額に納得がいかず、弁護士に相談の上、弁護士に交渉を依頼しました。
弁護士は、相手方の保険会社と交渉を開始しました。弁護士は、傷跡が、Tさんが将来就く仕事に影響を与えてしまうおそれがあることから、逸失利益の獲得に力を注ぎました。
多くの裁判例では外貌醜状には逸失利益が認められていることなど根拠を示しながら、逸失利益を認めるべきと主張しました。その結果、720万円以上の逸失利益の獲得に成功しました。
また、加害者側の保険会社は、Tさんが事故当時2人乗りをしていたことから、事故が発生したことにTさんにも過失があったとして、賠償金が減額されるべきと主張しました。
しかし、弁護士は、事故の原因はあくまでも加害者側の前方不注意であり、Tさんに必要以上の過失が問われる必要はないと反論し、その結果、2人乗りを理由に賠償金が減額されることはありませんでした。
最終的に、加害者側の保険会社が当初提案した賠償金額より、1078万7935円増額し、賠償金の総額は1100万円以上になりました。
【まとめ】子供が交通事故の被害に遭ってしまった場合、交通事故の損害賠償請求はアディーレ法律事務所にご相談ください
子供が交通事故に遭うと、後遺障害によっては子供の一生に影響が及びかねないこともあります。
そのため、子供の今後の生活のためにも、少しでも多くの慰謝料や賠償金を受け取るべきといえるでしょう。
もっとも、これまで説明した通り、慰謝料や賠償金の加害者側との交渉には専門的な知識が必要となり、ご家族だけで交渉を行うことはとても難しいといえるでしょう。
そこで、ご家族の負担を減らすためにも、慰謝料や賠償金の交渉は弁護士に交渉を依頼して任せてしまいましょう。
示談は一度成立してしまうと、やり直しがきかないため、ご自身で交渉する前に、一度提示された示談額が適正かどうか、受け取るべき慰謝料や賠償金の総額はいくらになるのか、一度弁護士に相談してみましょう。
「弁護士費用特約」に加入していれば、弁護士費用の負担は心配する必要はないですし、弁護士費用特約の加入の有無にかかわらず、アディーレ法律事務所では、交通事故の損害賠償請求に関するご相談は無料ですので(2022年8月時点)、相談だけでもしてみることをおすすめします。
将来的に後悔しない適切な内容で慰謝料や賠償金を受け取るためには、アディーレ法律事務所にご相談ください。