離婚後でも養育費の請求はできる?知っておきたい請求方法と相場のこと

  • 作成日

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    2023/12/06

  • 更新日

    更新日

    2024/02/16

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目次

離婚後でも養育費の請求はできる?知っておきたい請求方法と相場のこと
子どもを持つ親には、離婚をしたとしても養育費の支払い義務があります。

このことは、離婚時に養育費の取決めをしたかどうかに関わらず、変わりません。

つまり、離婚時に養育費の取決めをしなかったとしても、離婚後、子どもと離れて暮らす元配偶者に対して、養育費の請求をすることができます。

離婚後に養育費の請求を行う場合、まずは当事者同士の話合いで養育費の金額や支払方法について取り決めるのが一般的です。

そのため、養育費の請求をする前に養育費の基本について知っておくことで、有利に話合いを進められる可能性があります。

このコラムでは、離婚後の養育費請求について弁護士が解説します。

つまり、離婚時に養育費の取決めをしなかったとしても、離婚後、子どもと離れて暮らす元配偶者に対して、養育費の請求をすることができます。

離婚後に養育費の請求を行う場合、まずは当事者同士の話合いで養育費の金額や支払いについて取り決めるのが一般的です。

離婚後でも養育費の請求は可能!

「養育費」とは、離婚後に子どもを監護する親(監護親)から子どもを監護しない親(非監護親)に対して請求する、子どもの養育に必要な費用のことです。

養育費の支払いは、子どもが経済的に自立するまで(※)続く義務ですので、離婚時に取り決めていなくとも、基本的には離婚後も養育費を請求できます。
※民法改正により成人年齢が18歳に引き下げられましたが(2022年4月1日施行)、成人年齢が18歳となっても、子が20歳となるまで養育費がもらえるという原則が変わるとは考えられていません。
ただし、2022年4月1日以降に、養育費の支払期間について「成年になるまで」という合意をした場合、通常18歳までの支払に合意したことになると考えられます。
支払期間は、「大学卒業まで」「20歳まで」など具体的に特定するようにしましょう。
詳しくは、養育費を含む「離婚後の請求」についても参考にしてみてください。

養育費はいくら請求できる?

養育費の金額は、当事者(父母)間で話し合って決めるのが基本です。

しかし、話合いが難航した場合や家庭裁判所で養育費の金額を決める場合には、裁判所が公表している「養育費算定表」を参考にすることが一般的です。

養育費算定表では、子どもの人数や年齢、父母の年収をもとに支払われるべき養育費の金額の目安が定められています。

たとえば、子どもが1人(0歳~14歳の場合)で父母ともに給与所得者の場合には、次のようになります。
養育費の相場
実際に養育費の支払いがどれくらい見込めるのか知りたい方は、「養育費かんたん自動計算ツール」をチェック!

離婚後に養育費を請求するときの流れとは?

では、離婚後に養育費を請求するには、どうしたらいいのでしょうか。

基本的には、まず「(1)当事者間で協議をすること」から始めます。

協議がまとまらない場合や協議が難しい場合には、「(2)家庭裁判所で養育費請求調停・審判」を行うことになります。

  1. 当事者間で協議する

  2. 養育費請求調停・審判

(1)当事者間で協議する

まずは、元配偶者に連絡を取り、養育費について話し合いましょう。
とはいえ、離婚した経緯は人それぞれです。なかには元配偶者と連絡を取ることすら避けたい場合もあるでしょう。

たとえば、直に会うことは避け、連絡を電話や手紙にしたり、弁護士に代理交渉を依頼したりするという手段もあります。

協議の結果、養育費の金額や支払方法、支払期間などが決まれば、それを書面にしましょう。 さらに、書面を「強制執行認諾文言付きの公正証書」にしておけば、裁判等を経なくても強制執行の手続をすることが可能となります。

(2)養育費請求調停・審判

当事者間の協議がまとまらない場合、家庭裁判所に「養育費請求調停」を申し立てます。

「養育費請求調停」は、家庭裁判所で行われますが、勝ち負けを決める手続ではなく、あくまでも話合いの手続です。

調停委員2名(通常は男女2名)に間に入ってもらい、養育費の話合いをします。
調停委員から合意に向けたアドバイスをもらうことができ、当事者だけで話し合うよりもスムーズな話し合いが期待できます。

調停でも養育費について合意できなかった場合には自動的に「審判」に移行します。

「審判」では、裁判官が養育費の支払義務の有無や金額、期間などを決めます(一般的な「裁判」のイメージに近いです)。

なお、一度決まった養育費でも、その後の事情に変更があり、養育費の取り決めの変更を求めたい場合には、養育費の変更を求める調停を申し立てることもできます。

養育費の変更を求める調停

調停や審判で養育費を取り決めるメリット

調停調書・審判書などにより養育費の支払いが決まっていれば、相手方からの支払いが滞った場合に、裁判所から相手方に対して「履行勧告」や「履行命令」を発してもらうことができます(履行勧告:家事事件手続法第289条、履行命令:家事事件手続法第290条)。
「履行勧告」も「履行命令」も裁判所から支払いが滞っている相手方に対し、養育費の支払いを促す制度です。そして、「履行命令」には、正当な理由なく従わない場合は、10万円以下の過料に処せられるという制裁もあります。
他方、「履行勧告」は手続費用がかかりませんし、口頭での申立ても受け付けてもらえる簡単な手続です。

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離婚後の養育費請求はいつまでできる?

離婚後の養育費の請求には「時効(消滅時効)」があり、一定期間が経過すると養育費の請求が認められなくなる可能性があります。
「消滅時効」とは、権利を一定期間放っておくと、権利が時効で消滅してしまう、というものです。
養育費の取決めをしているのか、していないのかによって、養育費を請求する権利の「時効(消滅時効)」は変わってきます。

(1)養育費の取り決めをしていない場合

養育費の取り決めをしていない場合、「時効」はありません。 つまり、経済的に自立していない子ども(基本的には未成年の子ども)がいる限り、養育費を請求できます。
ただし、離婚時からの養育費を請求するなど、過去にさかのぼって養育費を請求することは基本的に認められません。
そのため、離婚時からの養育費についても支払う旨の合意が得られない限り、過去の養育費を請求することは難しいでしょう。

(2)すでに養育費の取り決めがある場合

一方、すでに養育費の取決めがあるが、支払いが滞っており、未払いとなっている場合には、「時効」があります。
養育費請求権の消滅時効は、次のとおりです。
  • 離婚協議書や公正証書で合意した場合:支払期限から5年(民法第166条1項1号)
  • 判決書、和解調書、調停調書、審判書による場合:支払期限から10年(民法第169条1項)
ただし、判決・審判確定時、和解・調停成立時に期限が到来していない将来分は、支払期限から5年となります(民法第169条2項)
消滅時効の成立が近い場合は、早いうちに弁護士に相談してみてください。消滅時効の成立時期を引き延ばすための対策が取れる可能性があります。
未払いになっている養育費の請求方法については、「未払いの養育費は放置せず請求を!請求方法と再発防止の方法を弁護士が解説」もご覧ください。

養育費は再婚すると請求できない?

たとえば、養育費を請求したところ、すでに再婚したことを理由に元配偶者から「もう自分には支払う義務はない」などと言われ、支払いを拒絶されることがあります。
しかし、元夫婦(子どもにとっての父母)のどちらか一方が別の相手と再婚したとしても、当然に養育費を請求する権利がなくなるわけではありません。
ただし、再婚する前に養育費の金額を取り決めていた場合、養育費を支払う側から養育費の減額を求められることがあります。

たとえば、あなたが再婚し、その再婚相手と子どもが養子縁組をした場合、養子縁組をした親(あなたの再婚相手)も子どもの扶養義務を負うことになります。
そのため、家庭裁判所が以前に取り決めた養育費の減額を認める可能性があるのです。

養育費が減額されるか、されるとしてどのくらい減額されるのかは、再婚相手の資力などにより異なります。

養育費が足りない!養育費の増額は可能?

子どもの養育費を取り決めたものの、その後事情が変化し、決めてあった養育費では不足してしまうこともあるかもしれません。
このような場合、元配偶者が任意に応じれば可能ですが、基本的に、一度取り決めた養育費の増額は難しいのが実情です。 家庭裁判所が養育費の増額を認めるのは、基本的に養育費を取り決めた当時に予見できなかった重大な事情の変更があった場合に限られます。
たとえば、次のようなケースです。

【養育費の増額請求が認められる可能性のあるケース】
  • 養育費を支払う側の収入が大きく増加した
  • 養育費を受け取る側の収入が大きく減少した
  • 子どもの進学などで教育費が増加した
  • 子どもがケガや病気になり、特別な医療費がかかるようになった

【まとめ】離婚後でも養育費の請求は可能!

離婚後であっても、基本的には養育費を請求できます。

離婚後の養育費請求であれば、まずは元夫婦間で協議し、まとまらなければ調停を申し立てることになるでしょう。

すでに養育費についての取決めがあるならば、養育費には次のとおり消滅時効があるためご注意ください。
離婚協議書や公正証書で合意した場合:支払期限から5年 判決書、和解調書、調停調書、審判書による場合:支払期限から10年(ただし、判決・審判確定時、和解・調停成立時に期限が到来していない将来分は、支払期限から5年)
離婚後に養育費を請求したいけれど、「元配偶者に直接連絡したくない」、「手続のやり方がわからない」という場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士であれば、あなたの代わりに元配偶者へ連絡し、交渉や裁判所の手続などを行うことができます。

離婚後の養育費請求や、取り決めたはずの養育費の未払いでお悩みの方は、養育費請求を扱っているアディーレ法律事務所にご相談ください。

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この記事の監修弁護士

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

林 頼信の顔写真
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