「夫の風俗通いが発覚したけど、二度としないと反省して謝罪したから、仲直りして夫婦関係を修復した。けれど、実際は風俗通いを続けていた」
このような場合、努力しても、関係修復は難しいかもしれません。
妻の立場からすれば、夫に対する信頼は地に落ちていて、自尊心を失わないためにも、離婚を希望するのも当然でしょう。
そうすると気になるのは、風俗通いを利用して離婚できるのか、慰謝料請求できるのか、という点です。
今夫が風俗通いを止めない場合は、「法定離婚事由」に該当して、離婚や慰謝料の請求ができる可能性があります。ただし、風俗店の従業員への慰謝料請求は難しいことがあります。
この記事を読んでわかること
- 離婚を拒否された場合、離婚するために「法定離婚事由」が必要
- 風俗通いで離婚できるケース
- 風俗通いと慰謝料の請求
- 風俗通いで集める証拠
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慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
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離婚できるのは、配偶者の同意がある場合と、「法定離婚事由」がある場合
夫婦の双方が離婚に合意すれば、理由を問わず離婚できます。
風俗を利用した配偶者と離婚したければ、きっぱり、「離婚したい」と伝えて離婚を求め、配偶者が同意すれば離婚できます。
しかし、風俗を利用した配偶者が離婚を拒否した場合、最終的に裁判所に離婚を認めてもらうためには、「法定離婚事由」が必要です。

「法定離婚事由」は、次の5つです(民法第770条1項各号)。
- 配偶者に不貞な行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき(※)
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
※法改正により、2026年頃に強度の精神病は法定離婚事由からは削除される予定です。
「配偶者の風俗通い」は、この5つの法定離婚事由のうち、「不貞」「悪意の遺棄」「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」の離婚事由に該当する可能性があります。
ただし、裁判離婚の場合、法定離婚事由があったとしても、裁判官が婚姻の継続が相当と考えた場合には、離婚が認められない可能性はゼロではありません。
夫の風俗通いで離婚できるケースとは?
夫の風俗通いが法定離婚事由に該当すれば、裁判官が婚姻の継続が相当と考えない限り、離婚が認められます。
(1)夫の風俗通いが「不貞」にあたるケース
法定離婚事由としての「不貞な行為」とは、配偶者以外の人と自由な意思で行なう性交渉であって、婚姻関係が破綻するものを指します。
「性交渉」とは、「性交」と「性交類似行為」(性交には至らないけれど、口淫などそれに近い行為のことです)のことです。
「2人きりで食事をする」「キスをする」程度では「性交渉」にはあたりません。
したがって、性交渉のない風俗店(例えば、個室ビデオ店やのぞき部屋など)の利用は原則として不貞行為にはなりません。
一方、いわゆる「ソープランド」などの性交渉を前提とする店に継続的に通っている場合には不貞行為にあたるでしょう。
ただし、1~2回など利用回数が少ない場合には、夫婦関係が破綻するような不貞行為ではないとして、法定離婚事由として認められない可能性があります。
(2)夫の風俗通いが「悪意の遺棄」にあたるケース
「法定離婚事由」のうち「悪意の遺棄」とは、配偶者が正当な理由なしに同居義務や相互扶助義務(ともに民法第752条)に違反することです。
配偶者の風俗通いそれ自体は「悪意の遺棄」には該当しません。しかし、風俗通いが高じて家族を顧みない次のようなケースでは、「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
- 生活費を全て風俗通いにつぎ込んで、家族の困窮を全く顧みない
- 風俗嬢に入れ込んで家に帰ってこず、妻の収入だけでは生活していけないのに、生活費も一切入れなくなった
(3)夫の風俗通いが「婚姻関係を継続し難い事由」にあたるケース
夫の風俗通いが、数回にとどまり、婚姻関係が破綻するような不貞とはされない場合や、風俗通いの証拠が不十分で不貞とは認められなかった場合でも、離婚できないわけではありません。
様々な事情を考慮したうえで、夫婦関係は破綻していて「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、離婚が認められるケースもあります。
例えば、風俗通いを止めるように言っても配偶者が聞き入れずに夫婦関係が冷え切り、夫婦間の性交渉がなくなったり、長期間の別居に至ったりしたといった場合に、離婚事由として認められる可能性があります。
「不貞行為」の慰謝料の相場は数十万円~300万円ほど
配偶者が不貞行為をした結果、平和な婚姻共同生活を破壊され、不貞行為をされた配偶者が精神的苦痛を受けた場合には、配偶者や不貞相手に対して慰謝料請求できる可能性があります(民法709条・不法行為)。
裁判となった場合の不貞行為の慰謝料の相場は、次の通りです。
- 離婚しない場合:数十万〜100万円
- 不倫が原因で離婚した場合:100万〜300万円
慰謝料請求は交渉により合意して終了するケースが多いですが、交渉においても、慰謝料の額は裁判上の相場が目安になります。
風俗店の従業員に慰謝料を請求するのは難しい
通常、不貞行為を理由とする慰謝料の請求は、配偶者と浮気相手の両方に請求できます。
不貞行為をした夫と浮気相手は、不貞行為に対する損害について「共同」で責任を負う必要があり、それぞれが損害の「全額」を支払う義務があります(ただし二重取りはできません)。
しかし、風俗店の従業員があくまでも仕事として性交渉を行なっただけなら、慰謝料の支払義務を負わせるほどの違法性が認められないケースも多いようです。
裁判例でも、次のように述べるものがあります(平成26年4月14日東京地方裁判所判決)。少し長いですが、引用します。
「ソープランドに勤務する女性のような売春婦が対価を得て妻のある顧客と性交渉を行った場合には、当該性交渉は当該顧客の性欲処理に商売として応じたに過ぎず、何ら婚姻共同生活の平和を害するものではないから、たとえそれが長年にわたり頻回に行われ、そのことを知った妻が不快感や嫌悪感を抱いて精神的苦痛を受けたとしても、当該妻に対する関係で、不法行為を構成するものではない」
他方、客と従業員という垣根を越えて、恋愛関係になり業務とは関係なく性交渉をしたようなケースでは、請求できる可能性は高くなります。
裁判例でも、店を退職したソープ嬢に金銭を支払って性交渉したという事例で、ソープ嬢に対する慰謝料請求が認められたケースがあります(平成27年7月27日東京地方裁判所判決)。
夫の風俗通いは証拠集めがカギ
法定離婚事由があると証明するため、又は慰謝料を請求する根拠としての不貞行為があったと証明するためには、証拠が必要です。
夫がすんなり「風俗を利用して性行為をした」と認めてくれたり、風俗店の従業員が「既婚者と知りながら性行為をした」と認めてくれればよいのですが、そうではない場合、証拠によって、「不貞」があったことを証明する必要があります。
例えば、夫が風俗店に継続的に通って性交渉をしていた証拠があれば、「不貞行為」として裁判上の離婚が認められる可能性が高くなります。
証拠集めでは、次のようなことが大切です。
- 風俗店の行っているサービス内容を調べる
- カード利用明細や領収書がないか調べる
- 風俗店に実際に継続的に通っていることを押さえる
(風俗店の「来店カード」や名刺、実際に出入りしている写真、風俗店の従業員との性行為があったことがわかるやりとりなど)
実際に出入りしている写真は強い証拠となりますが、なかなか確保することは難しいでしょう。探偵に依頼するにしても、探偵費用がかかります。
来店カードや名刺は、「友人がふざけてくれた」などという言い逃れも可能ですが、風俗利用の証拠として示したうえで問い詰めれば、「もはや認めるしかない」とあきらめて風俗通いを認めることもあります。
【まとめ】夫の風俗通いが「不貞行為」にあたれば、離婚や慰謝料請求が認められることも
今回の記事のまとめは、次のとおりです。
- 日本では、夫婦が離婚をすることに合意すれば、いつでも離婚できる。
- 夫婦の一方が離婚をしたくても、他方が離婚に合意しなければ、最終的には裁判で離婚を認められなければ離婚ができないが、離婚が認められるためには「法定離婚事由」がなければいけない。
- 夫の風俗通いは、法定離婚事由のうち、「不貞行為」「悪意の遺棄」「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性がある。
- 夫の風俗通いが「不貞行為」に該当する場合には、配偶者に対して慰謝料を請求することができるが、風俗店の従業員への請求は難しいことも多い。
- 慰謝料の相場は大体次のとおり。
- 夫婦関係を継続する場合は、数十万〜100万円
- 不倫が原因で離婚に至った場合は、100万〜300万円
今回の記事では、夫の風俗通いと離婚・慰謝料についてご説明しました。
夫の風俗利用については、友人などには相談しにくいことから、1人で悩んでいる方も少なくありません。
一人で悩まず、離婚できるかどうか、慰謝料請求できるかどうかなどについて、一度弁護士に相談してみませんか。
アディーレ法律事務所では、離婚問題のご相談を承っております(※)。
(※なお、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。)
また、アディーレ法律事務所では、安心してご依頼いただけるよう、離婚問題について、ご依頼の目的を全く達成できなかったような場合には、ご依頼時にお支払いいただいた基本費用などを原則として返金いたしますので、費用倒れになることは原則ありません(2024年10月時点)。
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