B型肝炎給付金制度の対象者は?請求プロセス・注意点も併せて解説

B型肝炎給付金制度の対象者は?請求プロセス・注意点も併せて解説
『B型肝炎を長年患っているんだけれど、B型肝炎給付金を受給することはできるんだろうか。』
このようなお悩みをお持ちの方はいませんか。
B型肝炎給付金の対象者は、幼少期に集団予防接種等を受け、これによってB型肝炎ウイルスに持続感染してしまった方(このような方を「一次感染者」といいます)です。

また、一次感染者から母子感染または父子感染した二次感染者、二次感染者から母子感染または父子感染した三次感染者も対象者となり得ます。さらに、これら一次感染者、二次感染者、三次感染者のご遺族の方も対象となります。
本記事では、次の点について弁護士が解説します。
  • B型肝炎給付金の対象者
  • B型肝炎給付金の請求プロセス
  • B型肝炎給付金請求の際の注意点。

B型肝炎の給付金請求に関するご相談は何度でも無料!

そもそもB型肝炎給付金制度とは?

そもそもB型肝炎給付金制度とはどのようなものなのでしょうか。

(1)制度の概要

B型肝炎ウイルスの持続感染者は110万人以上とされ、そのうち最大40万人以上が幼少期に受けた集団予防接種等における注射器の連続使用が原因とされています。
B型肝炎訴訟とは、このような注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染してしまった方が、国にその賠償を求める訴訟です。
幼少期に受けた集団予防接種等における注射器の連続使用によってB型肝炎ウイルスに感染してしまった被害者5名が、1989年、国に対してその賠償を求める訴訟を提起し、2006年の最高裁判決により、国の責任が裁判所により認められることとなりました。

その後、2011年6月に国と全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団との間で救済の要件や金額等について定めた「基本合意書」が締結され、2012年1月13日に、救済の要件を満たす被害者等に対して給付金等を支給することを内容とした「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法」(「特措法」といいます。)が施行されるに至りました。

B型肝炎給付金とは、この特措法に基づき、B型肝炎訴訟を提起した原告が、国との間で裁判上の和解を成立させた場合に支給される給付金をいいます。

(2)受給できる給付金の額

B型肝炎訴訟で受け取ることができる給付金の額は、
  • 病態の種類
  • 20年の除斥期間等の経過の有無
によって異なります。
なお、除斥期間等の起算点は、無症候性キャリアの方についてはB型肝炎ウイルスに感染したときから20年、それ以外の方については対象となる病態を発症したときから20年です。

死亡・肝がん・肝硬変(重度) 除斥期間等が経過していない方 3600万円
除斥期間等が経過している方 900万円
肝硬変(軽度) 除斥期間等が経過していない方 2500万円
除斥期間等が経過している方のうち、現に治療を受けている方等 600万円
除斥期間等が経過している方で、上記以外の方 300万円
慢性肝炎 除斥期間等が経過していない方 1250万円
除斥期間等が経過していない方で、現に治療を受けている方等 300万円
除斥期間等が経過していない方で、上記以外の方 150万円
無症候性キャリア 除斥期間等が経過していない方 600万円
除斥期間等が経過している方 50万円+定期検査費の支給等の政策対応
なお、B型肝炎給付金について、弁護士に依頼された場合、上記の表の給付金額とは別に、給付金の4%が訴訟手当金として給付されます。

B型肝炎給付金制度の対象者は?

B型肝炎給付金の対象者は、まずは幼少期に集団予防接種等を受けたことによってB型肝炎ウイルスに持続感染した一次感染者です。

一次感染者から母子感染または父子感染した二次感染者も救済対象になります。二次感染者から母子感染または父子感染した三次感染者も救済対象になります。また、これらの相続人も救済対象になります。

ただし、B型肝炎給付金を受給するために必要となる要件等がありますので、それぞれ解説します。

(1)一次感染者

一次感染者としてB型肝炎給付金を受給するためには、次のすべての要件を満たす必要があります。
  • B型肝炎ウイルスに持続感染していること
  • 満7歳となる誕生日の前日までに集団予防接種等※を受けていること
  • 集団予防接種等における注射器の連続使用があったこと
  • 母子感染でないこと
  • その他集団予防接種等以外の感染原因がないこと
  • 「集団予防接種等」とは、集団接種の方法で実施された予防接種およびツベルクリン反応検査を指します

(2)二次感染者

二次感染者の場合、母子感染と父子感染により要件が異なります。B型肝炎給付金を受給するためには、それぞれについて次のすべての要件を満たす必要があります。

【母子感染の場合】

•母親が一次感染者の要件をすべて満たしていること
•二次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
•次のアイウのいずれかから、二次感染者の感染原因が母子感染であるといえること
ア:母子のB型肝炎ウイルスの塩基配列が同定されていること
イ:出生直後の時点でB型肝炎ウイルスに持続感染していたことを明らかにできること
ウ:父子感染等の母子感染以外の感染原因がないこと

【父子感染の場合】

•父親が一次感染者の要件をすべて満たしていること
•二次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
•二次感染者の感染原因が父子感染であるといえること

(3)三次感染者

三次感染者の場合も二次感染者と考え方は同様です。母子感染の場合と、父子感染の場合とで要件が異なり、それぞれについて次のすべての要件を満たす必要があります。

【二次感染者からの母子感染の場合】

•祖母が一次感染者の要件をすべて満たしていること
•母親が二次感染者の要件をすべて満たしていること
•三次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
•次のアイウのいずれかから、三次感染者の感染の原因が母子感染であるといえること
ア:母子のB型肝炎ウイルスの塩基配列が同定されていること
イ:出生直後の時点でB型肝炎ウイルスに持続感染していたことを明らかにできること
ウ:父子感染等の母子感染以外の感染原因がないこと

【二次感染者からの父子感染の場合】

•祖母が一次感染者の要件をすべて満たしていること
•父親が二次感染者の要件をすべて満たしていること
•三次感染者がB型肝炎ウイルスに持続感染していること
•三次感染者の感染原因が父子感染であるといえること

(4)上記対象者の相続人

被害者が既に死亡している場合、その遺族の方も給付金を請求することができます(特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法3条1項本文かっこ書)。
ただし、請求することができる遺族は法定相続人に限られます。

【法定相続人】

ア 配偶者がいる場合、配偶者は常に法定相続人となります
イ その他の法定相続人
 第1順位:子
 第2順位:直系専属
 第3順位:兄弟姉妹
ウ 本来相続人となるべき子や兄弟姉妹が被相続人よりも先に死亡していた場合、その子の子またはその兄弟姉妹の子が法定相続人となります

法定相続人

制度対象者がB型肝炎給付金を請求するプロセス

ここまで、B型肝炎給付金を受給するための要件等について解説してきました。
それでは、実際にB型肝炎給付金を受給する場合、どのようなプロセスをたどるのでしょうか。
B型肝炎給付金を受給する場合のおおまかなプロセスは次のようになります。
B型肝炎給付金を受給する場合のプロセス

(1)資料収集

B型肝炎給付金を受給するためには、前記のような所定の要件を満たす必要があります。
そして、訴訟では、この要件を満たしていることを証明するための証拠を提出する必要があります。
そのため、訴訟を提起する前段階として、この証拠となるべき資料を収集する必要があります。
収集するべき資料には、血液検査結果、カルテ等の医療記録等があります。

(2)国賠訴訟の提起

B型肝炎給付金を受給するためには、国を被告として国家賠償請求訴訟を提起する必要があります。
訴訟を提起した場合、期日への出廷が必要となることがありますが、弁護士に手続きを依頼した場合、基本的に弁護士が代理人として出廷することになります。

(3)裁判上の和解の成立

B型肝炎給付金を受給するためには、国との間で裁判上の和解を成立させる必要があります。
裁判上の和解とは、訴訟係属中の期日に当事者がお互い譲り合って自主的に紛争を解決することをいいます。
国との間で裁判上の和解が成立した場合、和解調書が作成されます。この和解調書が次に説明する支払基金への給付金の請求の際に必要となります。

(4)支払基金へ給付金の請求

裁判上の和解が成立し、和解調書が作成された場合、社会保険診療報酬支払基金へ給付金の請求をすることになります。
社会保険診療報酬支払基金とは、健康保険制度における診療報酬の審査や支払いについて、保険者等の委託を受けて実施する審査・支払いの専門機関です。
B型肝炎給付金の支給事務等に関しては、特措法に基づき、この社会保険診療報酬支払基金が行うことになります。

B型肝炎給付金制度の注意点

B型肝炎給付金の手続きを進める場合に若干の注意点があります。
ここでは、その注意点について解説します。

(1)給付金の請求には期限がある

実際に訴訟を提起し、国との和解が成立した方は、B型肝炎給付金の対象者として国が推測していた45万人に遠く及ばない7万7101人(2022年1月31日時点・法務省サイトによる)にとどまっています。
つまり、受給対象者であり給付金を受給できるのに受給していない方が、今でも多く存在するのです。
このような事情から、2016年5月、B型肝炎給付金の請求期間を5年間延長することなどを定めた改正特別措置法が成立しました。
これにより、請求期限は、2022年1月12日までとなりました。
さらに、2021年6月11日、給付金の請求期間を5年間延長することなどを定めた改正特措法が成立し、2022年1月12日までであった請求期限が、次の期限まで延長されることになりました。
2027年(令和9年)3月31日
この請求期限内に訴えを提起しなければ、受給権を失ってしまうことになります。
そのため、給付金の請求をお考えの方は、必要資料の収集等を早期に終わらせ、この期限内に訴えを提起する必要があります。
請求期限を経過してしまい受給権を失ってしまわないように、B型肝炎給付金の受給をお考えの方は、お早めに弁護士に相談することをおすすめします。

(2)必要書類を揃える必要がある

B型肝炎給付金を受給するためには、様々な資料を収集することが必要になります。
この資料を自分自身で収集することも不可能ではありませんが、血液検査については検査項目や場合によっては検査方法に指定がありますし、役所や医療機関等の様々な場所に問い合わせをする必要があります。
また、提出するべき資料としてカルテが求められていることとの関係上、カルテの中身をチェックし、他の医療機関への通院歴が見つかった場合には、その医療機関からカルテを開示してもらった上で、再度カルテの中身をチェックするという作業も行わなければなりません。
さらに、他原因による感染を疑わせるような記載がないか等をカルテからチェックする必要もあり、この作業には医学的な専門知識も必要となってきます。カルテの量が相当な量に及ぶ場合もあり、その場合にはカルテチェックに膨大な時間を費やす必要がでてくることも稀ではありません。
このような事情から、B型肝炎給付金を受給しようとお考えの方は、個人でB型肝炎訴訟の手続きを進めるよりも、弁護士に相談する方がよいでしょう。

【まとめ】B型肝炎給付金制度の対象者は、幼少期に集団予防接種等を受けたことによってB型肝炎ウイルスに持続感染した一次感染者、一次感染者からの二次感染者、二次感染者からの三次感染者、および、これらの法定相続人

本記事をまとめると次のようになります。
  • B型肝炎給付金とは、幼少期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに持続感染した方等が、国に対してその賠償を請求する訴訟を提起し、その訴訟で国との間で裁判上の和解を成立させることによって受給することができる給付金をいう
  • B型肝炎給付金の給付金額は、最大で3600万円。病態の種類や除斥期間等の経過の有無によって金額が異なる。
  • B型肝炎給付金は、一次感染者、二次感染者、三次感染者、およびその法定相続人が支給対象となり得る。
  • B型肝炎給付金を支給する場合のおおまかなプロセスは、『資料収集→国賠訴訟の提起→裁判上の和解の成立→支払基金への請求』となる。
  • B型肝炎給付金制度は、2027年3月31日までの請求期限が設けられている。
  • B型肝炎給付金を受給する上で、資料収集が非常に重要であり、弁護士に頼むと資料収集がスムーズに進む。
アディーレ法律事務所はB型肝炎訴訟の資料収集の代行から、B型肝炎訴訟、同給付金の申請まですべて代わりに行います。
  • 母子手帳など、弁護士では収集できない一部資料を除きます。
また、アディーレ法律事務所では、B型肝炎訴訟・給付金請求に関し、着手金、相談料はいただいておらず、原則として報酬は給付金受け取り後の後払いとなっております。
そのため、当該事件についてアディーレ法律事務所にご依頼いただく場合、原則としてあらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
さらに、弁護士に依頼して、B型肝炎訴訟で和解した場合には、国から弁護士費用の一部として、訴訟手当金(給付金の4%)が支給されます。
B型肝炎訴訟・給付金請求に関しては、アディーレ法律事務所にご相談ください。

B型肝炎の給付金請求に関するご相談は何度でも無料!

この記事の監修弁護士

香川大学、早稲田大学大学院、及び広島修道大学法科大学院卒。2017年よりB型肝炎部門の統括者。また、2019年よりアスベスト(石綿)訴訟の統括者も兼任。被害を受けた方々に寄り添うことを第一とし、「身近な」法律事務所であり続けられるよう奮闘している。東京弁護士会所属。

大西 亜希子の顔写真
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