加害者側の保険会社から「過失割合が8対2ですので賠償金が減額されます」と言われ、
「加害者に事故の原因があるのに、賠償金が減額されることに納得できない!」
などのお悩みをお持ちではないでしょうか?
過失割合が8対2である場合、加害者に事故の主な原因があるとしても、賠償金額が2割減額されてしまいます。
過失割合は当事者同士が話し合って決めるのが原則ですので、必ずしも加害者側の保険会社からの言葉を鵜呑みにする必要はありません。
加害者側の保険会社からの提示にサインをする前に、過失割合8対2となるケースや、過失割合に納得ができない場合の対処法について知っておきましょう。
この記事では
- 過失割合と過失相殺
- 過失割合が8対2となるケース
- 過失割合に納得できない場合の対処法
について弁護士が詳しく解説します。
岡山大学、及び岡山大学法科大学院卒。 アディーレ法律事務所では刑事事件、労働事件など様々な分野を担当した後、2020年より交通事故に従事。2023年からは交通部門の統括者として、被害に遭われた方々の立場に寄り添ったより良い解決方法を実現できるよう、日々職務に邁進している。東京弁護士会所属。
弁護士による交通事故被害の無料相談はアディーレへ!
費用倒れの不安を解消!「損はさせない保証」あり
ご相談・ご依頼は、安心の全国対応。国内65拠点以上(※1)
交通事故における「過失割合」と「過失相殺」
交通事故の賠償額を決めるにあたり、「過失割合」と「過失相殺」が重要になってきます。
交通事故における「過失割合」と「過失相殺」についてそれぞれ解説いたします。
(1)過失割合とは「双方の責任の割合」
「過失割合」とは、簡単にいえば、「交通事故が起きたことについて、どっちが、どのくらい悪いのか」ということを示すものです。例えば、加害者側が60%、被害者側が40%悪い場合には、過失割合(加害者:被害者)は60:40となります。
(2)過失相殺とは「過失割合に応じて損害賠償額を減額する制度」
過失相殺とは、過失割合に基づいて、損害賠償額を減額するというものです。
例えば、次のケースで考えてみましょう。
- 過失相殺前の損害賠償額が100万円
- 過失割合(加害者:被害者)が80:20
この場合、被害者の過失20%分が損害賠償額から減額されますので、加害者が支払うのは80万円ということになります。
過失割合が8対2の場合には、本来の損害額から20%減額されてしまうことになります。
基本的な過失割合が8対2となる主な事故パターン
過失割合が8対2となる主な事故パターンについて、紹介します。
- 自動車同士の事故
- 自動車対バイクの事故
- 自動車対自転車の事故
- 自動車対歩行者の事故
なお、これから紹介する過失割合は事故の具体的な状況に応じて修正される可能性がありますので、あくまで目安として参考にしてください。
(1)自動車同士の事故
まずは、自動車同士の事故について紹介します。
(1-1)青信号でA車が直進進入し、A車の対向車B車も青信号で右折進入したケース
このケースの場合、A車:B車=2:8となります(B車がA車の対向車)。
信号機のない交差点でも同様に考えます。
(1-2)追越禁止場所でない場所で後行するB車が先行するA車を追い越すケース
このケースの場合、A車:B車=2:8となります。
なお、追越時にA車に左端により譲るべき注意義務の違反や追越中の加速などがあった場合にはA車の過失が加算されることになります。
(1-3)信号のない交差点で左方車A車が減速し直進進入し、右方車B車が減速せずに直進進入したケース
このケースの場合、A車:B車=2:8となります(交差する道路が同じ幅の道路である)。
A車が広い道路、B車が狭い道路を進行しているケースでも同様に考えます。
なお、見通しの良い交差点の場合には、A車:B車=1:9となります。
(1-4)T字路においてA車が広路を直進走行し、B車が狭路から右左折するケース
このケースの場合、A車:B車=2:8となります。
なお、A車が走る道路が優先道路である場合にはA車:B車=1:9となります。
(1-5)道路外から道路に進入するためにB車が右左折するケース
このケースの場合、A車:B車=2:8となります。
なお、B車がすでに右折を終了している場合には、A車:B車=3:7となります。
(1-6)A車が直進走行し、B車が転回中に接触したケース
このケースの場合、A車:B車=2:8となります。
なお、転回終了直後の事故の場合はA車:B車=3:7、見通しのきかない道路や交通が特に頻繁な道路など転回が危険である道路の場合には、A車:B車=1:9となります。
(1-7)駐車場内でA車が駐車区画に駐車しようとし、通路を進行してきたB車と接触したケース
このケースの場合、A車:B車=2:8となります。
なお、A車がすでに駐車区画内におさまり、駐車位置の修正のために通路側に再発進した場合には、A車:B車=7:3を参考として過失割合を検討することとなります。
(2)自動車とバイクの事故
次に、自動車とバイクの事故について紹介します。
(2-1)交差点においてバイクが直進中、先行する自動車が左折するケース
このケースの場合、バイク:車=2:8となります(交差点の手前30メートルの地点で四輪車が左折の合図をしている場合が前提となります)。
なお、バイクが頭を下げて全く前を見ていない場合など前方不注意の程度が大きい場合にはバイク:車=3:7となります。
(2-2)バイクが直進走行中、先行する車が進路変更したケース
このケースの場合、バイク:車=2:8となります。
なお、進路変更禁止場所である場合にはバイク:車=0:10となります。
(2-3)信号機のない交差点でバイクが直進進入し、右方車が右折進入したケース
同じ幅の道路が交差していることを前提としています。
このケースの場合、バイク:車=2:8となります。
なお、右折車が徐行していない場合にはバイク:車=1:9、右折車がすでに右折を完了していた場合にはバイク:車=3:7となります。
(3)自動車と自転車の事故
次に自動車と自転車の事故について紹介します。
(3-1)信号機のない交差点で自転車が直進進入し、交差する同幅員の道路から自動車も直進進入したケース
このケースの場合、自転車:自動車=2:8となります(自転車が左側進行)。
なお、自転車が右側通行(自動車から見て左方から進入)の場合には、自転車:自動車=2.5:7.5となります。
(3-2)信号機のない交差点で自転車が直進進入し、交差する同幅員の道路から自動車が右折進入したケース
このケースの場合、自転車:自動車=2:8となります。
なお、自転車が自転車横断帯通行や横断歩道を通行している場合には、自転車に有利に修正されることになります。
(3-3)自動車が直進走行中、対向する自転車が右側端通行し接触したケース
このケースの場合、自転車:自動車=2:8となります。
なお、自転車が予想外のふらふら走行をしていた場合には自転車:自動車=3:7となります。
(4)自動車と歩行者の事故
最後に、自動車と歩行者の事故について紹介します。
(4-1)横断歩道や交差点も近くない場所で歩行者が横断中に車と接触したケース
このケースの場合、歩行者:自動車=2:8となります。
なお、幹線道路の場合には歩行者:自動車=3:7、住宅街や商店街の場合には歩行者:自動車=1.5:8.5となります。
(4-2)広路で横断歩道のない交差点に直近する地点で歩行者が横断中に直進車と接触したケース
このケースの場合、歩行者:自動車=2:8となります。
なお、横断禁止道路である場合には、歩行者の過失割合が0.5~1程度加算されます。
(4-3)横断歩道を黄色信号で歩行中、黄色信号で車が右左折してきたケース
このケースの場合、歩行者:自動車=2:8となります。
なお、幹線道路である場合には、歩行者:自動車=2.5:7.5、住宅街や商店街である場合には歩行者:自動車=1.5:8.5となります。
過失割合の修正要素(加算要素・減算要素)
事故のパターンに応じた過失割合はこれまで説明した通りです。もっとも、具体的な事故の状況や歩行者の属性(例えば、高齢者や幼児など)に応じて、過失割合は修正されます。
加害者側の保険会社はあなたに有利となる修正要素まで細かく検討していない可能性があります。どういったことが過失割合の修正要素となるのかは確認しておきましょう。
主な過失割合の修正要素について事故の類型別にまとめてありますので、過失割合の修正要素について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
過失割合に納得できない場合の対処法
交渉の段階ですと、過失割合は基本的には保険会社が提示してくることが多いですが、保険会社から提示された過失割合が必ずしも正しいものであるとは限りません。
過失割合に納得がいかない場合に取っておきたい行動は次のとおりです。
- 有利になる証拠を探す
- 弁護士に依頼する
詳しく説明します。
(1)有利になる証拠を探す
まずは、有利となる過失割合の修正要素(運転者がわき見運転していた等の事実)を探しましょう。保険会社との交渉材料になります。
保険会社に修正要素を認めてもらうためには、確実な証拠を集めて提示する必要があります。
確実な証拠として、例えば次のようなものがあります。
- 交通事故の目撃者
- ドライブレコーダー
- 物損資料
- 防犯カメラ
- 実況見分調書(人身事故の際に警察官が捜査資料として作成するもの)など
(2)弁護士に依頼する
弁護士に依頼することで、妥当な過失割合となることが期待できると同時に、最終的に受け取れる賠償金の増額が期待できます。
- 妥当な過失割合による示談が期待できる
- 賠償金の増額が期待できる
(2-1)妥当な過失割合で示談が期待できる
過失割合は、これまで紹介したように事故の態様に応じて基本の過失割合がある程度決まっていますが、個別の事故の状況に応じて過失割合は修正されます。
事故当事者の主張(信号の色など)が異なる場合には、あなたの主張ではなく、相手の主張する事実に基づいて過失割合を提案してきている可能性があります。
そのような場合に、過失割合について検討せずに示談を成立させてしまうと、適切な損害賠償を受け取れなくなるおそれがあります。
交通事故の経験が豊富な弁護士に示談交渉を依頼したりすると、弁護士は、道路状況や車の損傷部分・損傷具合などのさまざまな証拠をもとに正しい事故状況を検討します。そして、弁護士はその結果を基に保険会社と交渉します。これにより、妥当な過失割合で保険会社と示談できる可能性が高まります。
(2-2)弁護士に依頼すれば賠償金の増額が期待できる
過失割合の他にも慰謝料の面で、賠償額の増額が期待できます。
慰謝料の算定基準には「自賠責の基準」、「任意保険の基準」、「弁護士の基準(裁判所の基準ともいいます)」の3種類あり、基本的には、弁護士の基準で算定すると最も高額になります(※)。
※ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、自分の過失が70%以上になってしまったなど過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。
任意保険会社が示談において提案する慰謝料額は、各社が定めている任意保険の基準で算定されており、公表はされていませんが、基本的には弁護士の基準に比べ低額となることが多いです。
そして、被害者本人が保険会社との示談交渉で弁護士の基準による慰謝料の支払いを要求しても、任意保険会社がそれに応じることはほとんどありません。
他方、弁護士が交渉すると、弁護士は最終的には訴訟も辞さない姿勢で、弁護士の基準を基本として賠償額を計算し、加害者側の任意保険会社と示談交渉を行います。
任意保険会社も、訴訟となれば最終的な解決までに時間がかかり、弁護士費用もかかりますので、早期解決という利益を重視し、弁護士の基準に近づける形で示談金を増額する可能性があるのです。
過失割合「9:0」として合意することも
被害者と加害者間で過失割合の合意ができない場合に、妥協策として双方の過失割合を「9:0」として片側賠償することにより解決することがあります。
これは過失9割とされた側が損害賠償請求権を放棄することで、過失1割とされた側が相手方への損害賠償を支払わずに済ませる方法です。
【具体例】
AとBの間の衝突事故で、Aに200万円の車両損害、Bに100万円の車両損害が生じたケースを考えます。
AとBの過失割合が9:1である場合、お互いが負担する金額は次のようになります。
【A:B=9:1の場合】
A | B | |
---|---|---|
自身の損害についての自己負担額 | 180万円(200万の9割) | 10万円(100万の1割) |
相手方に支払うべき賠償額 | 90万円(100万の9割) | 20万円(200万の1割) |
総負担額 | 270万円 | 30万円 |
もっとも、過失割合9対1で合意ができない場合、妥協策としてA:Bの過失割合9:0とするとお互いの負担額は次のようになります。
【A:B=9:0の場合】
A | B | |
---|---|---|
自身の損害についての自己負担額 | 180万円(200万の9割) | 10万円 |
相手方に支払うべき賠償額 | 90万円(100万の9割) | 0万円 |
総負担額 | 270万円 | 10万円 |
A:Bの過失割合=9:0(片側賠償)にすると、Bとしては、A:Bの過失割合=9:1の場合と比べて、Aに支払うべき賠償額が20万円→0円となって総負担額が減るというメリットがあります。
一方、Aとしては、このまま過失割合の交渉がまとまらず、訴訟等で過失割合10対0と判断されてしまった場合よりも賠償金額を抑えることができます。
このように、時間と労力のかかる交渉を避け、お互いに一定の経済的なメリットを受けたいという場合に片側賠償という方法が用いられます。
【まとめ】過失割合に納得がいかない場合には保険会社の提示を鵜呑みにせず交渉!過失割合が変わる可能性あり!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 「過失割合」とは、簡単にいえば、「交通事故が起きたことについて、どっちが、どのくらい悪いのか」ということを示すもの。過失割合に基づいて、損害賠償額を減額される(過失割合が8対2の場合には、本来の損害額から20%減額されてしまうことになる)。
- 過失割合が8:2となる主なケース
- 自動車同士の事故
- 青信号でA車が直進進入し、A車の対向車B車も青信号で右折進入したケース
- 追越禁止場所でない場所で後行するB車が先行するA車を追い越すケース
- 信号のない交差点で左方車A車が減速し直進進入し、右方車B車が減速せずに直進進入したケース
- T字路においてA車が広路を直進走行し、B車が狭路から右左折するケース
- 道路外から道路に進入するためにB車が右左折するケース
- A車が直進走行し、B車が転回中に接触したケース
- 駐車場内でA車が駐車区画に駐車しようとし、通路を進行してきたB車と接触したケース
- 自動車対バイクの事故
- 交差点においてバイクが直進中、先行する自動車が左折するケース
- バイクが直進走行中、先行する車が進路変更したケース
- 信号機のない交差点でバイクが直進進入し、右方車が右折進入したケース
- 自動車対自転車の事故
- 信号機のない交差点で自転車が直進進入し、交差する同幅員の道路から自動車も直進進入したケース
- 信号機のない交差点で自転車が直進進入し、交差する同幅員の道路から自動車が右折進入したケース
- 自動車が直進走行中、対向する自転車が右側端通行し接触したケース
- 自動車対歩行者の事故
- 横断歩道や交差点も近くない場所で歩行者が横断中に車と接触したケース
- 広路で横断歩道のない交差点に直近する地点で歩行者が横断中に直進車と接触したケース
- 横断歩道を黄色信号で歩行中、黄色信号で車が右左折してきたケース
- 自動車同士の事故
- 過失割合に納得がいかない場合に取っておきたい行動
- 有利になる証拠を探す
- 弁護士に依頼する
- 被害者と加害者間で過失割合の合意ができない場合に、妥協策として双方の過失割合を「9:0」と合意して片側賠償することにより解決することもある。
過失割合に納得できない場合や、提案された過失割合が適切なのかどうかわからない場合には、示談を成立させる前に、弁護士への相談をお勧めします。
アディーレ法律事務所では、交通事故の被害者の方による損害賠償請求を取り扱っております。
交通事故の被害に遭った方が、賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので(※)、やはりお客様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各弁護士事務所へご確認ください。
(以上につき、2022年3月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求のことでお悩みの場合は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
慰謝料請求についておひとりで悩んでいる方、弁護士に相談することに抵抗を感じられている方は、ご相談前にご覧いただき、ぜひ参考にしてください。