「元夫からの養育費の支払いが滞っていて、連絡もつかない。元夫の親とは連絡がつくし、かわりに支払ってもらえないだろうか?」
基本的に、元夫の両親には養育費の支払いをしなければならない法的な義務はありません。
しかし、元夫の両親に対して、養育費相当額の支払いを求めることができる場合もありますので、諦める必要はありません。
また、養育費の支払いが滞っている場合には、元夫の財産や給料の差押えができるケースもありますので、その方法も検討してみましょう。
この記事では、次のことについて弁護士がくわしく解説します。
- 養育費は支払われないとき夫の両親に請求できるのか?
- 養育費が支払われないときの対処法とは?
養育費の支払いが滞っており、お困りの方は、ぜひ参考にしてください。
ここを押さえればOK!
例外的なケースとして、元夫の両親が養育費の連帯保証人である場合や、両親が経済的に余裕があり孫の生活が苦しい場合には、元夫の両親であっても養育費を支払わなければならない可能性があります。
さらに、養育費の未払いが続く場合には、元夫の財産を強制執行する手段も検討すべきです。強制執行には債務名義が必要で、確定判決や公正証書がそれに当たります。相手の協力が得られない場合は家庭裁判所に申し立てを行い、調停調書や審判書を取得することが必要です。
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慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
養育費が支払われないとき、元夫の両親に請求できる?

養育費を支払うべき元夫の両親に、その肩代わりを求めることはできるのでしょうか?
ここでは、養育費を支払うべき元夫の両親に養育費を支払う法的な義務はあるのか、養育費の支払いを求めることができるのか、について説明します。
(1)元夫の両親には養育費の支払いをしなければなれない義務はない
養育費を支払わなければならないのはあくまで子の親である元夫(妻)です。
そのため、元夫の両親には、養育費を支払わなければならない法的な義務はありません。
つまり、元夫からの養育費の支払いが滞っている場合、元夫の両親が肩代わりすべきと考えてしまいたくなる気持ちはわかりますが、元夫の両親が養育費の肩代わりをしなければなれないというわけではありません。
(2)養育費の支払いをお願いすることはできる
元夫の両親には、養育費の支払いについて法的義務はありませんが、支払いについてお願いすることはできます。
そして、元夫の両親が養育費を支払いに応じてくれれば問題はありません。
元夫の両親には、養育費の支払いに応じなければならい法的義務はないため、あくまでお願いベースであるということに注意してください。
元夫の両親が養育費を代わりに支払わなければならない例外的なケース
もっとも、元夫の両親が、元夫の代わりに養育費(相当額)を支払わなければならない例外的なケースがあります。
例えば、次のようなケースになります。
- 元夫の両親が養育費について連帯保証人となっている場合
- 元夫の両親に経済的に余裕がある場合
(1)元夫の両親が養育費について連帯保証人となっている場合
元夫の両親が養育費についての「連帯保証人」となっている場合には、元夫の両親が元夫に代わり養育費を支払わななければなりません。
「連帯保証人」とは、主債務者(養育費を支払うべき夫)が支払えなくなった場合、主債務者に代わって支払う法的な義務を負います。
元夫の両親が養育費の連帯保証人となっている場合に、元夫からの養育費の支払いがなくなってしまったときには、元夫に代わり、元夫の両親に養育費を支払う必要があります。
(2)元夫の両親に経済的に余裕がある場合
元夫の両親に経済的に余裕がある場合にも、元夫の両親が元夫に代わり養育費(相当額)を支払わなければならない可能性があります。
そもそも民法上、親族間に扶養義務があるとされています。
どういうことかというと、民法上、元夫の両親(子の祖父母)には、自分の生活に経済的に余裕があり、かつ、子や孫の生活が苦しい場合には、子や孫に対して最低限の生活の扶助をしなければならない「生活扶助義務」があるのです。
「直系血族及び兄弟姉妹は、お互いに扶養をする義務がある。」
引用:民法第877条1項|e-Gov法令検索
元夫の両親(子の祖父母)には、自身の生活に経済的に余裕があり、かつ、孫の生活が苦しい場合には、子に養育費相当額の扶養費を支払わなければならない可能性があります。
養育費が支払われないときの対処法
養育費が支払われない時には、元夫の財産を強制執行することも検討してみましょう。
強制執行では、例えば、元夫名義の預貯金や夫の給料を差し押さえることができます。

ここで、強制執行手続とは何か、どのような場合に利用できるのかについて簡単に説明します。
強制執行手続では何ができるのでしょうか?
強制執行手続を行うことで相手の給料や預貯金を差し押さえて、そこから未払いの養育費を受け取ることができます。
ただ、相手の生活もありますので、給与で差し押さえられるのは、基本的に税金等を控除した残額の2分の1までとされています(民事執行法151条の2第1項3号、152条第3項)。
強制執行手続はどのような場合に利用ができるのでしょうか?
養育費について強制執行力のある書面(債務名義)がある場合には、地方裁判所に対して強制執行の申し立てをすることで、相手方の財産から強制的に支払いを確保することができます。
債務名義としては、次のようなものがあります。
・確定判決
・和解調書、調停調書、審判書
・公正証書(執行認諾文言有) など
離婚の際に公正証書を作成せず、口頭や公正証書以外の書面で養育費の合意をしたにすぎない場合には、すぐに強制執行の手続きをとることはできません。
調停調書や公正証書など債務名義がありません。このような場合はどうすればいいでしょうか?
相手の協力が期待できる場合には、養育費について公正証書を作成することで、今後の未払いが出た場合に、直ちに強制執行手続をとることができます。
一方、相手の協力が得られないなど、公正証書の作成が難しければ、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に養育費支払いの申立てをして、債務名義となる調停調書・審判書を得る必要があります。
ただし、調停調書を得るためには時間がかかります。すぐに養育費の支払いを受けなければ、子どもを育てるのが困難な経済状況に陥っている場合には、初めから審判を申し立て、併せて審判前の保全処分の利用を検討するとよいでしょう。
養育費の未払いをする相手に対し、どのような手段をとることができるのかについて、詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

【まとめ】元夫の両親が例外的に養育費を支払うケースもあり
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 養育費が支払われない場合、元夫(妻)の両親が元夫(妻)に代わって、肩代わりしなければならない法的義務はありません。しかし、支払いの肩代わりについてお願いすることは可能です。
- 元夫(妻)の両親が養育費の支払う法的な義務を負う例外的なケース
- 元夫(妻)の両親が養育費について連帯保証人となっている場合
- 元夫(妻)の両親に経済的に余裕がある場合

アディーレ法律事務所では、現在養育費を受け取れておらず、養育費を請求したいという方からのご相談を承っています。
適切な額の養育費を請求することは、お子様の将来のためにもとても重要です。
養育費のご相談はお電話で可能ですので(フリーコール|0120-554-212) 、一度ぜひお問い合わせください。