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無年金とは?高齢者の貧困リスクの回避・軽減に利用できる国の制度

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kiriu_sakura

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「将来もらえる年金がない『無年金』という状態があると聞いたけれど、どういうことなんだろう?」

無年金とは、公的年金を受け取れない状態のことです。
無年金になる原因は、基本的には年金保険料の納付期間が十分にないことにあります。

この記事を読んでわかること
  • 無年金になる理由とリスク
  • 無年金の高齢者を減らすために国が実施している制度
  • 無年金の高齢者も含めた生活困窮者のための国の制度
この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

無年金になる理由とリスク

日本の公的年金制度には、主に「国民年金」と「厚生年金」があります。
「無年金」とは、これらの公的年金を一切受け取れない状態のことを言います。

厚生労働省の令和3年度の調査によれば、65歳以上の無年金者は全国に約52万人(全国の65歳以上のおよそ3%)もいるということになっています。

参考:後期高齢者医療制度被保険者実態調査|政府統計の総合窓口

(1)無年金になる原因は「年金保険料の納付期間の短さ」

無年金になってしまう原因の1つには、年金保険料の納付期間が短いことにあります。
国民年金の受給資格を得るには、基本的には、年金保険料の納付期間と免除期間などを合計して10年の年金加入期間が必要です。これが足りない場合には、公的年金を受給できない無年金になってしまうのです(*ただし、10年に満たない場合でも、合算対象期間を加えた期間が10年以上であれば国民年金の受給要件は満たします)。

納付期間が短くなってしまう主なケースには、次のようなものがあります。

  • 家計が苦しくて年金保険料が払えない
  • 国民年金への強制加入の意識が低く、年金保険料の納付義務についての意識が低い(国民年金の強制加入は1986年以降のため、高齢者の方にこのパターンが多い)
  • 海外生活が長い(住民票が日本にない場合には、国民年金の強制加入の対象にならない)       など

(2)無年金のリスク

無年金となることには、公的年金の受給年齢になっても年金が受け取れず、家計が苦しくなるというリスクがあります。
特に、高齢になるにつれて健康を悪くするなどして、医療費や介護費がかかってしまう傾向があります。
このようなときに、年金を受け取れていなければ、負担は非常に大きなものとなってしまいます。

(3)年金保険料を納付しないリスク

厚生年金加入者は給料から年金保険料が天引きされるのですが、国民年金加入者は自分で保険料を納付する必要があります。
このため、国民年金加入者に年金保険料の未納付が発生しやすくなります。

しかし、国民年金加入者が年金保険料を納付しないことにはリスクがあります。

  • 督促状を無視して年金保険料を滞納し続けると、延滞金を徴収されることがある
  • 年金保険料を滞納し続けると、延滞金の支払だけでなく給料などの財産を差し押さえられる可能性がある。

年金の差押えについて、詳しくはこちらをご覧ください。

年金の差押えとは?未納から財産の没収までの流れを解説

無年金の高齢者を減らすために国が実施している制度

家計の状況が苦しく、国民年金保険料の納付が難しい方に向けて、法定免除・申請免除(猶予)の制度が用意されています。

(1)法定免除制度

次のいずれかに当てはまる場合には、届出をすることによって国民年金保険料が全額免除されます。

  • 障害基礎年金ならびに被用者年金の障害年金(1級・2級)を受けている方
  • 生活保護法による生活扶助を受けている日本国籍の方
  • 国立ハンセン病療養所などで療養している方

参考:国民年金保険料の法定免除制度|日本年金機構

(2)保険料免除制度(申請免除)

本人・世帯主・配偶者の前年の所得に応じて、国民年金保険料の納付が次のいずれかの割合で免除されます。

  • 全額免除
  • 4分の3免除
  • 半額免除
  • 4分の1免除

もっとも、免除されたままでいると、将来受け取れる老齢基礎年金が減額されてしまうため、納付可能になった時点で追納するのがおすすめです(免除後10年以内なら追納できます)。

(3)その他の申請による免除・猶予

これらの他にも申請による免除・猶予の制度があります。

  • 学生納付特例制度
  • 若年者納付猶予制度
  • 退職(失業)による特例免除制度
  • 家庭内暴力による特例免除制度
  • 産前産後期間の免除制度

参考:国民年金保険料の学生納付特例制度|日本年金機構

無年金の高齢者も含めた生活が苦しい方のための国の制度

無年金の高齢者になってしまったら、将来どうやって暮らしていけばいいのでしょうか?

生活保護などの国の制度を使って暮らしていくことになるでしょう。暮らしが苦しい方を助ける国の制度は、生活保護などいくつかあります。

65歳以上の生活保護受給者は増加傾向にあります。
生活保護は、「収入が国の定める最低限度の基準を下回っていること」「資産を持っていないこと」「病気やケガなどで働けず生活が困窮していること」などの条件を満たせば、誰でも受けることができる制度です。
生活保護を受けることで、最低限度の生活を営むために必要なお金などの支給を受けることができます。

生活保護以外にも、「生活福祉資金貸付制度」など、生活のためのお金を貸し付けてくれる制度もあります。
この貸付は、民間の貸金業者から借りるよりもより低い利率など優遇された条件でお金を借りることができるものです。

無年金のまま高齢者になった場合には、これらの制度をうまく活用して、苦しい生活を乗り切って立て直していくこととなるでしょう。

お金がないときの対処法について、詳しくはこちらをご覧ください。

お金がない!借金せずに乗り切る方法や公的支援制度

【まとめ】受給資格期間が「10年」に満たないと、国民年金も受け取れない「無年金」になる

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 「無年金」とは、公的年金を一切受け取れない状態のこと。
  • 無年金になってしまう大きな原因は、年金保険料の納付期間が短いこと。国民年金保険料の納付期間が短く受給資格期間が「10年」に満たないと、国民年金も受け取れない「無年金」になる。
  • 家計の状況が苦しく、国民年金保険料の納付が難しい方に向けて、法定免除・申請免除(猶予)の制度が用意されている。
  • 無年金の高齢者となった場合には、生活保護などの国の制度を活用して暮らしを立て直していくこととなる。

無年金のまま高齢者となってしまうと、生活が非常に苦しくなってしまいがちです。
無年金とならないように、年金保険料は可能な限りしっかりと納めるようにしましょう。
また、納めることが難しくても、免除や猶予の対象とならないかしっかり確認するようにしましょう。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。