「国民年金の保険料、今月も払えなそう…。滞納した分は、分割で納付できるのかな」
日本では、国民年金法という法律で、20歳以上60歳未満の方は必ず国民年金に加入して保険料を支払わなくてはいけないことになっています。
なお、2022年度(2022年4月~2023年3月)の保険料は、月に1万6590円です(※毎年見直されます)。
支払いが困難な場合、「免除制度」や「納付猶予制度」がありますし、場合によっては、分割納付も認めてもらえることがありますから、支払っていない期間があるという方は、役場の窓口で相談してみましょう。
未払いのまま放置することはお勧めしません。基本的に、納付期限から2年が経過すると国民年金保険料は支払えなくなります。
また、国民年金を支払っていない期間があると、将来受け取れる老齢基礎年金額が減ってしまいます。
さらに、納付期間が短いとそもそも老齢基礎年金やけがをした時の障害基礎年金なども受け取れなくなるおそれがあります。
今回の記事では、次のことについてご説明します。
- 国民年金とは
- 国民年金保険料を支払わないとどうなるのか
- 国民年金保険料の「免除」や「猶予」の制度
- 国民年金保険料の分割納付
- 国民年金保険料を支払わなかった場合のデメリット
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
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そもそも「国民年金」ってなに?
国民年金とは、日本国内に住む20歳以上60歳未満の方が、毎月保険料を納付し(2022年度は1万6590円)、基本的に65歳になった時に「老齢基礎年金」が支払われる制度です。
生きている以上、自分自身や家族が歳を取ったり、けがをして障害が残ったり、家族が死んでしまったり……いろいろな原因から、自立した生活が送れなくなるリスクがあります。
予め国民年金保険料を納付し、必要になった時に給付を受け取れるようにすることで、このようなリスクに備える仕組みが年金制度なのです。
国民年金保険料を期限までに納付しなかったらどうなるの?
国民年金は、基本的には、納付期限から2年経つと保険料を徴収する権利が時効によって消滅するため、納付することができなくなります。
なお、令和4年1月末時点で時効になってしまった分、つまり2年前の令和2年1月分の国民年金保険料の最終的な納付率は、77.1%でした。
国民年金保険料の納付率は、年々上昇しています。
これは、後でお話しするように、国民年金保険料の未納に対しては、財産の差押えなどをして積極的に徴収するようになったからです。
それでは、国民年金保険料を期限までに納付しないと、どうなるのでしょうか?
(1)延滞金を徴収される
国民年金保険料を納付期限までに納付しなかった場合には、順次、次のような書面が送付されてきます。

国民年金保険料を納付期限までに納付しなかったとしても、まずは、自主的な納付を促されるにとどまります。
上に書いたの書面も1通ずつ届くわけではなく、特別催告状も何度か送付され、封筒の色が青色→黄色→赤色、と変化していきます。
それでも、納付しない場合には、『延滞金』(納付が遅れたことに対するペナルティです。)が発生します。


図で表すと、次のとおりです。


納付しなかった期間が長くなればなるほど、延滞金も増えていきます。
延滞金の利率について
延滞金の利率は、延滞金が発生する期間中は一律ではなく、時期によって異なります。
具体的には、次のとおりです。

期間 | A期間 | B期間 |
平成31年1月1日~令和元年12月31日 | 2.6% | 8.9% |
令和2年1月1日~令和2年12月31日 | 2.6% | 8.9% |
令和3年1月1日~令和3年12月31日 | 2.5% | 8.8% |
令和4年1月1日~令和4年12月31日 | 2.4% | 8.7% |
(2)財産を差し押さえられる可能性がある
督促状を無視して国民年金保険料を納付しないと、
差押予告通知
が送付されることがあります。
それも無視していたら財産を調査され、不動産・預金・給与などの財産が差し押さえられてしまいます。
近年、国民年金機構も国民年金保険料の徴収には積極的に取り組んでおり、平成30年度からは、控除後所得が300万円以上で7ヶ月以上の国民年金保険料の滞納者が差押え対象となっています(2022年4月時点)。
実際に国民年金保険料を滞納して財産の差押がなされた件数は、以下のとおりです。
平成30年度 | 令和元年度 | |
最終催告状送付 | 13万3900件 | 14万2871件 |
督促状送付 | 8万1597件 | 8万9615件 |
差押 | 1万7977件 | 2万0590件 |
※令和2年度は、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、強制徴収は停止されました。
令和元年度では、差押えが実施されたのは2万590件ですね。
令和2年度は別として、差押えの件数は、近年、増加しています。
差押えを受けると、ある日突然、預金がなくなっていたり、勤務先から貰える給料が減ってしまいます。



給料は全額差し押さえられてしまう?
国民年金保険料を滞納して給料が差し押さえられる場合、給料の全額が差し押さえられるわけではありません。
全額差し押さえられたら生活できなくなってしまいますから、差押えができる給料の範囲は法律で決まっています。
差し押さえられる給料の範囲は、
給料の総支給額(額面給料)
(※1000円未満は切捨て)
から、
- 所得税
- 住民税
- 社会保険料など
- 滞納者本人につき10万円
- 扶養家族1人につき4万5000円
- 給料の総支給額から1~5を差し引いた金額の20%
(※1~3、6は1000円未満は切上げ)
を差し引いた金額についてのみが原則です。
ですから、例えば手取り給与が10万円であれば、そもそも差押えできる給料はありません(上記の4を差し引いただけで差押可能額がゼロになります。)から、給料の差押えをされることはありません。(額面給料が20万円程度で扶養家族がいない場合であれば、差押え可能金額は手取りの4分の1よりも若干多くなることが多いと思います)。
国民年金保険料を支払えない時の対処法について
この点については、条件を満たせば『免除』や『猶予』が認められる制度があります。
(1)国民年金保険料の『法定免除』について
- 生活保護を受給している場合
- 障害基礎年金並びに被用者年金の障害年金(2級以上)を受けている場合
- 国立ハンセン病療養所などで療養している場合
は、役所に届出をすれば、国民年金保険料が免除されます。
これを法定免除と言います。
(2)申請による『免除』及び『納付猶予』
経済的な事情で国民年金保険料が支払えない場合、本人からの申請により、国民年金保険料を全額又は一部免除したり、納付を猶予する制度があります。
(2-1)『免除』について
- 第1号被保険者(自営業・自由業・アルバイト等)で、本人・配偶者・世帯主それぞれの所得が一定額以下の場合
- 失業したり、災害に遭われた方などで所得が所得基準を下回っている場合
- 配偶者からの暴力(DV)によって配偶者と住居が異なる場合には、配偶者の所得に関わらず、本人の所得が一定額以下の場合
などは、申請することにより、必要な条件を満たしていると判断されれば国民年金保険料が全額又は一部について免除されます。
これを申請免除と言います。
(2-2)『納付猶予』について
20歳以上50歳未満であり、第1号被保険者(自営業・自由業・アルバイト等)で、本人・配偶者・世帯主それぞれの所得が一定額以下の場合には、申請により、国民年金保険料の納付が猶予される可能性があります。
(※2016年7月以降の場合。2016年6月までは30歳未満が対象です。)
なお、これらの免除及び猶予は学生の方は利用できません。
学生の方は、次にご説明する『学生納付特例制度』を利用する必要があります。
(3)『学生納付特例制度』について
20歳以上の方で学生(大学、大学院、短大、高等学校、専修学校など、夜間・定時制課程・通信課程も含みます。)であって、本人の所得が一定以下の場合は、申請により、必要な条件を満たしていると判断されれば在学中の国民年金保険料の納付が猶予されます。
(国民年金の免除及び納付猶予について詳しくはこちらをご覧ください。)
(4)『臨時特例免除』について
さらに、2020年5月1日から、新型コロナウイルス感染症の影響によって、国民年金保険料の納付ができないという方のために、『臨時特例免除』申請ができるようになりました。
この臨時特例免除を申請できるのは、以下の場合です。
2020年2月以降に、新型コロナウイルスの影響で減収した場合
及び
令和2年2月以降の所得等の状況から、当年中の所得の見込みが、
国民年金保険料の免除等に該当する水準になることが見込まれる場合
上記条件に当てはまる場合には、本人申告の所得見込額の申請でできるなど、通常の場合に比べて簡易な手続で免除を申請することが可能です(※通常の免除制度は、過去の収入を基準に判断されるものです)。
(※2022年4月時点の情報です)。
参考:新型コロナウイルス感染症の影響による減収を事由とする国民年金保険料免除について|日本年金機構
分割納付はできる?

滞納した保険料は、一括納付が原則です。
ですが、免除や猶予を受けるための条件は満たしていないものの、滞納分についてどうしても一括で支払えないという場合には、年金事務所の窓口や役所の国民年金担当窓口などに分割納付ができないか、問い合わせることをお勧めします。
分割納付が認められるかどうかという明確な基準はありませんが、収入などから一括納付が難しいと認めてもらえれば、分割納付ができることもあります。
なお、分割弁済が認められるかどうかは、給与明細などを持参して相談する必要がありますので、電話で分割納付ができるかどうかの判断はしてもらえません。
まずは予め電話で必要書類などを確認してから、年金事務所などに相談に行きましょう。
年金相談の混雑状況は、日本年金機構のホームページでも確認できますので、参考にしてください。
国民年金保険料を支払わなかったらどうなるの?
最後に、国民年金保険料を支払わなかった時のデメリットをご説明します。
老齢基礎年金を受け取れなくなる
将来、老齢基礎年金を受け取ることができるためには、原則として
10年以上、国民年金保険料を納付したこと
が条件となっています。
ですから、基本的に国民年金保険料の納付期間が10年に満たない場合には、そもそも老齢基礎年金を受け取ることができなくなります。
また、10年以上納付したとしても、国民年金保険料が未納の期間があれば、受け取れる年金額は減ってしまいます。

(1-1)障害基礎年金も受け取れなくなる
将来、年金が受け取れるかどうか分からないし、年金は支払わなくても良い、そんな考えの方はいませんか。
国民年金は、必ずしも老後の備えのためだけではありません。
病気やけがによって、仕事が出来なくなったりした場合に、法令で決められた障害等級(1級・2級)による障害が認められると『障害基礎年金』が受給できます。
障害を負って働けなくなった時に受け取れる障害基礎年金は、生活の大きな支えになります。
(1-2)遺族基礎年金も受け取れなくなる
さらに、国民年金保険料を納付するなどして、受給要件を満たしていないと、死亡した時、死亡した人に生計を維持されていた配偶者や子供がいる場合に、その配偶者や子供が遺族基礎年金を受け取ることが出来なくなります。
参考:遺族年金|日本年金機構
国民年金保険料の支払は優先的に、他の債務は『債務整理』をお勧めします。
国民年金保険料の納付ができないという方の中には、他に借金があり、その返済に苦しんでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
借金を減額したり、支払に猶予を持たせたりすることにより、借金の返済に追われる生活から解放されるための手続を『債務整理』と言います。
『債務整理』には、主に『任意整理』、『民事再生』、『自己破産』があります。

これまでご説明したとおり、国民年金保険料の納付ができない場合、給料などを差し押さえられることがあります。
給料を差し押さえられると、もちろん勤務先に国民年金保険料を滞納していたことがバレてしまいますし、勤務先にも手間をかけることになってしまいます。
もしも、国民年金保険料以外の借金の返済が苦しい場合、良い『債務整理』の途がないか、まずは弁護士などに相談してみてください。
『債務整理』を弁護士などに依頼した場合、弁護士から各債権者に対して『受任通知』を送ります。
『受任通知』には、
- 債務整理の依頼を受けたこと
- 今後、取立て行為をしないこと
などが記載されますが、受任通知を受けた債権者は、一旦、借金の請求をストップします。
この間に、余裕があればそれまで借金の返済などに充てていた分を滞納している国民年金保険料の納付に充てるなどの対応が可能です。
いろんなところから借金をしていて、一見、もうどうにもならないと思われる状態であったとしても、中には、利息を払いすぎている場合(いわゆる過払い金)があって、計算し直すと借金が大幅に減る方がいらっしゃいます。
その結果、計算し直した後の借金を「任意整理」などで返済していくことが可能となるケースがあります。
「任意整理」とは、原則として今後発生する利息(将来利息)をカットしてもらい、残った元本だけをなるべく長期の分割で払っていくことを、借入先と交渉する手続きです。
「任意整理」は、基本的には弁護士に交渉を依頼するだけで、ご本人の負担もそれほどありません。
「民事再生」とは、裁判所の認可決定を得たうえで負債の額を5分の1程度(負債や保有資産等の金額によって減額の程度は違います)まで減額してもらい、減額された負債を原則として3年から5年ほどかけて返済していくという手続です(国民年金保険料など一部の負債は認可決定を得ても減額されません。
自己破産は、免責が認められると借金の支払義務が免除され、それ以上借金を支払わなくても良い(※非免責債権は除きます)という最大のメリットはありますが、基本的に一定以上の価値のある財産は処分されてしまうという手続です(※国民年金保険料は非免責債権ですので、自己破産で免責が認められても支払義務は残ります)。
借金があり、国民年金保険料の納付が難しいという方は、
- 他の借金につき払い過ぎの利息はないか、
- 他の借金について『債務整理』の途はないか
という点の見通しを立てるために、まずは弁護士などに相談することをお勧めします。
【まとめ】国民年金保険料を納付していない場合には、役所の年金事務所や国民年金担当窓口に相談すると、分割納付が認められる場合がある
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 国民年金とは、日本国内に住む20歳以上60歳未満の方が、毎月保険料を納付し65歳になった時に「老齢基礎年金」が支払われる制度である。
- 国民年金保険料の納付を怠り、督促状の指定期限を超えると延滞金が発生する
- 督促されても国民年金保険料を納付しないと、預金や給料などの財産が差し押さえられる可能性がある。
- 所得要件を満たす場合には、国民年金保険料の「免除」や「猶予」の制度の活用も視野に入れるべきである。
- さらに、新型コロナウイルス感染症の影響で減収した場合には、簡易な方法で免除が認められる可能性がある。
- 国民年金保険料の滞納があり、免除や猶予の条件を満たしていない場合であっても、担当窓口で相談した結果、分割納付が認められることもある。
- 国民年金保険料を支払っていない場合
・老齢基礎年金
・障害基礎年金
・遺族基礎年金
が受け取れなくなるおそれがある。 - 他に借金などがあって国民年金保険料の納付が難しいという方は、
・過払い金がないか
・良い債務整理の途はないのか
について、弁護士などに相談することをお勧めします。
アディーレ法律事務所では、債務整理手続きを取り扱っており、ご相談は何度でも無料です。アディーレ法律事務所は、ご依頼いただいた案件について、万が一 - 自己破産において免責不許可となった
- 民事再生において再生不認可となった
- 任意整理において所定のメリットがなかった
場合、当該手続にあたってアディーレ法律事務所にお支払いいただいた弁護士費用は原則として、全額返金しております(2022年4月時点。ただし返金の対象外となる例外ケースがあります)。
滞納している国民年金の分割納付についてお悩みの方は、公的機関へご相談ください。
また国民年金保険料の納付との兼ね合いで借金の返済にお悩みの方は、債務整理を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。