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破産による欠格事由とは?制限される資格・職業がある?

作成日:更新日:
リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「自己破産をしても、今までどおりの仕事はできるだろうか……」

自己破産をすることは、法律上の解雇事由にはあたりません。
ですから、会社にお勤めの方が、自己破産をしたことを理由に会社から解雇されることは基本的にありません。
ただし、自己破産の手続期間中、一定の職種に就くことが制限されている職業があります(「制限職種」と言います)。

制限職種に就いている方は、自己破産の手続期間中はそれまでどおりの仕事ができません。
もっとも、仕事が制限されるのはあくまでも「手続期間中」だけで、何年も制限されることはありません。

今回の記事では、次のことについて弁護士がご説明します。

  • 自己破産による欠格事由
  • 自己破産により制限される資格・職業
  • 制限される期間
  • 自己破産と取締役
この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

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自己破産による欠格事由とは

「欠格」とは、必要とされる資格を欠くことをいいます。

例えば、制限職種の1つである通関士について、通関業法6条で欠格事由が定められています。

財務大臣は、許可申請者が次の各号のいずれかに該当する場合には、通関業の許可をしてはならない。
破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者

引用:通関業法6条2号|e-Gov法令検索

つまり、自己破産を申立てて開始決定が下りると、通関士として働く資格を一時的に失うということです(通関業法32条2号、6条2号)。

制限職種を定める条文では、通関業法6条2号のように「復権を得ない者」とされています。逆に言えば、 自己破産の開始決定があっても、「復権」すれば再びその仕事ができます。

復権とは、破産手続きの開始決定に伴い公私の資格制限を消滅させ、破産者の本来の法的地位を回復させることをいい、いわば自分の好きな仕事に就ける“権”利を回“復”することです。
簡単に言えば、破産者でなくなることを「復権」と呼びます。

復権には「当然復権」と「申立てによる復権」の2種類ありますが、破産者の多くが特別な手続きを要しない「当然復権」によって、破産者の地位から解放されます。

当然に復権するのは、次の4つのいずれかに該当するケースです(破産法255条1項)。

  1. 免責許可の決定が確定したとき
  2. 破産手続きが同意廃止決定で確定したとき
  3. (破産手続き中に民事再生手続きが開始された場合)再生計画認可の決定が確定したとき
  4. 破産手続開始の決定後に詐欺破産罪の有罪確定判決を受けることなく10年を経過したとき

1.の免責許可決定の確定により、復権する方がほとんどです。

このように破産手続きによって一時的に職業の制限を受けるものの、多くの人がそのまま再び自分の好きな仕事に就けるようになるということです。
資格制限を受ける期間は、事案によって多少異なるものの、自己破産の申立てをしてから、4~8ヶ月ほどが一つの目安です。

破産手続きにかかる期間について詳しくはこちらの記事もご参照ください。

自己破産の手続きにかかる期間はどれくらい?流れに沿って解説

自己破産により制限される資格・職業

大きく分けて、自己破産により制限される資格・職業には次の2種類があります。

  • 法律上当然に資格の制限を受けるもの
  • 必ずしも資格の制限を受けるわけではないもの

(1)法律上当然に資格の制限を受けるもの

たとえば、次の職種では資格制限が定められています。

  • 宅地建物取引士(宅地建物取引業法18条1項2号)、公認会計士(公認会計士法4条4号)や税理士(税理士法4条2号)など士業
  • 警備員(警備業法14条1項)
  • 公証人(公証人法14条2号)
  • 交通事故相談員(交通安全活動推進センターに関する規則4条1項2号)
  • 固定資産評価員(地方税法407条1号)

他人の秘密など機密情報を扱う仕事に制限職種が多い傾向にあります。

取った資格を一時的に使えないだけなので、復権後に改めて資格を取りなおす必要はありません。

医師は資格制限を受けますか?

医師や看護師、歯科医師などの医療従事者は、資格制限を受けません。

公務員は、どうですか。

公務員も資格制限を受けません。
自己破産を申立てて破産手続開始決定を受けても、そのまま問題なく仕事を続けることが出来ます。

(2)必ずしも資格の制限を受けるわけではないもの

破産しても、必ずしも使えなくなるわけではない資格もあります。

たとえば、生命保険外交員がこれに当たります。
法人である特定保険募集人と異なり(保険業法280条1項4号参照)、個人的に生命保険の外交員をしている人が破産するからといって、内閣総理大臣に届け出なければならないわけではありません。もっとも、内閣総理大臣は、事案に応じて登録を取り消すか、そのまま仕事を続けさせるか、停止させるか等の判断することができます(同法307条1項1号)。

自分の仕事が制限職種にあたるかを知りたい場合には、「〇〇(自分の仕事) 制限職種」と検索するのがいいでしょう。ただし、見つかった情報が正しいとは限らないので、検索して見つかった情報を頼りに一度根拠条文を確認してみてください。

たとえば、「弁護士 制限職種」と検索すると、いくつかのサイトで「制限職にあたる(弁護士法7条4号)」などと書かれていますので、e-Govの「弁護士法」で7条4号をみます。そうすると、制限職種にあたることがわかります。

自己破産の法律相談を受けたとき、弁護士はその方の仕事が制限職種かをチェックします。
そのため、借金でお困りならばひとまず弁護士に相談して、制限職種にあたるかのチェックを含めて、弁護士に債務整理の方針を任せるのも1つの方法です。

過去に自己破産をしていても、制限職種に就くことはできるのでしょうか。

「復権」していれば、過去に自己破産をしていても問題ありません。
自己破産をしても、復権後は、自己破産をしたことによって法律上就けない職業はありません。

制限職種に就いている方は個人再生を検討!

特に個人で仕事をしている方であれば、数ヶ月とはいえ、仕事が出来ないとその期間に顧客を失ってしまうなど、影響が大きい方も多いです。
そのような方は、 自己破産ではなく個人再生を検討されることをお勧めします。

個人再生には、制限職種の制度がありません。
「個人再生」とは、返済困難な方が、裁判所の認可決定を得た上で、基本的に減額された一定の負債を原則3年で分割返済していく手続きです。

負債の額や保有している資産の額などによって異なりますが、任意整理よりも大幅に負債が減額されることが多いです(公租公課など減額されない負債が一部あります)。

制限職種で、一時的な配置転換、休業等も期待できない場合などには、個人再生を検討するのがいいでしょう。

制限職種に就いていたため、自己破産をせずに民事再生をされた方の事例をご紹介しますので、ご参照ください。

自己破産と取締役の欠格事由

自己破産をしたからといって雇用契約が当然に終了するわけではありません。
ですから、雇用契約によって会社などにお勤めの方は、基本的に自己破産によって仕事がなくなることはありません。

他方、自己破産によって契約が終了することが法律上定められているものがあります。
その1つが委任契約です。

民法
第653条(委任の終了事由)

委任は、次に掲げる事由によって終了する。

2 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。

引用:民法653条2号|e-Gov法令検索

取締役が自己破産するとどうなる?

取締役や監査役などの役員は、会社と委任契約を結んでいます。
ですから、取締役が自己破産を申立てて、破産手続開始決定を受けると委任契約は終了してしまいますので、いったん、取締役を退任しなければいけません。

ただし、自己破産の開始決定を受けたことは取締役の欠格事由とされていません。
ですから、破産手続開始決定を受けた後、復権していなくても、再び株主総会などで選任されれば取締役になることができます。

自己破産をすると取締役になれないと聞いたことがありますが、違うのですね。

確かに、かつては破産者であること(破産手続開始決定を受けて復権していない人)は取締役の欠格事由とされていましたが、現在は法律が変わりました。
任期中に破産手続開始決定を受けると委任契約の終了によりいったんは退任しなくてはいけませんが、再任されれば復権前であっても取締役になることはできます。

【まとめ】破産手続期間中、一定の職業に就けないが復権すれば問題なく仕事ができる

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • 制限職種についている場合、破産手続開始決定から復権までの間、当該資格が必要な仕事に就くことができない。
  • 破産手続開始決定から復権までの期間は概ね4~8ヶ月。
  • 制限職種とは、例えば弁護士・公認会計士・税理士などの士業や警備員・公証人など。
  • 復権をすれば、問題なく仕事に就くことができ、改めて資格を取りなおす必要はない。
  • 民事再生手続きは制限職種の制限がないため、一定期間仕事ができない影響が大きいという方は、民事再生を検討するのが良い。
  • 取締役については、破産者であることは欠格事由には当たらないが、破産手続開始決定を受けることは委任の終了事由にあたるため、任期中に破産をすると退任しなければならない。ただし、その後再任されれば、復権する前であっても取締役に復帰することはできる。

制限職種は多岐にわたりますので、自分の仕事が制限職種なのか判断に迷うこともあるでしょう。
制限職種だと思っても、インターネット上の情報が誤っていて、実際には制限職種でないかもしれません。
弁護士に相談すると、最適な方針を的確にアドバイスしてもらえますので、借金問題の解決に近づけるはずです。

アディーレ法律事務所では、自己破産、個人再生などの債務整理を取り扱っています。
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