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ひとり親でお金がない!借金する前に検討すべき3つのこと

作成日:更新日:
LA_Ishii

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「離婚をしてひとり親になってお金がない…。このままでは借金するしかない?」

ひとり親になってお金がないというとき、キャッシングなどによりお金を借りる前に、まず次のことができないか、今一度、確認してみてください。

  1. 他方の親に養育費を支払わせる
  2. 受けられる公的な支援は全て利用する
  3. 公的な貸付制度を利用する

消費者金融やクレジットカード会社などからお金を借りると、(公的な貸付と比較して)高い利息を取られます。ひとり親の方でお金がない時に民間の会社などからお金を借りるのは、基本的には最後の手段です。まずはそれ以前に利用できる公的制度などがないか調べることをお勧めします。

この記事を読んでわかること
  • ひとり親の方の経済的な現況
  • 他方の親に対する養育費の請求
  • ひとり親の方が利用できる公的な支援
  • ひとり親の方に対する母子父子寡婦福祉資金貸付金
この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

データで見るひとり親の経済状況

厚生労働省の「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によれば、現在、わが国のひとり親家庭は、父子世帯が約14万9000世帯、母子世帯は約119万5000世帯と推定されています。
調査によれば、令和2年の母子家庭における、母親自身の平均年間就労収入は236万円(※手当や養育費などを含めた平均年間収入は272万円)でした(*推計値)。
他方、父子家庭における、父親自身の平均年間就労収入は496万円(※平均年間収入は518万円)です。

一言でひとり親と言っても、平均して父子家庭の父親よりも母子家庭の母親の方が、年収が半分以上も低いことが分かります。

国税庁の民間給与実態統計調査によれば、令和2年分の給与所得者の平均給与は約433万円です。
ひとり親の場合、一般的に、父子家庭よりも母子家庭の方が経済的に苦しい方が多いことが推測されます。
母子家庭の方は、次のような事情から、一般的にひとり親でない家庭よりも収入が低いことが多いのです。

  • 親が一人で生計を担っているケースが多い
  • 就労可能な時間に限界があり、仕事の選択肢が狭い

参照:「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果の概要」|厚生労働省

参照:令和2年分 民間給与実態統計調査|国税庁

【ひとり親が検討すべきこと①】他方の親に養育費を支払わせる

『養育費』とは、子どもを監護する親(監護親)から、子どもを監護しない親(非監護親)に対して請求する養育に必要な費用です。
離婚をしてひとり親になった場合はもちろん、いわゆる「未婚の母」など、結婚をしていなくても他方の親に対して請求ができます。
養育費には、衣食住の費用、教育費、医療費などが含まれます。
養育費の支払義務は法的義務ですので、「経済的に余裕があれば支払う」という性質のものではありません。
ですが、特に母子家庭のひとり親の方で、他方の親から養育費が支払われていない方は少なくありません。
先ほどご紹介した「令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によれば、離婚をして母子家庭になった方のうち、離婚した父親から「現在も養育費が支払われている」という方は、約28.1%にすぎませんでした(*推計値)。

もっとも、母子家庭で、そもそも養育費について取り決めをしている方の割合は46.7%に過ぎません(※推計値)。

離婚をして母子家庭になった方で養育費の取り決めをした方の割合は51.2%、未婚の母子家庭の方で養育費の取り決めをした方の割合は13.6%しかいないのです(※推計値)

養育費を支払わせるためには、まずは養育費について取り決めることが大切です。
養育費は、離婚後であっても、子どもが未成熟の間は子どもを監護していない、他方の親に請求ができます。
養育費の取り決めをしていない方、養育費の取り決めをしたけれど支払われていない方は、まずは、養育費を支払わせることが大切です。

離婚後に養育費を請求する場合について詳しくはこちらの記事をご確認ください。

養育費はいくらもらえる?養育費の計算方法について

養育費は、子どもと同居していた場合に子どものために充てられる費用を計算し、その費用を、子どもを監護する親としていない親の収入割合で案分し、子どもを監護していない親が負担する分を算出します。
もっとも、1件ずつ詳細に計算をすると、養育費を巡る紛争が長期化・複雑化するなど、子どもの福祉にとって望ましくない結果を引き起こす可能性があります。
そこで、養育費の簡易迅速な算定を目指して、典型的な家族を前提として、一見して養育費の額がわかる算定表が作成され、実務ではこの算定表が積極的に利用されています。

子どもの両親の各収入(※給与の場合は、税引き前の額面収入)、子どもの年齢と人数が分かれば、算定表に当てはめるだけで妥当な養育費がわかります。
基本的には、この算定表を利用して養育費を判断し、算定表に当てはまらない事情がある場合は、上記の標準算定方式で個別に計算することになります。

例えば、0歳~14歳未満の子どもが1人という場合は、次の表のような感じです。

参照:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について)|裁判所

あくまでも目安ではありますが、次のホームページで養育費の目安を調べることができます。養育費をどのくらい支払ってもらえるのかお知りになりたい方は、お試しください。

養育費について取り決めずに離婚をしましたが、今更、元夫に連絡したくありません。

ご自身で対応が難しいという方は、弁護士に相談されることをお勧めします。

養育費の取り決めをしても、支払ってもらえない場合はどうなるのですか?

取り決め方にもよります。例えば、公正証書(※強制執行認諾約款のあるもの)や、調停で取り決めた場合には、約束に反して養育費が支払わない場合、相手の給料などを差し押さえる手続きをすぐにすることができます。他方、口約束や、単なる個人間の書面などで取り決めた場合には、相手の給料などを差し押さえるためには、基本的には調停を申し立てる必要があります。

調停で養育費の取り決めをしたのですが、離婚後、相手が転職してしまったようで、勤務先が分かりません。給料の差押えはできますか?

給料の差押えのためには、相手の勤務先を特定しなければいけません。養育費の不払いに関しては、「第三者からの情報取得手続」によって、相手の勤務先に関する情報を取得できる可能性があります。転職して現在の勤務先が分からない場合には、離婚問題を取り扱っている弁護士にご相談ください。

参照:第三者からの情報取得手続 | 裁判所

養育費の未払いへの対処法について詳しくはこちらの記事をご確認ください。

【ひとり親が検討すべきこと②】公的支援を全て受ける

ひとり親に対する公的支援は、決して少なくありません。
ひとり親の方で経済状況が苦しいという場合、まずは、使える公的支援を最大限に利用することをお勧めします。
ひとり親の方に対する代表的な公的扶助には、次のようなものがあります。

【国による援助】 金銭を受け取れるもの 児童扶養手当
母子父子寡婦福祉資金貸付
(※次の項目でご説明します)
所得控除を受けられるもの 寡婦控除・ひとり親控除
(*併用不可)
【自治体による援助】
※自治体によって名称や内容は異なります。
金銭を受け取れるもの 住宅手当
医療費助成
児童育成手当
(東京都の場合)
支出が抑えられるもの 上下水道料金の割引
粗大ごみ処理の手数料の減免
公共交通機関の料金の減免
公営駐車場・駐輪場の利用料の減免

その他、国と自治体が協力して、ひとり親の就業を支援するための、自立支援教育訓練給付金の制度などもあります。
これらの公的支援等は、基本的には申請をしないと受けることができません。
ひとり親の方でお金がなく経済的に苦しい状況にあるという方は、ますは、受けられる支援は全て受けることをお勧めします。

自治体によるひとり親の方の支援は、各自治体によって条件や内容が異なります。
ひとり親の家庭に対してどのような扶助・サービスがあるのか、お住まいの自治体に確認されることをお勧めします。

また、ひとり親以外の全ての方が対象ですが、収入によっては国民年金や国民健康保険の保険料の免除などが受けられる可能性もあります。受けられる支援・扶助等を漏らさないように最大限利用してください。

ひとり親の方に向けた公的支援について詳しくはこちらの記事をご確認ください。タイトルはシングルファーザー(父子家庭)ですが、母子家庭の方でも同様の支援が受けられます。

シングルファーザー(父子家庭)が受けられる支援や手当を徹底解説

【ひとり親が検討すべきこと③】お金を借りるのであれば、まずは公的な貸付制度で

養育費を支払わせることもできず、受けられる支援を受けてもお金がないから、借金をするしかない…。そう思う方は、まずは公的な貸付制度を利用できないかご検討ください。
公的な貸付制度であれば、消費者金融やクレジットカード会社から借金をするよりも、低い利率でお金を借りることができる可能性があります。

『母子父子寡婦福祉資金貸付金』は、20歳未満の子どもを扶養しているひとり親の方などを対象にお金を貸しつける制度です。
お金を借りられる目的は、次の12種類があります。

【母子父子寡婦福祉資金貸付金の種類など】

資金の種類対象となる方貸付けを受けられる資金
(1)事業開始資金母子家庭の母
父子家庭の父
など
事業を開始するのに必要な設備などの購入資金
(2)事業継続資金母子家庭の母
父子家庭の父
など
現在営んでいる事業を継続するために必要な商品などを購入する運転資金
(3)修学資金母子家庭の母が扶養する児童
父子家庭の父が扶養する児童
など
高等学校、高等専門学校、短期大学、大学などに就学させるための授業料、書籍代、交通費等に必要な資金
(4)技能習得資金母子家庭の母
父子家庭の父
など
自ら事業を開始し又は会社等に就職するために必要な知識技能を習得するために必要な資金
(5)修業資金母子家庭の母が扶養する児童
父子家庭の父が扶養する児童
など
事業を開始し又は就職するために必要な知識技能を習得するために必要な資金
(6)就職支度資金母子家庭の母又は児童
父子家庭の父又は児童
など
就職するために直接必要な被服等を購入する資金
(7)医療介護資金母子家庭の母又は児童
父子家庭の父又は児童 
(※介護の場合は児童を除く)
など
医療又は介護を受けるために必要な資金
(8)生活資金母子家庭の母
父子家庭の父
など
・知識技能を習得している間
・医療若しくは介護を受けている間
・母子家庭又は父子家庭になって間もない(7年未満)者の生活を安定・継続する間(生活安定期間)
・失業中の生活を安定・継続するため
必要な生活補給資金
(9)住宅資金母子家庭の母
父子家庭の父
など
住宅の建設、購入、増改築などに必要な資金
(10)転宅資金母子家庭の母
父子家庭の父
など
住宅を移転するため住宅の貸借に際し必要な資金
(11)就学支度資金母子家庭の母が扶養する児童
父子家庭の父が扶養する児童
など
就学、修業のために必要な被服等の購入に必要な資金
(12)結婚資金母子家庭の母
父子家庭の父
など
母子家庭の母又は父子家庭の父が扶養する児童等の婚姻に際し必要な資金
(※限度額や貸付期間、添付書類などは貸付けを受ける資金ごとに異なります。)

参照:母子父子寡婦福祉資金貸付金制度 | 内閣府男女共同参画局

これらは基本的に、条件を満たせば無利子~年率1%で貸付けを受けられます。
貸付けを受けられる条件や貸付けの範囲は限定的ですが、消費者金融やクレジットカード会社など民間の会社から借金をするよりも低金利で借りられますので、返済の負担は比較的少ないです。
もしも、お金が必要な事情が、上記のいずれかに該当する場合には、まずはお住いの役所の窓口に相談されることをお勧めします!

【まとめ】ひとり親の方でお金がない場合、公的支援や公的貸付制度が利用できないか、まずは検討しよう!

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • ひとり親でお金がないという時は、消費者金融やクレジットカード会社など民間の会社に借金をする前に、まずは次のことができないか、検討すべき。
    1. 他方の親に養育費を支払わせる
    2. 受けられる公的な支援は全て利用する
    3. お金を借りるとしても、公的な貸付制度を利用する
  • 母子父子寡婦福祉資金貸付金制度は、借金ではあるが、民間の会社に借金をするよりも低金利のため、返済の負担は少ない。
  • 母子父子寡婦福祉資金貸付金で貸付けを受けられる目的は12種類。もしもお金がなくて、該当する目的のために借金を検討している時は、まずはお住いの役所の窓口などで、貸付けの条件などを確認することがおすすめ。

ひとり親になって、お金がないという方は、民間の会社などに借金をする前に、お住いの役所の窓口などにご相談ください。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。