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自己破産決断前に知っておきたい!年金への影響を徹底解説

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※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「 自己破産をすると、年金ってどうなるのかな。自己破産をしても、年金はもらえるの?」

現に国民年金や厚生年金などの公的年金を受給している方が自己破産をしても、それによって、一切の年金がもらえなくなることはありません。
また、まだ年金を受給していない方であっても、自己破産によって、将来、本来もらえるはずの公的年金がもらえなくなることはありません。
基本的に、自己破産が公的年金に影響を及ぼすことはないのです。

他方、民間の保険会社で契約している『個人年金保険』などは、自己破産をする際には「資産」として扱われ、解約返戻金の金額によっては解約しなければいけない可能性もあります。

今回は、『自己破産と年金』についてアディーレの弁護士がご説明します。

この記事を読んでわかること
  • 自己破産をするときの年金の取り扱い
  • 自己破産をするときの年金に関する注意点
この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

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自己破産をすると年金はどうなる?

国民年金や厚生年金などの公的年金は、自己破産をしても受け取れなくなるわけではありません。
それぞれ受給要件を満たしている方であれば、自己破産をしても、問題なく受け取ることができます。
また、公的年金を受給中に自己破産をした場合であっても、引き続き、年金を受給することができます。

さらに、公的年金に加えて次のような「私的年金」についても、自己破産をしても影響は受けません。

  • 確定給付企業年金
  • 確定拠出年金
  • 厚生年金基金
  • 国民年金基金   など

いわゆるiDeCo(個人型確定拠出年金)も自己破産とは無関係です!

また、老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金などを受給している方も、自己破産をしても何も影響はありません。そのまま受給することができます。

年金担保貸付と自己破産

2023年9月現在、すでに廃止されていますが、かつて、年金を担保に貸付けを受ける「年金担保貸付け」制度がありました(2022年3月末で申込受付終了)。
年金担保貸付とは、年金を受給する権利を担保として、小口の貸付けを受ける制度です。年金を担保に貸付けを受けた分の返済ができなければ、返済分を年金から天引きされます。
年金担保貸付けは、自己破産によっても返済義務はなくならないことに注意が必要です。

自己破産をすれば、借金の返済義務はなくなるのではないのですか?

基本的には、自己破産で免責が認められれば、借金の返済義務はなくなります(税金等の非免責債権は除く)。ですが、年金担保貸付けは「別除権」(破産手続において、手続とは無関係に権利行使をして、他の債権者に優先して弁済等を受けることのできる権利)に準じた取扱い がなされるのです。
ですので、自己破産をしても、年金を担保に貸付けを受けた分は返済義務を免れることができず、引き続き返済しなければいけません。

別除権について詳しくは、こちらの記事をご確認ください。

別除権(べつじょけん)とは?意味や効果について具体例による解説

そのため、年金担保貸付けについては、自己破産をしても、当初の返済期間及び返済方法に従って返済を続けなければならず、もしも返済ができなければ担保としての年金から返済分が天引きされることになります。

自己破産と年金に関する注意点

その他、自己破産を検討している方は、年金に関して次の点を知っておいてください。

滞納している国民年金保険料は、自己破産をしても支払義務を免除されない

自己破産をして「免責」が認められると、基本的には借金などの支払義務はなくなります。
ですが、『非免責債権』については、免責を得ても支払義務はなくなりません。
非免責債権に当たるのは、次のようなものです。

  • 税金
  • 健康保険料
  • 罰金
  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権  など

そして、国民年金保険料も非免責債権に該当しますので、自己破産をしても支払義務は免除されません。
そのため、国民年金保険料を滞納している場合には、自己破産をしても、滞納分の支払はしなければいけません。

自己破産後に支払うべき国民年金保険料も、引き続き支払わなくてはいけません。

非免責債権について詳しくはこちらの記事をご確認ください。

非免責債権とは?自己破産しても支払い義務があるものについてくわしく解説

国民年金保険料を滞納しているという方は、こちらの記事もご確認ください。

国民年金を滞納したらどうなる?滞納した保険料の分割払いはできる?

個人年金保険は、解約返戻金の金額によっては解約が必要になる場合がある

個人年金保険は、一般的には途中で解約すると「解約返戻金(※)」が払い戻されるものが多いです。

(※)「解約返戻金」とは、保険契約を契約終了前に解約した場合、それまで支払った保険料や契約期間に応じて払い戻されるお金です。

個人年金保険に限らず、解約返戻金が払い戻される保険(積み立て型の生命保険など)に加入している場合、自己破産をする際、それらは「資産」として扱われます。
そのため、自己破産の際には個人年金保険などの保険は解約をされた上、解約返戻金は債権者への配当金に充てられてしまう可能性があります。

コツコツ積み立てた個人年金保険を解約しなければいけないなんて…。
解約返戻金は、これまで積み立てた保険料の総額よりも安いですよね。絶対に解約しないといけないんですか?

この点、破産者の財産で一定の価値のあるものは「破産財団」(※)に組み込まれて債権者への配当に充てられます。
(※)「破産財団」とは、破産者の財産などで、破産手続において破産管財人に管理・処分をする権利が専属するものです(破産法2条14号)。いずれ破産管財人によって換価などされた上で、債権者に公平に配当されます。

ですが、自己破産の際、破産者の全ての財産が破産財団に組み込まれて処分されるわけではなく、一定の財産については「自由財産」(※)として、破産者の手元に残しておけます。
(※)「自由財産」とは、破産手続によって処分されず、破産者の手元に残しておける財産のことです。

何が自由財産に当たるかは法律で規定されています(「本来的自由財産」)。
ただ、法律で規定された本来的自由財産以外の財産であっても、裁判所が「自由財産の拡張」(※)を認めた財産は、破産財団に組み込まれずに、自由財産として手元に残しておけるのです。
(※)「自由財産の拡張」とは、本来的自由財産には当たらず、本来であれば破産財団として処分される財産を、裁判所の許可を得て自由財産に加えてもらうことです(破産法34条4項)。

なお、先ほど、公的年金は自己破産によっても原則として影響を受けないとご説明しましたが、それは、公的年金が本来的自由財産に当たるからなのです。

そのため、解約返戻金が払い戻される個人年金保険についても、自由財産の拡張が認められれば解約せずに残しておくことができます。

それはありがたいです!どのような保険であれば自由財産と認められますか?

自由財産の拡張をいかなる範囲で認めるかは、実は、裁判所の運用によって異なります。
例えば、東京地裁の場合には、次のような保険であれば、自由財産の拡張を認めてくれます。

・解約返戻金が20万円以下の場合
(※複数の保険がある場合には、合算して20万円以下)

そのため、東京地裁で自己破産を申立てる場合には、解約返戻金が20万円を超える保険があると(※複数の保険がある場合には、合算して20万円)、20万円を超える部分は自由財産とは認められず、原則として解約された上で、20万円を超える分は破産財団に組み込まれて債権者の配当に充てられます。

どうも、解約返戻金が20万円を超えそうです…。
個人年金保険があることを秘密にしていたり、契約者を変更したらダメですか?

それは絶対にダメです。自己破産を申立てるにあたっては、財産について全て正直に申告しなければいけません。
個人年金保険の存在を隠したり、契約者を変更したりした場合、「財産隠し」とみられて、最悪の場合、免責が認められず、借金などの返済義務が残ってしまう可能性があります!

個人年金保険を解約したくない場合は?

どうしても個人年金保険を解約したくない、という場合には、裁判所によっては、次のような方策を取れる可能性があります。

(1) 個別に自由財産の拡張を認めてもらう

自由財産の拡張を認めるかどうかは、各裁判所によって一定の基準があります。
先ほどご紹介した東京地裁の場合は、解約返戻金が20万円以下かどうかです。

ただし、裁判所によっては、基準を超える財産は絶対に自由財産の拡張が認められないわけではなく、基準を外れていても、個別に自由財産の拡張を認めてもらえる余地はあります。個別に個人年金保険について「自由財産の拡張」が認められれば、保険は解約されずに済むのです。

自由財産の拡張を裁判所が認めるかどうかは、自己破産の手続を行う裁判所の運用によって変わってきます。

例えば、保険に関しては、破産者の自由財産に解約返戻金相当額がある場合には、それを破産財団に組み入れさせて、保険契約を解約しないということを認める裁判所も多いです。

他方、解約返戻金相当額を破産財団に組み入れることができない場合、次のような事情を考慮して判断されることになります。

  • 破産者の年齢
  • 収入の途があるかどうかや、就労がどの程度可能なのか
  • 破産者の経済的負担の程度(破産者が病気や障害を抱えていたり、親族に要介護者がいるなどの事情の有無)
  • 高額な医療費などの有無
  • 保険の再加入が認められるかどうか   など

自由財産の拡張に関する運用は、各裁判所によって異なります。どうしても残しておきたい保険などの財産がある場合には、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

(2) 親族に協力してもらい、解約返戻金相当額を破産管財人に支払ってもらう

解約返戻金が高額で、破産管財人に個人年金保険を解約された場合であっても、親族から解約返戻金相当額を破産管財人に支払ってもらえば、個人年金保険の解約を無効にできる可能性があります(保険法60条2項)。
これを、保険法に基づく「介入権」と言います。

もしも、自分には解約返戻金相当額のお金はないけれど、親族に頼めば用立てしてもらえるのであれば、介入権の行使をご検討ください。

公的年金であっても、口座に振り込まれた分は預金として扱われる

先ほどご説明したとおり、公的年金や確定拠出年金などの私的年金を受け取る権利は、自己破産による影響を受けません。
ただし、これらの年金が銀行などの口座に振り込まれると、それは「年金」ではなく「預金」として扱われます。

その場合、例えば、東京地裁の場合、残高が20万円以下の預貯金(口座が複数ある場合には合算して20万円以下)は、自由財産として手元に残しておけますが、20万円を超える部分は、破産財団を構成し、債権者への配当に充てられます。

そのため、年金が口座に振り込まれ、20万円を超えるというタイミングで自己破産を申立てる場合には、一部が換価されてしまうことに注意が必要です。

【まとめ】 自己破産をしても公的年金は影響を受けない/個人年金保険は解約返戻金の金額に注意!

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • 自己破産をしても公的年金を受け取る権利に影響はない。
  • 国民年金基金やDC、iDeCoなどの私的年金も自己破産によって影響を受けない。
  • ただし、年金担保貸付けを受けている場合、自己破産をしても返済義務は免れず、返済をしなければ年金から天引きされる。
  • 民間の保険会社と契約している個人年金保険については、解約返戻金の金額によっては、破産管財人に解約され、債権者への配当に充てられる可能性がある。

アディーレ法律事務所では、万が一免責不許可となってしまった場合、当該手続にあたってアディーレ法律事務所にお支払いいただいた弁護士費用は原則として、全額返金しております(2023年9月時点)。

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