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リーガライフラボ

給与や預金を差し押さえられた!差押えを解消する方法

作成日:
リーガライフラボ

「今月の給料が突然減ってしまった!どうやら差押えを受けたらしい……」
「預金がゼロになってしまった!通帳を見ると『サシオサエ』と書いてある……」

給与や預金への差押えを受けると、このような事態になります。
借金にしても税金にしても、滞納から差押えに至るまでは前触れがあることが多いのですが、対処しないでいると実際に差押えを受けることとなってしまいます。

この記事では

  • 差押えはいつ行われるのか
  • 債権者が差押えを行うために必要なもの
  • 差し押さえられた給与や預金はどうなるのか
  • 差押えを解消する方法

について解説します。

差押えの実行タイミングを事前に知ることはできない

差押えとは、広い意味では、特定の物や権利について、国家が私人による自由な処分を禁じる法的手続です。
民事上の義務については裁判所による強制執行の一環として、税金等の公租公課については滞納処分の一環として差押えがなされます。

差押えが実際に行われる日時を債務者が事前に知ることはできません。
これは、債務者が差押えを避けるために財産の隠匿や処分等、債権者を害する行為をするのを防止するためです。

もっとも、差押えに至るまでには、債権者から催促の書面等が届いたり、裁判所から訴状等の書類が届いたり、役所から督促状が届くなどの段階を経ることが通常なので、このまま対処せずにいれば差押えに至るということはある程度察知することが可能です。

民事上の支払義務については、「債務名義」がないと差押えはできない

民事上の権利について強制執行を行うためには、債権者は「債務名義」を取得したうえで裁判所に強制執行の申立てを行う必要があります。
債務名義とは、強制執行によって実現されるべき債権の存在及び範囲を公的に証明した文書です。

この項目では、代表的な債務名義の例と公租公課の滞納の場合について解説します。

(1)確定判決

確定判決とは、通常の不服申立ての方法(上訴等)によっては争うことができなくなった判決をいいます。

(2)和解調書、認諾調書、調停調書等

和解調書は裁判上の和解が成立した際に、認諾調書は訴えられた側である被告が訴えを認めた際に、調停調書は家庭裁判所における民事調停で当事者間に合意が成立した際に作成される調書で、いずれも確定判決と同一の効果を持ちます(民事訴訟法第267条、民事調停法第16条)。

(3)仮執行宣言付支払督促

金銭等の請求について訴訟よりも簡便に確定するための手続として「支払督促手続」があり、手続の第1段階としての支払督促に対して債務者が期間内に異議を申立てなければ支払督促に仮執行宣言が付され、第2段階の仮執行宣言付支払督促にも期間内に異議を申立てなければ確定判決と同一の効力を持ちます。
債務者が異議を述べてはじめて手続が通常の民事訴訟に移行することなどが特徴です。

支払督促の手続の流れは、次のようになります。

参照:支払督促手続|裁判所 – Courts in Japan

(4)強制執行認諾文言付公正証書

強制執行認諾文言付公正証書とは、金銭の支払等を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が債務不履行の際には直ちに強制執行に服する旨が記載されているものをいいます。
このような公正証書があれば、訴訟や調停、支払督促等の手続を経ずに強制執行の申立てを行うことができるため、こうした公正証書を作成した場合には、未払いが発生した後早期に差押えに至る危険性が高いと言えます。

(5)公租公課の滞納の場合、裁判所での手続なしで差押え可能

税金等の公租公課の滞納の場合、役所は裁判所での手続等を経ずに滞納処分を行うことができます。
一般的に、次のような流れで滞納処分に至ります。

納期限までに税金等を納付しないと、滞納となります。
滞納が生じた場合、遅れている日数分の延滞税が上乗せされます。延滞税の利率は、遅れた日数が増えると高くなるのが通常です。

滞納を解消できずに日数が経つと、早く支払うようにとの「督促状」が届きます。
法律上、督促状の発送から10日以内に督促された税金等が納付されないと、滞納処分をしなければならないこととされています(国税徴収法第47条1項1号)。
督促状を送った後も、納税者の自主的な納付を促すため催告の連絡が来ることもあるようですが、督促状が届いたら滞納処分間近と考えておくべきでしょう。

公租公課の滞納の場合、民事上の義務以上に早期の差押えに至るリスクが高いこととなります。

給与や預金への差押えが起こるとどうなる?

公租公課ではなく、民事上の義務について給与や預金を差し押さえられた場合、裁判所から債務者と第三債務者に「債権差押命令」が届きます。
第三債務者とは、債務者に対して給与や預金の支払義務を負う勤務先や銀行のことを言い、第三債務者に差押命令が届いた時点で差押えの効力が発生します。
そして、債権者は、債務者に差押命令が届いてから一定期間が経過した後、勤務先や銀行等の第三債務者に対して直接取立てを行います。
そして、一度給与や預金が差し押さえられ、債権者に取立てされてしまうと、そのお金が債務者の手元に戻ってくることはまずありません。

(1)給与に対する差押えは、将来にわたって継続する

差押えは、一度につきその時点であった財産のみになされますが、給与等の継続的給付に対する差押えの場合は、未払い額と執行費用の合計額を限度として、将来にわたって継続します。
もっとも、差し押さえられる金額の上限は、手取月収が44万円以下の場合には手取額の4分の1の額まで、手取月収が44万円を超える場合は33万円を超える額までと法律で定められています。

(2)預金等への差押えは、全額回収まで繰り返される可能性がある

給与等の継続的給付以外の債権に対する差押えでは、一回の差押えはその時点であったものに対象が限られます。
そのため、預金の差押えを受けた場合にはその時点の預金残高のみが差し押さえられ、その後で預金残高が増えたとしても、増えた分にまで当然に差押えの効力は及びません。

もっとも、全額の回収が終わるまで債権者が繰り返し強制執行を申立てる場合はあります。

差押えを解消する方法

差押えを解消する方法は、まず第一に、滞納している借金や税金等を全額支払ってしまうことです。そうすれば、通常は、債権者等が差押えを取り下げてくれます。
しかし、支払ができない場合などには、差押えを解消する方法として、借金等の民事上の支払義務と税金等の公租公課とで、それぞれ以下のような方法があります。

(1)借金等の民事上の支払義務について

借金の返済等を滞納したことにより、差押えを受けた場合には、債務整理を行うことによって差押えを解消できる可能性があります。
もっとも、債務整理の方法では、債権者の差押えと取立てによって回収されたお金が手元に戻ってくることはまずありません。差押えのおそれがあることを察知したら、差押えを受ける前に、弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

債務整理には、一般的に、任意整理、民事再生(個人再生)、自己破産の3つの方法があります。

  1. 任意整理
    任意整理は、取引開始時にさかのぼって利息制限法の上限金利(15~20%)に金利を引き下げて再計算すること(引き直し計算)により借金を減額した上で、原則として金利をカットし、元本のみを3年程度の分割で返済する内容の和解を貸金業者と結び、以後この和解内容に従って返済を続けることで、借金を整理する手続です。
    任意整理は各債権者との個別の和解ですので、任意整理を行うことで直ちに差押えが解消されることはありません。
    しかし、貸金業者等から給与を差し押さえられた場合、任意整理を行うことで、貸金業者が任意整理による自主的な返済に期待して、差押えを取り下げてくれた例もあります。
    預金の差押えの場合は、貸金業者が任意整理による自主的な返済に期待して、以後の差押えを控える可能性はあるでしょう。
  1. 民事再生(個人再生)
    個人再生は、住宅等の財産を維持したまま、大幅に減額された借金を(減額の程度は、借金の額、保有している財産によって異なります)、原則として3年間で分割して返済していくという手続です。
    貸金業者等に給与を差し押さえられた場合、個人再生の申立てを行い、裁判所に強制執行の中止命令の申立てを行うことで、差押えを中止してもらえる可能性があります。
    また、申立て後、裁判所が個人再生の手続を開始すると、法律上当然に差押えは中止されます。
    なお、上記のように差押えが中止されても、直ちに差し押さえられたお金が戻ってくるわけではありませんので、詳細は、弁護士等の専門家にご確認ください。
  1. 自己破産
    自己破産は、財産、収入が不足し、借金返済の見込みがないことなど(これを「支払不能」といいます)を裁判所に認めてもらい、原則として、法律上、借金の支払い義務が免除される(これを「免責」といいます)手続です。自己破産には、管財事件(原則)と同時廃止(例外)という2つの手続があります。

貸金業者等から給与を差し押さえられた場合、裁判所が管財事件として破産手続を開始すると、法律上当然に差押えは中断します。そして、通常は、破産管財人が手続を行うことで差押えは取り消されます。

同時廃止の場合、裁判所が破産手続を開始すると、給与の差押えは中止となります。そして、その後、給与の差し押さえられた部分は勤務先でプールされることになりますが、免責が確定すると、プールされた給料は戻ってきます。

なお、債務整理による差押えの解消を図るのは、そもそも借金等の存在に争いがない場合や、差押えの手続自体に異議がない場合です。差押えの手続等に不服がある場合には、不服申立ての制度として、以下のような制度が設けられています。もっとも、不服があると言っても、財産を差し押さえられたことに心情的に不服があるということではなく、法的な主張が必要です。

  1. 請求異議の訴え
    債務名義に記載された権利関係に争いがある場合などには(「不当執行」と呼ばれます)、裁判所に請求異議の訴えを提起し、強制執行の排除を求めることができます。
    例えば、貸金業者等から借金の支払についての判決を取られたけど、差押えを受ける前に、既に借金等を全額返済していたといった場合が典型例です。
  1. 執行抗告
    差押えの手続が違法だという場合には(「違法執行」と呼ばれます)、債権差押命令が届いてから1週間以内に、差押命令を発令した裁判所に執行抗告をすることができます。
    例えば、法律で定められた金額の上限を超えて給与を差し押さえられたなどの場合が考えられます。
    ただし、執行抗告は、裁判所の執行手続に関する裁判のうち、法律に執行抗告ができると規定された場合に限りすることができます。

また、債権差押えの場合、未払があること自体には争いがないものの、法律どおりの差押えを受けては生活が成り立たなくなるという場合には「差押禁止債権の範囲の変更の申立て」を行います(民事執行法第153条1項)。
裁判所が債務者の生活状況等を考慮のうえ、差し押さえてはならない債権の範囲を拡張する可能性があります。

参考:差押禁止債権の範囲変更申立てQ&A|裁判所 – Courts in Japan

(2)税金等の公租公課について

税金等の支払義務は、たとえ個人再生や自己破産を行っても減額されたり免除されたりすることはありません。
また、税金等の滞納により給与を差し押さえられた場合、個人再生や自己破産を行うことによって差押えが中止されたり中断等されたりすることもありません。

税金等による差押えを解消するための制度として、国税徴収法等には、滞納処分の停止の制度が設けられており、税務署長は、滞納者に滞納処分の執行等をすることによってその生活を著しく窮迫させるおそれがあるときなどには、滞納処分の執行を停止することができ、滞納処分の執行が停止された場合には、差し押さえられた財産について、差押えが解除されることとされています。

なお、税金等による差押えの場合にも、不服申立ての制度が設けられており、税務署長が行った差押えなどの滞納処分に不服があるときは、処分の通知を受けた日の翌日から3ヶ月以内に、国税不服審判所長に対して審査請求を行うことができます。
国税不服審判所長は、税務署長の処分が正しかったかどうかを調査・審理し、その結果を裁決書により納税者と税務署長に通知します。
国税不服審判所長の裁決を受けてもなお滞納処分に不服があるときは、その通知を受けた日の翌日から6ヶ月以内に裁判所に取消訴訟を提起することができます。

【まとめ】差押えを受けたときは早期の対処が必要

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 差押えがいつ行われるかは事前に通知されないが、裁判所から訴状等が届いたり、役所から督促状が届くなどによってある程度察知することができる。
  • 公租公課の滞納の場合、役所は裁判所での手続等なく、督促状の発送から10日以内の納付がなければ差押えが可能。一方、借金等の民事上の支払義務の場合、事前に確定判決や仮執行宣言付支払督促等の債務名義を取得する必要がある。
  • 財産を差し押さえられたときは早期に対処することが必要。借金等が理由で給料の差押えを受けてしまった場合は、債務整理を行うことで差押えを解消できる可能性がある。
  • 差押えに対して不服申立てを行う場合には、請求異議の訴え、執行抗告、審査請求、取消訴訟等の制度を利用することができる。

借金や税金等の滞納により、債権者等に財産を差し押さえられ、回収されてしまうと、その財産が手元に戻ってくることはないと考えたほうが良いでしょう。
弁護士に早期に相談することで、できるだけ多くの財産を手元に残すことを目指しましょう。
借金の返済でお困りの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。