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自己破産すると借りている家に住めなくなる?敷金は戻ってくるの?

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衣・食・住、それは私たちが生きるうえで欠かせないものです。
自己破産をするからといって、このいずれかが奪われ、路頭に迷うことがあってはいけません。今回弁護士が解説するのは「住」、賃貸物件に住んでいる人に向けてお伝えします。
持ち家に住んでいる人は、こちらの記事をご覧ください。

自己破産したら持ち家は失う?今の家を残す方法を弁護士が解説

自己破産そのものは、大家からの賃貸借契約解除の理由にならない

ここで、具体例を想定してみましょう。

借金の返済ができず、家計が火の車だというAさん。なんとか数日遅れで家賃を支払えていますが、度々家賃の支払いが遅れるため、大家さんから「出て行ってくれないか」と言われています。ついに弁護士に自己破産を依頼したAさんは、大家さんの求めに応じて家を明け渡さなければならないのでしょうか。

結論からいって、Aさんは家を出ていかずに済む可能性が高いでしょう。

(1)自己破産するだけでは賃貸借契約は解除されない

Aさんの事案において、大家さんは約束通りに賃料を受け取れないという不利益を受けています。しかし、この不利益はAさんの自己破産とは直接関係しません。

自己破産する人の中にも、家賃を毎月遅れずにきちんと支払っている人は大勢います。
自己破産するとはいえ、家賃がきちんと支払われているのであれば、大家側に不利益は生じません。そのため、自己破産そのものを理由として賃貸借契約を解除することはできません。

後述する破産法53条1項は、破産管財人が賃貸借契約を解除するか継続するかを選択する権限を持つことを定めていますが、賃貸人から自己破産を理由に賃貸借契約を解除することはできません。

仮に、「賃借人が自己破産の開始決定を受けたとき、本賃貸借契約は解約される」などと賃貸契約書に定められていても、この条項は上記のように破産管財人が賃貸借契約を解除するか維持するかを選択することとした破産法53条1項の趣旨に反するなどの理由により無効であり、賃貸借契約を解除することはできないと考えられます(東京地裁判決平成21年1月16日金融法務事情1892号55頁)。

(2)家賃滞納で賃貸借契約を解除されるのは信頼関係を破壊したとき

日本では、賃貸物件に住む賃借人の地位が厚く保護されています。たとえば、家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除できるのは、賃借人と賃貸人の信頼関係が破壊されたときに限られています(信頼関係破壊の法理)。何ヶ月分の家賃の滞納で信頼関係が破壊されるかは一概にいえませんが、数日の遅れで済んでいるAさんは信頼関係を破壊したとまではいえないでしょう。

一応の目安としては、3ヶ月分の家賃を滞納すると契約解除が認められやすいといえます。

(3)自己破産を依頼した後に家賃を滞納してしまったら弁護士に相談しよう!

消費者金融などに対する返済義務と同様に、自己破産に伴う免責許可決定によって滞納家賃の支払義務を免れた場合、大家さんからその家を出ていくように言われる可能性が高いでしょう。そのため、一般的には裁判所に破産を申立てるまでに家賃の滞納を解消します。大家さんという特定の債権者だけに払っていますが、偏頗(へんぱ)弁済として問題視されない傾向にあります。
もっとも、自己判断は危険なので、家賃を滞納した場合には、弁護士に相談して、今後の対応を検討しましょう。

(4)物置なら話は違う?破産管財人が賃貸借契約を解除するとき

破産管財人(破産者の財産を管理・処分できる人)は、賃貸借契約を継続するか解除するかを選択することができます(破産法53条1項)。一般的に、住宅の賃貸借契約の場合は、賃貸借契約の解除が選択されることはあまりありませんが、物置として利用している物件であって、借金を増額させる要因となっている場合には解除されることもあります。

自己破産すると、敷金を返してもらう「敷金返還請求権」はどうなるの?

Aさんの話に、このような後日談があったとしましょう。

結局、自己破産の開始決定後、大家さんの求めに応じて、より家賃の安い物件に引っ越すことにしたAさん。明渡時、1ヶ月分の家賃を滞納していました。
※1ヶ月分の家賃を6万5000円、敷金として13万円預けていたとします。

(1)敷金は未払い家賃に充当される

家を借りるとき、敷金を求められることが多いですよね。
敷金とは、

賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭

引用:民法622条の2第1項

のことです(民法622条の2第1項)。家を明け渡すとき、未払い賃料があれば、当然に充当されます。

Aさんの事案においても、敷金のうち6万5000円は未払い賃料の支払いに充てられます。

(2)敷金を回収するために家を明け渡す?

敷金返還請求権は、明渡し完了時に、発生すると考えられています。そのため、家を借りたまま自己破産を申立てた場合、破産手続開始決定の時点において、まだ敷金返還請求権は現実に発生していません。

つまり、Aさんは家を明け渡して、未払い賃料などを清算したうえでようやく残りの敷金を返してほしいと請求できます。もっとも、観念的にいえば、明渡し前でもAさんが大家さんに預けたお金が存在するため、この将来的にお金となるはずの請求権の扱いが問題です。

法律上、敷金返還請求権は、差押禁止債権に該当せず、自由財産(破産者が自由に取り扱える財産)にはなりません。原則的にいえば、破産管財人が回収すべき、破産財団に組み入れられるお金なのです。

明渡し完了時にしか発生しないお金を、破産管財人が回収する必要がある―――、とすると、自己破産するには家を明け渡して、敷金返還請求権を現実化しなければならない、ということになります。しかし、家を明け渡すと、破産者は引っ越し代や新たな賃借物件の敷金・礼金などを支払わなければならず、路頭に迷ってしまうかもしれません。

そこで、東京地裁では居住用不動産の敷金返還請求権は、その金額にかかわらず、自由財産として取り扱われるという運用がとられています。その結果、破産管財人が敷金を回収する必要はなく、破産者はその住居に住み続けることができます。

(3)敷金返還請求権と同時廃止の関係

自己破産には、破産管財人の選ばれる管財事件のほかに、同時廃止事件と呼ばれるものがあります。

破産法216条1項では、同時廃止に関して次のように規定されています。

裁判所は、破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは、破産手続開始の決定と同時に、破産手続廃止の決定をしなければならない。

引用:破産法216条1項

条文上「同時に」と規定されているように、自己破産手続きを裁判所に申立て、開始決定がなされると同時に手続きが終了する(廃止する)ため、「同時廃止」と呼ばれています。

同時廃止で進めることができるのは「破産手続の費用を支弁するのに不足すると認める」ときです。東京地裁の基準では、33万円以上の現金がある場合や、不動産や自動車などの項目別に20万円以上の財産がある場合には、同時廃止にはなりません。

東京地裁の運用では、居住用不動産の敷金返還請求権が20万円以上であることをもって、直ちに少額管財事件になるわけではありません。ほかの財産や借入の経緯等によっては、同時廃止となる可能性も十分にあります。
お住まいの地域の運用については、自己破産を依頼する弁護士に確認してください。

【まとめ】自己破産についてお困りの方はアディーレ法律事務所にご相談ください

自己破産するからといって、今住んでいる家を明け渡さなければならないとは限りません。家は私たちが生きるうえで欠かせないものであるため、家を失わないように一定の保護がなされているのです。もっとも、借金の返済に困って家賃を滞納してしまうと、自己破産に関係なく、家を明け渡さなければならない可能性が生じてきます。
借金で首が回らなくなる前に、借金問題を解決しましょう。
借金の返済でお困りの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。

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