「夫(妻)の不倫相手と示談することになった。示談書にはどんなことを書けばいいの?」
不倫問題の解決方法の1つに、「交渉での解決」がありますが、交渉で解決する場合には、示談書などの書面を作成することをおすすめします。
合意した慰謝料の額や、その支払時期・方法などを記載した書面を作成することで、あとになって「言った言わない」といったトラブルになることを回避するためです。
また、いったん示談書にサインや押印をしてしまうと、あとからその内容を否定するのは非常に困難です。
そのため、示談書に何を書くべきなのか、取り決めた内容を守らなかったときにはどうするか、などについて事前にしっかり調べておく必要があります。
そこで、今回の記事では次のことについて弁護士が解説します。
この記事を読んでわかること
- 示談書に記載すべき項目
- 示談書作成の手順
- トラブル回避のための注意点
※今回は、夫が妻以外の女性と不倫したというケースで、不倫をされた妻の立場からご説明します(妻を「本人」、夫を「配偶者」、夫と不倫をしていた女性を「不倫相手」と言ってご説明します)。

ここを押さえればOK!
示談書を作成する目的は、主にのちのトラブルを防ぐことにあります。口約束だけではトラブルになる可能性があるため、合意した内容を書面に残すことが重要です。 示談書は示談が成立した際に作成され、慰謝料の支払方法や支払時期・金額などを明確にすることで再びトラブルが起こる可能性を低くします。
また、示談書と誓約書(念書)は異なり、示談書は示談をした当事者双方が内容に拘束されるのに対し、誓約書は誓約した人だけが守るものです。
不倫の示談書には、不貞行為の事実、慰謝料の詳細、約束事項、違反時のペナルティ、求償権の放棄、守秘義務、清算条項などが記載されます。示談書の作成には注意が必要で、自ら進んで作成することや明確かつ端的な言葉で記載することが重要です。また、専門家に相談することもおすすめです。
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法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件部にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。
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不倫の示談書とは何か
示談書とはどのような文書なのかを、ご説明します。
(1)示談書とは示談の内容を記録した文書
不倫問題の解決法には、裁判などによらずに、当事者同士で話し合って解決する「示談」という方法があります。
そして、示談の内容を記載した文書のことを「示談書」といいます。
何のために「示談書」を作るのですか?
一番の目的は、のちのトラブルを防ぐためです。
不倫相手は、不倫を認めて慰謝料を支払うと言っています。
それでも示談書を作った方がいいですか?
口約束であっても、合意は法的に有効です。
しかし、口約束だけだと、あとから「そんな約束はしていない」と言われるなど、トラブルになってしまう可能性があるため、合意した内容はしっかり書面に残しておくことをおすすめします。
示談書は、示談が成立した(当事者同士が合意した)ときに作成されます。
示談書を作成せずに口約束だけの場合、慰謝料の支払方法や支払時期・金額などに食い違いが生じて、再びトラブルが起こってしまう可能性があります。
示談書は、そういったトラブルを未然に防ぐために作成するものです。
また、示談書を作成するのは、次のような目的もあります。
- 慰謝料の内容を詳しく書くことで、約束違反されるリスクを低くする
- 不倫の再発を防止する
- 離婚することになった際、裁判の証拠として役立てる
示談書の記載内容はあいまいにせず、これからご説明する7つの項目をしっかりと具体的かつ明確に記録しておきましょう。
(2)示談書と誓約書・念書の違い
示談書と混同されやすい言葉に「誓約書(念書)」があります。
両者は、書類に記載した内容を守らなければいけない人が異なります。
示談書は、示談をした当事者双方が内容に拘束されます。
つまり、(仮名)Aと(仮名)Bが示談をした場合、AとBの双方が示談書の内容を守なければなりません。
なお、示談書は、和解書、合意書、契約書などと呼ばれることもありますが、書面の呼び方によって法的効力は変わりません。
一方、誓約書(念書)は、誓約した人だけが守るものです。
たとえば、不倫をした配偶者が「不倫相手と今後一切連絡を取りません」という誓約書を作った場合、誓約書の内容を守らなくてはならないのは不倫をした配偶者だけということになります。
不倫の示談書に記載したい7項目
不倫の示談書の記載内容はケースによって異なりますが、ここでは不倫相手に慰謝料を請求するケースにおいて記載しておくべき主な項目を7つご紹介します。
(1)不貞行為(不倫)の事実(記載例あり)
まず、配偶者と不倫相手との間で不貞行為があったという事実について記載します。
具体的には、誰が誰と不貞行為をしたのか、不倫によって被害を受けたのは誰か、といった内容です。
不貞行為とは、基本的には肉体関係を伴う不倫のことを指します。
記載例
●は◆に対し、〇年〇月から〇年〇月〇日までの間、◆の配偶者である▲といわゆる不貞関係にあったことを認めるとともに、これについて深く謝罪をする。
(※●は不倫相手、▲は不倫をした配偶者、◆は本人(慰謝料を請求する人)です)
(2)慰謝料についての詳細
次に、慰謝料に関する取決めを、次の項目を掲げて詳しく記載します。
- 金額
- 支払期日
- 支払回数
- 支払方法(手渡し、銀行振込など。手渡しの場合「本日現金にて支払、受領した」などと記載。銀行振込の場合は振込先口座情報も記載する)
- 支払にかかる手数料は誰が負担するか
- 分割払いの支払を怠った場合の一括請求
慰謝料の金額の相場は?
慰謝料の明確な金額や基準が、法律で決まっているわけではありません。
ただし、裁判になった場合の相場は存在しているためご紹介すると、およそ次のとおりです。
【不倫(不貞行為)の慰謝料の相場(裁判になった場合)】
- 不倫が原因で離婚した場合:およそ100万円~300万円
- 離婚しない場合:およそ数十万円~100万円
公正証書を作成するメリットとは?
慰謝料を一括で支払えない場合には、分割で支払うケースもあります。
分割の場合には、支払が滞った場合に備えて示談書を公正証書にしておくことも検討すべきです。
なぜ、示談書を公正証書にしておくといいのですか?
「強制執行認諾条項」を記載した公正証書を作っておくと、のちに慰謝料の支払が滞った場合にも、裁判などをせずに不倫相手の給料や預金を差し押さえる手続ができるためです。
公正証書の作成には費用(手数料)が必要です。
また、公正証書の作成には細かい決まりがあり、手続も煩雑になるため、合意できた慰謝料の金額などを考慮して、作成するかどうかを検討してもよいでしょう。
(3)約束事項
不倫が発覚しても配偶者と離婚せず、夫婦関係の修復を目指す場合は、平穏な夫婦生活を送るために、不倫相手に約束してもらうことを記載します。
たとえば、次のような内容です。
- 配偶者との接触禁止(今後は一切連絡を取らないことなど)
- 名誉を傷つける行為の禁止(SNSなどでの書き込み、発信はこれにあたると考えられます)
接触禁止の約束をさせる際の注意点などについて詳しくは次の記事もご参照ください。
(4)示談内容に違反した際のペナルティ
示談の内容を守らなかった場合のペナルティも定めておいたほうがよいでしょう。
たとえば、「接触禁止のルールに違反した場合には、違約金として30万円を支払う」といった条項です。
(5)求償権の放棄
不倫は、配偶者と不倫相手が共同でおこなった不法行為、つまり「共同不法行為」なので、慰謝料を支払う義務は配偶者と不倫相手の両方にあります。

共同不法行為には、不法行為の一部に加担すれば、発生した結果全部について責任を負うべき、という原則があるため、上の例では、妻は、夫と不倫相手のどちらか一方に対して、慰謝料を全額請求できます。
ただし、慰謝料を不倫相手に請求して、不倫相手が慰謝料として十分な金額を支払った場合、不倫相手は夫に対して、本来夫が支払うはずだった分の支払いを請求する権利があります(これを求償権といいます)。
求償権を行使される可能性があるのはあくまで不倫した配偶者です。
離婚する場合や、「求償権を放棄してもらうために慰謝料の減額交渉をされるくらいなら、求償権の放棄は特に希望しない」という方もいます。
そのため、必ずしも求償権の放棄について示談書に記載すべきわけではありません。
あなたが、自分の配偶者が不倫相手から求償権を行使されたくないのであれば、求償権の放棄について約束できるとよい、ということです。
(6)守秘義務
不倫について第三者に口外したり、インターネットに書き込んだりしないことを約束する項目を記載します。
たとえば、配偶者が不倫したという事実が職場や知人などに知られると、それによって配偶者の社会的評価が損なわれることになりかねないうえ、うわさが広まってつらい思いをすることは避けたいはずです。
そこで、不倫の問題で示談するときは、「不倫の事実を第三者に口外しない」という守秘義務を定めるとよいでしょう。
(7)清算条項
この示談によって、今回の不倫問題が解決したことを確認するための条項です。
示談書に記載したもの以外、お互いに一切の債権や債務がないということを記載します。
不倫の示談書を交わす手順
不倫の示談書は、次のような手順で交わすのが一般的です。
(1)示談交渉を進める
どのような条件で不倫問題を解決するか、不倫相手や不倫をした配偶者と示談交渉を進めます。
示談交渉の始め方としては、まずは不倫の慰謝料を請求し、相手の出方を見ることになるでしょう。
途中で交渉が決裂したり、相手が慰謝料の請求を無視したりする場合は、裁判などの法的措置を検討することになります。
(2)示談書を人数分用意する
示談交渉が成立したら、人数分の示談書を用意します(本人と不倫相手の2人で示談する場合は2部、本人と不倫相手と配偶者の3人で示談書を交わすなら3部)。
割印をしておくことも忘れないようにしましょう。
割印とは、2つ以上の文書にハンコをまたがるように押すことによって、文書の関連性を示すなつ印方法のことをいいます。ハンコが2つに割れるので「割印」と呼ばれます。
割印とは

(3)示談の当事者が署名・押印する
示談の当事者全員が示談書に署名・押印します。
不倫相手や配偶者と一堂に会して示談書を交わすこともできますし、顔を合わせたくない場合には、示談書を郵送して、署名・押印をしたのち返送してもらう方法もあります。
郵送した場合には、返送されてきた文書の内容が無断で変更されていいないか、念のため確認しましょう。
(4)示談書を大切に保管する
当事者全員が署名・押印したら、示談書を保管します。
今回取り決めた約束を破られた場合に活用できるように、示談書は大切に、かつすぐに取り出せる場所に保管しておきましょう。
(5)慰謝料の入金を確認する
示談書を取り交わしても、約束通りに支払をしない人も少なくないため、しっかりと期日までに入金されるかを確認することが重要です。
入金されない場合は、支払催促の申立てや裁判などで示談金を回収することも検討しましょう。
強制執行認諾条項のある公正証書で示談書を作っておけば、期日までに支払がなければ支払督促の申立てや裁判などをすることなく、相手の財産を差し押さえる手続ができるようになります。
なお、入金が遅れた場合は、遅延損害金を請求することも可能です。
不倫相手の財産を差し押さえたいという場合にはこちらの記事もご覧ください。
不倫示談書を作成する際の4つの注意点
(1)示談書の作成を任せっきりにしない
当事者のうち、どちら側が示談書を作ってもかまいませんが、一般的に、示談書の作成を主導した方が、有利な立場で交渉を進めやすくなります。
示談書の作成には手間がかかりますが、自ら進んで示談書を作成することで受けられるメリットも多くあります。
示談書の作成を相手任せにせず、自分側がたたき台をつくることがポイントです。
(2)明確かつ端的な言葉で記載する
トラブル再発の防止という目的を考えると、示談書の内容は、誰が読んでも一通りにしか解釈できないよう、明確な言葉を使うことが大切です。
別の意味にも解釈できるようなあいまいな表現にしてしまうと、あとから示談書の内容を否定されて、新たなトラブルが発生してしまうことになりかねません。
内容を過不足なく盛り込み、かつ、明確な表現を心がけましょう。
(3)テンプレートをそのまま使わない
インターネットには、示談書のテンプレートが掲載されています。
しかし、不倫の状況や示談の条件はそれぞれのケースで異なるため、テンプレートをそのまま流用することは基本的にはおすすめできません。
示談書の内容は、個々の状況を加味して作成する必要があります。
(4)弁護士などの専門家に相談する
示談書を法的効力のあるものにして、トラブルを回避したいなら、法律の専門家である弁護士などに相談するほうがよいでしょう。
まずは自力で示談書を作成して、添削を依頼するのも1つの手段です。
特に公正証書で示談書を作成するには、必要な記載項目が増え、手続も煩雑になるので、弁護士・司法書士・行政書士に相談することをおすすめします。
ただし、行政書士は公正証書の形式の確認などはできますが、内容について相手と交渉することはできません。
行政書士に公正証書の作成を依頼しても、内容について交渉が必要になる場合には改めて弁護士に依頼する必要があるため、注意が必要です。
【まとめ】不倫の示談書は、あいまいな表現をさけて具体的な言葉で、約束に違反した場合のペナルティなどを記載しておくことが重要
今回の記事の内容は、次のとおりです。
- 示談書に記載すべき項目は次の7つ
- 不貞行為(不倫)の事実
- 慰謝料についての詳細(金額・支払時期・支払方法など)
- 約束事項(接触禁止など)
- 示談内容に違反した場合のペナルティ(違約金)
- 求償権の放棄
- 守秘義務
- 清算条項
- 示談書を作成する際の注意点は次の4つ
- 示談書の作成を任せっきりにしない
- 明確かつ端的な言葉で記載する
- テンプレートをそのまま使わない
- 弁護士などの専門家に相談する
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(以上につき、2024年3月時点)
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