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昭和が終わる前くらいから借りては返しての生活を続けてきました。主人にも先立たれ、一人娘は15年近く前に家を飛び出して以来音沙汰なし。正直、借金を残して死んでも誰にも迷惑を掛けないだろうと高をくくってきたんです。それが……、1週間ほど前に、娘が子どもを亡くして死んだことがわかりまして……。孫は私の借金とは関係ありませんよね?
相続人である子が既に亡くなっていると、その子が相続人になります。そのため、相談者の借金は、孫が相続放棄をしない限り、孫に相続されてしまいます。
今回は、祖父母から孫へ相続する「代襲相続」について解説しましょう。
代襲相続とは
代襲相続とは、本来の相続人の代わりにその子が相続する制度です。
具体的には、次の2つのケースで起こります。
- 子の代わりに祖父母から孫へ
- 兄弟の代わりに叔父・叔母から甥・姪へ
今回のケースだと、子が死亡しているので、祖母である相談者から孫に相続されます。
ここでご注意いただきたいのが相続放棄で代襲相続は起こらないことです。
そのため、今回のケースで仮に娘が生きていて相続放棄したとすれば、娘を飛び越えて孫に相続が起こることはありませんでした。
代襲相続は下の世代に対してのみ起こります。もっとも、代襲相続と呼ばないだけで、孫が亡くなったときに子が亡くなっていれば、その財産は祖父母が相続します。
代襲相続はどこまで続く?
子も孫も死亡している場合、祖父母からひ孫に対して(再代襲)相続が起こります。
法律上の制限はなく、何世代でも受け継がれていくことになります。
もっとも、私たち人間の人生はどんなに長くても120年くらいですから、現実には何世代も飛び越えて相続することはないでしょう。
これに対して、甥・姪が亡くなっているからといって、叔父・叔母から姪孫(甥・姪の子)に対して再代襲相続は起こりません。1980年以前、この場合でも再代襲があったのですが、叔父・叔母と姪孫では関係が希薄で、相続を認める必要がないと考えられたためです。
15年も音沙汰がなかったのであれば、相談者が亡くなった後に貸金業者が孫の所在を把握するのは難しく、実際に孫が借金の返済を求められる可能性は高くないかもしれません。もっとも、何が起こるかわからないのが人生で、その可能性はゼロとは言い切れません。絶対に孫に迷惑を掛けたくないのであれば、生きているうちに借金を整理しておくのが良いでしょう。
また、今回のケースだと借入期間が長いため、過払い金が発生しているかもしれません。もし過払い金が発生していれば、借金ではなく現金を残してあげられる可能性があります。
今回の記事のポイントは、親から子にだけ相続が起こるのではなく、財産は幅広く受け継がれていくものだということです。関係の希薄な人と遺産について話し合うことはなかなか大変なので、代襲相続が起こるような事案では弁護士に依頼することをおすすめします。