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奨学金を「個人再生」で債務整理するとどうなる?

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奨学金を借りたものの、学校卒業後も思ったように収入を得ることができず、返済に苦しむ方が昨今増えています。
そして、返済に苦しんだ結果、奨学金とその他の借金も含めて債務整理が必要となる場合があります。
奨学金の返済が困難になった場合の対応策について、個人再生を中心に、弁護士がご説明します。

個人再生の前に検討したい、奨学金の返済方法

返還義務がある奨学金では、督促を無視して延滞を続けると、法的処置(裁判所に訴える、裁判所で請求が認められると財産の差し押さえ等が行われる等)がとられてしまうことがあります。
また、延滞によって信用情報機関に延滞したという事故情報が登録され、いわゆるブラックリスト入りすることがあります。
例えば、日本学生支援機構では、

  • 新規の返還者については返還開始後6ヶ月を経過した時点で延滞3ヶ月以上になった時点
  • 新規返還開始後6ヶ月経過以降は、延滞3ヶ月になった時点
  • 上記以外の方は、延滞3ヶ月になった時点

で延滞したという情報が信用情報に登録されます。

なお、最長でも、当該奨学金の負債全てを完済してから5年経過すると、当該延滞したという信用情報は削除されます。

では、奨学金の返還が困難になったときはどうしたらいいでしょうか。
奨学金の返還が困難な場合には、個人再生や破産をする前に、検討することができる対処法には次のものがあります。

  • 奨学金の救済制度を利用
  • 任意整理を利用

これらの対処法について次に詳しくご説明します。

参考:個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録|独立行政法人 日本学生支援機構

(1)奨学金の救済制度を利用する

奨学金以外の借金につき、問題なく完済の目途が立つような状況の場合は、

  • 返還期限の先送り
  • 返還期限の延長

という、救済制度が奨学金の借入先に設けられていないかを確認すると良いです。
例えば日本学生支援機構では、災害、傷病、経済困難、失業などの理由で奨学金の返還が困難な場合に申し出ることによって、一定の条件のもと、

  • 返還期限猶予(一定期間、返還を先送りする)や
  • 減額返還(返還期間を延ばして1回あたりの返還額を減らす)

が認められる制度があります。

執筆時点(2021年2月8日時点)の日本学生支援機構の運用では、延滞した場合のみ事故情報として信用情報に登録される運用のため、返済猶予や減額返済の利用をしたことをもって、信用情報機関に載ることはありません。
そのため、日本学生支援機構の返済猶予や減額返済の制度を利用しても、今後のクレジットカードの利用・発行や各種ローンの借り入れ等に影響が生じることがありません。

日本学生支援機構の返済猶予や減額返還について、もう少し詳しくご紹介します。

参考:返還が難しいとき|独立行政法人 日本学生支援機構
参考:個人信用情報機関への個人情報の登録について|独立行政法人 日本学生支援機構

(1-1)日本学生支援機構の返還期限猶予とは

災害、傷病、経済困難、失業などの理由で、日本学生支援機構の奨学金の返還が困難な事情が生じた場合に、一定の条件を満たせば利用可能な制度です。
返還期限猶予の制度を利用すると、原則として、一定期間「返還を先送りにする」ことができます(1年毎に申請が必要です)。
条件により返還を先送りできる期間は異なりますが、原則として、最長で10年間、先送り可能です。

なお、返還期限猶予をしてもらったとしても、利息を含めた返還予定総額に変更(減額または増額)されるものではありません。

(1-2)日本学生支援機構の減額返還とは

災害、傷病、経済困難、失業などの理由で、日本学生支援機構の奨学金の返還が困難な事情が生じた場合に、一定の条件を満たせば利用可能な制度です。
最長15年にわたって、月々の返済額を2分の1または3分の1に減額して支払うことができるという制度です(1年ごとに申請の必要あり)。
なお、返還期限が延長されるだけで、利息を含めた返還予定総額に変更(減額または増額)されるものではありません。
また、すでに、日本学生支援機構の奨学金の返還を延滞している場合は申請できません。

(1-3)その他の制度

日本学生支援機構の場合、以下の場合には奨学金が全部または一部免除されることがあるため、申請を検討してみましょう。

  • 本人が死亡し返還ができなくなったとき
  • 本人が精神若しくは身体の障害により労働能力を喪失、または労働能力に高度の制限を有し、返還ができなくなったとき
  • 2004年3月31日以前に大学院の第一種奨学生に採用となり、奨学金の貸与を受けた方が、一定の要件を満たした上で、教育又は研究の職に就いたとき

奨学金の借受先以外にも、県や市町村などの地方公共団体によっては、移住・定住促進事業として奨学金の返済支援制度を設けているところがありますので、調べてみましょう。

(2)奨学金以外の借金について、任意整理する

奨学金以外にも複数の借金を抱えていて返済が苦しい場合には、破産や個人再生の前に、任意整理が可能か検討してみましょう。
先ほどご説明した奨学金の救済制度などと任意整理を併用することは可能です。

任意整理とは、

  • 一定の負債につき、利息制限法の上限金利(15~20%)に金利を引き下げて再計算(引き直し計算)した上で、
  • 残った債務につき、貸金業者と利息カット・長期分割を目指して交渉し、
  • 和解が成立すればこれに従って返済をしていく

手続きです。

負債によっては、払いすぎた利息が多く、負債がなくなるどころか、負債を差し引いてもなおも払いすぎになっている利息を(元)借入先から返還請求できることもあります。
なお、日本学生支援機構などの奨学金の金利は低く、利息制限法の上限金利(15~20%)を超えていませんので、引き直し計算をすることにより過払い金が発生することはありません。

任意整理の場合、後述の法的整理とは異なり、借り主にどの借入先について任意整理をするのかある程度選択することができます。
※ただし、ある借入先を任意整理の対象から外してしまうと、借金全体について返済の目途が立たない場合などは、選択が自由にできないこともあります。
また、任意整理をしても完済の見込みが立たない場合などは、任意整理を行えない場合があります。
詳しくは、専門家にご相談ください。

任意整理を行う場合は、次の理由により、奨学金以外の借金を任意整理して借金の総額や月々の返済額を減らすことが多いです。

  • 理由1)そもそも、奨学金の借入先は任意整理に応じてくれるところが少ない
  • 理由2)例えば日本学生支援機構の奨学金は無利息もしくは年3%を上限とする低い利息となっています。
    他の奨学金も総じて金利が低いことが通常であり、万が一奨学金の借入先が任意整理に応じてくれて利息カットできたとしても任意整理する効果が低い

奨学金を個人再生で債務整理するメリット・デメリット

次に、奨学金を個人再生で債務整理するという方法があります。
個人再生とは、裁判所に申立てをし、民事再生法にしたがって一定額の負債を原則3年間(特別事情がある場合は最大5年間)で、借金を返済していく手続きです。
個別のケースによりけりであるものの、負債総額を大きく減額できる可能性のある手続きです。
ただし、任意整理とは異なり、裁判所を通す手続きですので、返済計画(再生計画)の自由度は低くなります。

個人再生を申立てるには、

  • 住宅ローン等を除いた借金等の総額が5000万円以下
    例)事業のために金融機関から借りた負債残高 300万円
    住宅ローンの残高 5000万円
    ⇒住宅ローン等を除いた借金等の総額が5000万円以下の要件を満たす
  • 将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みのあることが必要です

※個人再生のうち、給与所得者等再生手続きを申立てる場合には、「給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、その額の変動幅が小さいと見込まれる」という要件も満たす必要があります。

借金がどのくらい減額されるのかは、負債総額や資産総額などによって異なります(給与所得者等再生手続きを利用する場合は、収入や家族構成などによっても異なります)が、任意整理をするよりも、返済総額が減額される可能性があります。

(1)奨学金を個人再生で債務整理するメリット

奨学金は自己破産を申立てて、奨学金全額につき支払い義務を免れるという方法もあります(ただし裁判所の免責許可が必要です)。
では、少なくとも負債額の一部を支払わなければならないという、個人再生で債務整理するメリットはどのようなものでしょうか。
個人再生で債務整理をするメリットとしては、次のようなものがあります。

自己破産とは違って、所有している資産は、基本的には強制的に処分されません。
ただし、担保がついている資産は、債権者担保権の実行により当該資産を失うことがあります(ローン返済中の車などには担保がついている可能性があります)。
住宅ローンを返済中の場合、「住宅資金特別条項」を利用し、かつ、住宅ローンの借入先との約定に従って住宅ローンの支払いを滞納することなく続ければ、マイホームについては手放さずに住み続けることができます。
ただし、住宅資金特別条項を利用するためには一定の条件があり、当該条項を利用できない方もいます。
住宅資金特別条項を利用できるかどうかの条件は複雑ですので、詳しくは、専門家へのご相談をお勧めします。

借金の主な理由が多額のギャンブルや身の丈に合わない多額の投資などの場合は、自己破産では免責不許可(借金の支払い義務が免除されない)となる可能性があります。
しかし、個人再生では免責不許可事由に該当しても、一定の要件を満たせば再生計画が認可されます。

また、個別のケースによって異なるものの、奨学金を含めた借金(※)を大きく減額することができる可能性があります。
※減額の対象となる借金からは、住宅を維持したまま個人再生をするという「住宅資金特別条項」を利用する場合は住宅ローンの残債を除きます。
また、公租公課など、個人再生をしても一部免除されない負債があります。

(2)奨学金を個人再生で債務整理するデメリット

奨学金を個人再生で債務整理をするデメリットとしては次のものがあります。

先ほどご説明したとおり、個人再生をした場合の返済額は、負債総額や資産総額などによって変わってきますが、少なくとも、借り主が所有している資産総額以上は返済しなければなりません(清算価値保障原則)。
※ただし、一定の少額の資産は上記資産総額から控除されることがあります。
具体的に、何がいくら控除されるかは裁判所により異なりますので、専門家にご相談ください。

再生計画の認可後、原則として3年で、減額された(※)一定の負債額を完済する義務があります(特別の事情があるとして裁判所に認められれば、最長5年まで延長可能)。
※保有している資産総額が負債額以上である場合などは、負債が減額されないことがあります。

借主が個人再生をしても、保証人の返済義務が減るわけではありません。
そのため、借り主が払った額(再生で免除された額)を除いた負債額については、保証人に全額返済義務があります(次章で詳しく解説します)。

個人再生をすると、信用情報機関に個人再生をした旨の情報が載ることがあり、約5〜10年間、当該情報は削除されません。
個人再生をしたという情報が登録されている間は、原則として、次の支障があります。

  1. 現在使用中のクレジットカードが使えなくなる
  2. クレジットカードを新規作成できない
  3. ローンやキャッシングなど一切の借金ができない
  4. 買い物で分割払いができない
  5. 子どもの奨学金を含め、借金の保証人になれない
  6. 賃貸住宅の審査が下りない場合がある

(ただし、信用情報機関をチェックする保証会社を付けない場合や、家賃をカード払いとしない場合は、賃貸住宅の審査への影響はまずありません)

※ただし、個人再生で債権者として扱われた金融機関等については、社内やそのグループ会社内個人再生をしたという情報が半永久的に残り続けることがあります。
そのため、当該元債権者の金融機関等やそのグループ会社に対しては、上記1~6の支障が半永久的に残り続けることがあります。

個人再生した旨が官報で公告され、官報を見た人や会社に個人再生をした旨が知られてしまうことがあります。
官報は誰でも見ることはできますが、全国民やすべての会社が官報をチェックしているわけではなく、官報をチェックしている人や企業は一部です。

借り主の個人再生によって、奨学金の保証人にはどのような影響が生じる?

多くの奨学金では他のローン契約と同様に、「自己破産や個人再生などによって、本人や保証人に重大な信用不安が生じた場合には、一括請求ができる」といった「期限の利益喪失」による一括請求が定められていることが多いです。
主たる債務者が個人再生を申立てると、期限の利益喪失によって、借入先から保証人に一括返還請求をされることが多いです。

また、期限の利益の喪失は、保証人にとって不測の事態であることが多いことから、2020年4月施行の改正民法によって、原則として2020年4月1日以降に締結された契約に対しては、

  • 主たる債務者が期限の利益を喪失したときは、
  • 債権者は、個人である保証人に対して、その利益の喪失を知った時から2ヶ月以内に、
  • 期限の利益を喪失したことを通知しなければならない

ことになりました(民法第458の3第1項)。

個人再生や自己破産では、奨学金だけ対象から外すということはできません。
そのため、両親や親族などを保証人や連帯保証人にしている場合は、両親や親族に知られずに個人再生で債務整理することはできません。

(1)保証人が支払わなければならない奨学金の残債について

主たる債務者の個人再生によって、保証人に請求される返済額は、借り主が個人再生で支払った分(認可された分)を除いた奨学金(元金・利子・延滞金)です。
例えば、500万円の奨学金の残債があって、再生計画で借り主の返済額が100万円で認可された場合(支払った場合)は、保証人が返済義務を負う額は400万円となります。

(2)保証人が一括返済できない場合はどうなる?

借入先の目的は、保証人の経済的破綻ではなく、債権を回収することです。
そのため借入先との交渉次第では、保証人も分割払いできる可能性があります(ただし、分割払いできるか、できるとして何回分割であるのかケースバイケースです)。
交渉しても保証人が支払い困難である場合には、保証人も自己破産や個人再生を検討しなければならない場合があります。

【まとめ】奨学金の返済でお悩みの方は弁護士にご相談ください

奨学金返済のベストな対処方法はケースバイケースであるため、専門知識と経験値を持つ専門家に相談することをおすすめします。
借金問題でお悩みの方は、アディーレ法律事務所へご相談ください。

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