ここを押さえればOK!
差押えを受ける給料の範囲は、借金、税金、養育費でそれぞれ異なります。
借金や養育費の場合は「差押禁止債権の範囲変更の申立て」をして、裁判所に認めてもらえれば、差押えの減額が可能です。
ただし、税金の場合は差押えの減額は原則としてできません。
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「支払いを滞納していたらその後、給料を差し押さえられて生活できない!」
もともと順調に支払いが出来ていたものの、コロナ禍が長引いている影響で給料が減ってしまい、計画通りの支払いが出来なくなったという方も多いです。
給料が差押えされてしまうと手取りが減ってしまい、生活が立ち行かなくなってしまいかねません。
しかし、差押えの原因となった「滞納」が借金なのか、税金なのか、養育費なのか等によって差し押さえられる給料の金額(範囲)は異なります。
また、一定の場合には、差し押さえられる金額を減額できることもあります。
今回は、借金などがあって給料が差し押さえられた、もしくはこれから差し押さえられそう……という方に、次のことを説明いたします。
- 給料が差し押さえられる額
- 給料への差押え額の減額の可否
- 借金が原因の差押えへの対処法
- 養育費の減額可能性
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
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給料は全額差し押さえられてしまうの?
給料の差押えと言っても、給料が全額差し押さえられることはありません。
全額差し押さえられたら、生活出来なくなってしまうからです。
給料が差し押さえられる範囲は、差押えの原因によって何パターンかあります。主なパターンは次の3つです。
- 借金などが原因の場合
- 養育費が原因の場合
- 税金が原因の場合
それぞれ法律で決まっていますので、ご説明します。
(1)借金などが原因の場合
知人や消費者金融会社など、いわゆる民間の相手に対する借金などの場合、支払いが遅れてたった数日で給料を差し押さえられてしまうケースは多くはありません。
債権者が給料を差し押さえるためには、「本当にいくらの借金を返してもらう権利がある」ということを公的に証明するための『債務名義』を事前に取得しておく必要があるからです。
差押えについて詳しくは、こちらをご覧ください。
そして、債務名義に基づいて給料を差し押さえる場合、次の金額までしか差し押さえることができません。
- 給料の手取り金額の4分の1
又は
- 月給やボーナスの手取りが44万円を超える時は、手取り額から33万円を差し引いた金額
例えば、手取り給料が20万円の場合、差押え可能な金額は5万円分です。
突然、給料が5万円も差し押さえられたら生活はかなり厳しくなると思います。
勤務先に対して給料が差し押さえられた場合、これらを除いた金額だけが債務者に支払われることになります。
また、毎月の給料だけでなく、ボーナスや退職金も差押えが可能です。
(2)養育費が原因の場合
養育費が原因で給料を差し押さえられてしまう場合、差し押さえられる額は借金の場合よりもアップします。
離婚時、小さな子供がいる場合など、養育費について父母で話し合い、一方が他方に養育費を支払うことがあります。
養育費を支払わない場合に相手の財産を差し押さえるためには、やはり『債務名義』が必要です。
養育費に関する債務名義になりうるのは、主に次のようなものです。
- 協議離婚の場合:「公正証書」
- 調停離婚の場合:「調停調書」
- 裁判離婚の場合:「確定判決」や「和解調書」
離婚の手続きなどについて詳しくは、こちらをご参照ください。
参考:養育費請求調停|裁判所 – Courts in Japan
ところで、調停調書などの『債務名義』がある場合、養育費の場合には差し押さえられる給料の範囲は、次の通りとなります。
- 給料の手取り金額の2分の1
又は
- 月給やボーナスの手取りが66万円を超える時は、手取り額から33万円を差し引いた金額
となります。
退職金やボーナスについても、差押えを受けるおそれがあります。
借金などの場合と比べて、差押え可能な範囲が広くなっているのは、養育費が支払われることが、子どもの生活を保持するために非常に大切だからです。
例えば、手取り給料が20万円の場合、10万円が差押え可能金額です。
突然、給料の半分が差し押さえられてしまったら、途方にくれるでしょう。
養育費については、親が生活を切り詰めてでも子どもの福祉のために養育費を支払わせるべきという発想から、差押えについてもかなり厳しい内容となっています。
(3)税金が原因の場合
国税(所得税など)や地方税(住民税など)などの税金を滞納し、税務署や市役所などの「督促」も無視した場合、給料を差し押さえられる可能性があります。
税金を滞納したことによる差押えは、裁判所での手続きや『債務名義』は必要ありません。
法律上、国税の場合は滞納から50日以内、地方税の場合は滞納から20日以内に「督促」することが決まっており、督促状の送付から10日で差押えがされることになっています。
実際には、督促の後にも何回か催告書などが届くケースもあるようですが、支払いの催告を無視し続ければ、給料が差し押さえられますので、注意しましょう。
なお、税金を滞納した時の差し押さえられる給料の範囲は、「給与の総支給額(額面給料)」(1000円未満切捨て)から以下の1~6を全て差し引いた残額について差押えが可能です。
- 所得税
- 住民税
- 社会保険料など
- 滞納者本人につき10万円
- 扶養家族1人につき4万5000円
- 総支給額から1~5を差し引いた金額の20%
(なお、1~3、6は1000円未満は切上げで計算されます)
ですから、例えば手取り給与が10万円であれば、そもそも差押えできる給料はありません(上記の4を差し引いただけで差押可能額がゼロになります)から、給料の差押えをされることはありません。
また、額面給料が20万円程度で扶養家族がいない場合であれば、差押え可能金額は借金などの場合の「手取りの4分の1」よりも高額になりがちです。
給料差押えの減額ってできるの?
それではいよいよ、差押えの減額についてご説明します。
(1)差押えが借金や養育費などの場合
『債務名義』に基づいて給料が差し押さえられた場合で、「そのままではどうしても生活ができない」という事情があれば、裁判所に『差押禁止債権の範囲変更の申立て』(民事執行法153条)をするという方法があります。
給料が差し押さえられると、裁判所から差押命令正本(裁判所が差押えを認めるという内容の書面です)が送られてきますが、2020年4月1日以降は、差押命令正本と一緒に『差押禁止債権の範囲変更申立て』についての説明の書面が同封されているはずです。
申立てによって、裁判所が、差押えの範囲を変更するか検討しますが、必ずしも減額が認められるとは限りません。
申立てをうけた裁判所は、次の事情などをもとに、債権者と債務者の両方の生活状況を見て減額するかどうかを判断します。
- 債務者、債権者の収入
- 債務者、債権者の家計の状況
- 債務者、債権者の財産の有無
- 債務者の他に支払うべき借金の有無
なお、『差押禁止債権の範囲変更の申立て』ができる期間は、債務者が差押命令正本を受け取った後、
- 借金などの原因の差押えの場合は『4週間以内』
- 養育費が原因の差押えの場合は『1週間以内』
です。この期間を過ぎると、債権者が給料の取立てを始めてしまうからです。
特に養育費の場合は、申立ての期間が短くなっています。そのため、給料を差し押さえられたら生活ができない、という場合には、すぐに行動する必要があります。
参考:差押禁止債権の範囲変更申立てQ&A|裁判所 – Courts in Japan
(2)差押えが税金滞納の場合
税金滞納による差押えの場合、これを減額することはできません。
最後の手段として、給料の差押えが「生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき」(=給料が差し押さえられたら生活保護を受けないと生活できないような状態です)には、『滞納処分の停止』(国税徴収法153条)により、差押えの解除を受けられる可能性はあります。
ただし、『滞納処分の停止』は税務署長が職権で行うものなので、特に債務者にできる申立ての手続きなどはありません。
また、計算上、給料から差押え可能な金額があるようであれば、停止になることは難しいと思われます。
ただ、給料が差し押さえられるとどうしても生活ができないという場合、応じてもらえない可能性もありますが、税務署に生活状況を訴えて、滞納処分の停止をしてもらえないか相談してみてもよいでしょう。
税金の支払いが大変なら、差押えよりも前に窓口で相談
税金を滞納して差押えに至った場合、減額や停止などは難しいと言わざるを得ません。
ですので、「差押えを受けるよりも前の対処」が肝心となってきます。
「税金を支払えないかも」と感じたら、早めにその税金についての窓口(役所や税務署など)に相談しましょう。
「1年間差押えをしないでおいてもらって、その1年の間に、滞納分を分割払いする」など、柔軟に対処してもらえる可能性があります。
次にご説明する「個人再生」「自己破産」でも、税金の支払義務を減らしたり無くしたりすることはできません。税金の支払いが大変なときは、放置せずに窓口で相談しましょう。
参考:タックスアンサー(よくある税の質問) No.9206 国税を期限内に納付できないとき|国税庁
借金の返済が苦しければ、個人再生・自己破産を検討してみてください
給料が差し押さえられて、このままでは生活できない、という方は、個人再生や自己破産を検討するのも一つの方法です。
先ほどご紹介した『差押禁止債権の範囲変更の申立て』では、差し押さえられる給料の金額が減ったとしても、借金それ自体が減るわけではないからです。
原則として債権差押命令申立書に記載されている金額の支払いが終わるまで、差押えは続きます。
しかし、個人再生や自己破産の手続きが裁判所で始まれば、差押えは中止・失効する可能性があるのです(タイミングは手続きの種類により異なります)。
それでは、個人再生・自己破産と差押えの関係についてご説明します。
(1)個人再生
『個人再生』とは、裁判所から認可を得たうえで、基本的に減額された負債を原則3年間で分割して支払っていく手続きです。
後ほどご説明する自己破産とは異なり、ある程度支払義務は残るものの、基本的に財産を手放す必要はありません(高額な財産があると、支払額が増える場合はあります)。
また、住宅ローンの残った自宅を手放さずに済む可能性もあります。
個人再生の手続きでは、
- 裁判所の開始決定により、差押えは中止
- 裁判所の再生計画認可決定の確定により、差押えは失効
します(失効とは、効力を失うことなので、差押えは解除されます)。
(2)自己破産
『自己破産』とは、一定の財産が債権者への配当などのために処分される可能性がある代わりに、原則全ての支払義務を免除してもらえる可能性がある裁判所での手続きです。
自己破産の手続きは、『同時廃止』と『管財事件』で分かれますが、まず『同時廃止』手続では、
- 破産手続開始決定により、差押えは中止
- 免責許可の確定により、差押えは失効
します。
そして、『管財事件』では、
- 破産手続開始決定により、差押えは失効
します。
(3)差押えよりも前の対処がベスト
このように、『個人再生』や『自己破産』では、手続きが成功すれば、最終的に給料の差押えを免れることができます。
ただ、個人再生なり個人破産をしようと決めても、すぐにできるわけではありません。差押えの失効までにはある程度の期間がかかります。その間給料が差し押さえられている状況では、生活が苦しくなるだけでなく、民事再生や自己破産の手続きを取る上での支障にもなりかねません。
一方、差押えを受けるよりも前に個人再生や自己破産の申立て準備を始め、迅速に準備が進んでいれば、「どのみち個人再生や自己破産で差押えが失効してしまうから、一旦差押えの手続きは進めないでおこう」と債権者が判断する可能性もあります。
そのため、給料が差し押さえられる前に、なるべく早期に検討されることをお勧めします。
養育費は『個人再生』、『自己破産』によって逃れることはできない
これまで、『個人再生』と『自己破産』によって、差押えを免れる話をしました。
養育費を請求されて給料を差し押さえられた、という場合も個人再生や自己破産の手続きが成功すれば、差押えは効力を失います。
ですが、養育費は『非減免債権』(個人再生において減額されたり免除されたりすることのない債権のことです)あるいは『非免責債権』ですので、個人再生や自己破産の手続きが無事終わっても、支払義務は依然として減額されずに残ります。
非免責債権について、詳しくはこちらの記事もご確認ください。
よって、再生や破産手続終了後、改めて給料を差し押さえられる可能性があります。
ですから、個人再生や自己破産によっても、養育費に関しては支払いを免除されたり減額することはできません。
『養育費減額調停』について
養育費を減額したい時は、まずは相手方と話し合うべきですが、相手方が減額に応じてくれない場合には養育費減額調停を申立てる必要があります。
一旦決めた養育費であっても、その後、やむを得ない事情で収入が減ったなどの事情があれば、家庭裁判所に養育費減額調停を申立てることができます。
参考:養育費(請求・増額・減額等)調停の申立て|裁判所 – Courts in Japan
次のサイトを参照し、自分と相手方の収入から、現在の養育費が適正かどうか確認してみてください(子供の数と年齢によって表が分かれています。表の縦の欄が自分の年収、横の欄が相手方の年収です)。
参考:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所 – Courts in Japan
なお、養育費減額についての話合いが調停でまとまらなければ、裁判官が判断する『審判』に移行します。
もしも減額が認められた場合には、新たな養育費についての審判書が作られますので、その後は審判によって認められた養育費を支払っていくことになります。
【まとめ】給料の差押えは、差押えの原因によっては減額できることもある
今回の記事のまとめは、次の通りです。
- 差押えを受ける給料の範囲は、借金、税金、養育費でそれぞれ異なる。
- 借金や養育費の場合は『差押禁止債権の範囲変更の申立て』をして、裁判所に認めてもらえれば、差押えの減額ができる。
- 税金は差押えの減額は原則できない。差し押さえられると生活保護を受けない限り生活できないようなないような状況であれば、税務署に相談して、滞納処分を停止してもらえないか相談する。
- 借金などの滞納が原因で給料が差し押さえられた場合には、『個人再生』や『自己破産』を検討すべきだが、そもそも差押えされる前に、なるべく早くこれらの手続を取るべきである。
- 養育費は個人再生や自己破産によっても支払いは減額・免除されないため、減額してもらうためには、別途養育費減額調停を申立てる必要がある。
借金・養育費・税金ともに、一度給料への差押えが始まってしまうと、家計が一層苦しくなってしまいます。減額できる可能性は0ではありませんが、それなりの期間がかかります。
ですので、「このままだと支払えないかも…」と感じたら、差押えが実際に始まってしまうよりも前に対処する必要があります。
税金の支払方法についてはその税金を管轄している窓口に、養育費が高すぎると感じたら家事事件を取り扱っている法律事務所に相談しましょう。
また、借金を抱えている場合には、個人再生や自己破産の検討がおすすめです。
アディーレ法律事務所では、万が一個人の破産事件や再生事件で免責不許可(支払義務を免除してもらえない)・再生不認可(減額してもらえない)となってしまった場合、当該手続きにあたってアディーレ法律事務所にお支払いいただいた弁護士費用は原則として、全額返金しております(2022年11月時点)。
借金でお悩みの方は、破産や民事再生を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。