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自己破産したら持ち家は失う?今の家を残す方法を弁護士が解説

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リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「自己破産をしたいけれど、持ち家は残したい…持ち家を残す方法はない?」

思い出は形に残らないものだとはいえ、思い出の詰まった物を手放したくない人も多いでしょう。特に持ち家は、長い年月をともにするものですから、非常にたくさんの思い出が詰まっていると感じる人も多いのではないでしょうか。
ですが、自宅をお持ちの方は、自己破産をする場合、基本的には持ち家は手放さなくてはいけません。
ただし、ローンが残っておらず、価値も低いような自宅であれば、自己破産により手放さなくてもすむ可能性はあります。
また、自己破産ではなく民事再生や任意整理の手続きによれば、持ち家を残したまま借金が減額できることもあります。

今回は、次のことについて弁護士が解説します。

  • 自己破産と持ち家の関係
  • 住宅ローンが残っている場合の注意点
  • 自己破産後も持ち家に住み続ける方法
  • 持ち家を残して借金を減額する方法
この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

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自己破産すると持ち家は原則として失うことになる

自己破産の手続きでは、破産者の財産は破産管財人によって換価(お金に変えられること)され、債権者に配当(公平に分配されること)されることになりますが、破産者は全ての財産を失う訳ではありません
破産者の財産は「破産財団」と「自由財産」に分けられ、「破産財団」に属する財産は換価されてしまいますが、「自由財産」は破産者が自由に管理・処分をすることができます
例えば、次のような財産が「自由財産」とされます。

「自由財産」の例

  • 99万円以下の現金
  • 差押えが禁止されている動産や債権
  • 破産手続開始決定後に取得した財産など

また、例えば東京地裁では、一定の種別の財産ごとに20万円を超えない財産は、原則として自由財産が拡張され(本来は自由財産ではないものについて、自由財産として扱うこと)、換価されない運用となっています(※「自由財産の拡張」は各裁判所によって運用が異なります。個別にお知りになりたい方は、各裁判所の運用に詳しい弁護士などにご相談ください)。

持ち家等の不動産は、自由財産には含まれませんので、自己破産をすると原則として持ち家を失うと考えておくべきです。
ただし、例外的に、田舎の一軒家など買い手の見つからない物件は、破産者の手元に戻してもらえる可能性もありますが、その場合も、破産者が、その価値相当額を支払う必要があります。

自由財産について詳しくはこちらの記事もご参照ください。

自由財産とは?自己破産をした後でも残せる財産について解説

持ち家が共有の場合はどうなる?

他の親族とともに実家を相続した場合のように、誰かと共同で不動産を所有(共有)することがあります。
このような場合は、(不動産の価値にもよりますが)次の方法により持ち家に住み続けられる可能性があります。

  • 裁判所に自由財産の拡張を認めてもらう
  • 共有者が破産者の持分を買い取る
  • 破産者が破産管財人に価値相当額を支払う

具体的な事例を想定してみましょう。

家族構成:父、母、子ども3人
単独で不動産(時価90万円、ローンなし)を所有していた父親が交通事故で亡くなり、遺産分割協議未了のまま(遺言はなし)、長男が自己破産手続をすることになりました。
父の死亡により持ち家は母、子どもら3人が相続・共同で所有しており、その持分は法定相続分に従い、母親2分の1、子どもらは1人あたり6分の1です。
そうなると、長男の持分は、15万円です。

このような場合、破産管財人は、長男の持分を売却してお金に変えることになりますが、共有者である母や他の子どもらが長男の持分を15万円で購入すれば、長男は引き続き持ち家に住み続けることができるでしょう。

共有者が持分を購入することができなければ、第三者に持分を売却することも考えられますが、母や他の子どもらは、引き続き共有物(持ち家)の全部を、その持分に応じて使用することができますので(民法249条)、第三者があえて持分が6分の1しかないような物件を購入することは多くはないでしょう。
そして、買い手が見つからなければ、結局、長男は持ち家を失わずに済みます。

もっとも、長男は、持分の価値相当額を支払わなければならないのが原則です。

共有名義となっている家も住めなくなる可能性が…

具体的な事例を想定して、共有名義の不動産についてもう少し詳しく解説します。

家族構成:父、母、子ども1人
単独で不動産(時価900万円、ローンなし)を所有していた父親が交通事故で亡くなり、遺産分割協議未了のまま(遺言はなし)、長男が自己破産手続をすることになりました。

不動産の持分は、母と長男がそれぞれ2分の1ずつ持っていることになります(価格は450万円)。

この場合、長男の持っている持ち家の持分の価額は高額ですので、自由財産の拡張はまず認められないでしょう。

長男が自己破産を申立てると、その破産管財人は、長男の持分を売却してお金に換えようとします。
もし母親に不動産の持分を買い取れるお金があれば、破産管財人は共有者である母親に対して持分を買い取らないかを打診するでしょう。
そして、母親に買い取れるだけのお金がないか買い取るつもりがないのであれば、破産管財人は不動産の持分を買い取ってくれる人を探し、見つからない場合には長男の持分を競売にかけることが考えられます。
そして、競売で持分を売却できれば、破産管財人は、その代金を債権者に配当することになります。

他方、買受人(競売により持分を競落した人)は、いつでも共有物の分割を請求でき(民法256条1項)、共有者間で協議が調わないときは、共有物分割請求訴訟を起こすることができます。
共有物分割請求訴訟とは、裁判所に不動産を強制的に分割してもらう手続きで、裁判所は、一定の場合には、共有物の競売を命じることができます(民法258条2項)。
その場合には持ち家は売却され、その売却代金を持分に従い、母親と買受人で分けることになります。
以上のように、共有名義の場合でも、破産者の持分を本人や母親が買い取っておかなければ、持ち家に住み続けられなくなる可能性があります。

持ち家の住宅ローンが残っている場合の注意点

持ち家の住宅ローンが残っている場合には、持ち家を手放さなければならない可能性がさらに高まります。
一般的に、住宅ローン債権者は、住宅に抵当権をつけています。

抵当権とは、借りた人が住宅ローンを返済できなくなった場合、住宅を売却できる権利のことです。
抵当権は、破産手続外で行使することができます。
そのため、借りた人が自己破産の手続きを進めるなど住宅ローンの支払いを停止すると、住宅ローン債権者はその住宅を競売にかけ、その売却代金を優先的に住宅ローンの返済に充てるのです。

共有名義であっても、抵当権が不動産全体についていれば(共有者が物上保証人になっている場合です)、共有者が競売を拒否することはできません。

それどころか、共有者であると同時に連帯債務者や連帯保証人となっている場合には、自らも債務整理をしなければならない可能性があります。

持ち家の名義を他人に変えてはいけない

自己破産によって持ち家を失う可能性があるのは、単独であれ共有であれ、破産者がその不動産を所有している場合です。
破産者が住んでいても、所有者が破産者以外であれば、その持ち家を失う心配はありません。

では、自己破産を申立てる前に所有名義だけ別の人に変えればよい、と思うかもしれません。
しかし、自己破産をする以上、法律に則って手続きを進める必要があるため、そのような脱法的行為は許されません。

破産管財人には、別の人に変えられた名義を一定の条件に基づき破産者に戻す権限(「否認権」と言います)がありますし、場合によっては「財産隠し」と捉えられて借金の返済義務の免除が認められないリスクもあります。

破産管財人の否認権について詳しくはこちらの記事もご参照ください。

破産管財人が否認権を行使するケースとその効果を解説

自己破産前に持ち家を任意売却するメリット

上記のように、自己破産をする前に、持ち家の名義を形式的に別の人に変えるようなことは許されませんが、自己破産して売却されてしまう前に、持ち家を適正な価格で任意売却することは可能です。
田舎であれば買い手を探すのがなかなか大変かもしれませんが、都心であれば買い手が見つかる可能性も十分にあります。
持ち家を任意売却するメリットを2つお伝えします。

(1)任意売却は市場価格と変わらない金額で売却できる

通常、競売にかけられた不動産の売値は、相場価格に比べて低額になります。
これに対して、ローンを組んでいる金融機関の同意の下、任意売却する場合には市場価格と変わらない金額で売却できる可能性があります。
任意売却するのであれば、不当に安い価格で売却したと指摘されないように、大手不動産業者2社以上から査定を取って、なるべく高く売却するようにしましょう。

(2)自己破産の手続きが短期間で終わる可能性がある

持ち家が任意売却されずに残っていると、持ち家をお金に換えるため、裁判所から破産管財人が選任され「管財事件」で手続きを進めることになります
これに対して、自己破産を申立てる時点で既に適正な価格で持ち家が売却され、しかもその代金もローンの支払いに充てられたなど使途が明確であれば、持ち家を理由として「管財事件」とする必要はありません。

他の事情次第では、手続きの簡略化された「同時廃止事件」で進められる可能性もあります。
同時廃止事件であれば、管財事件よりも手続費用や弁護士費用が安く済み、また手続きに必要な期間も短くなります。
同時廃止事件で進めることができれば、破産者の負担は大きく軽減されることでしょう。

管財事件について詳しくはこちらの記事もご参照ください。

管財事件とは?手続きの流れや注意点についても解説

持ち家に住み続けたいなら個人再生や任意整理を検討する!

「個人再生」とは、返済困難な方が、裁判所の認可決定を得た上で、基本的に減額された一定の負債を原則3~5年で分割返済していく手続きです。

負債の額や保有している資産の額などによって異なりますが、任意整理よりも大幅に負債が減額されることが多いです(公租公課など減額されない負債が一部あります)。

個人再生では、持ち家を手元に残したまま、住宅ローン以外の債務を減額する制度が設けられている点が特徴です(ただし一定の要件を満たさないと当該制度は利用できません)。

負債の減額幅は負債総額及び保有している資産などによって決まっています(※なお、保有している資産や負債額などによっては、減額されないケースもあります)。

住宅ローンがない場合でも、個人再生を利用することはできます。ただし、持ち家の価値次第では、そもそも個人再生の手続が開始されない場合や、借金が大幅には減額されない場合もありますので注意が必要です。

民事再生をすることによって持ち家を残すことの出来た方の解決事例はこちらをご参照ください。

また、借金の総額が少ない場合には、任意整理をするだけで済むかもしれません。

任意整理とは、原則として、次のような手続きです。

  • 引き直し計算(適正な利息で負債残高や払いすぎた利息を計算すること)をして、払いすぎたお金があれば、その分負債残高を減らす

  • 引き直し計算しても残った負債については、今後発生する利息(将来利息)をゼロにして、分割で払っていくことを、借入先と交渉する

任意整理をすることにより、返済の負担を現状よりも減らすことができる可能性があります。

※なお、和解できるかどうか、どのような和解内容になるかは、相手との交渉次第ですので、必ずしも希望するとおりの和解に至るわけではありません。

任意整理により過払い金が返還され、借金が減額された方の事例についてはこちらをご参照ください。

自己破産後も持ち家に住み続ける方法

自己破産後も持ち家に住み続けられる方法がないわけではないので、ご紹介します。

(1)自分で買い取る

破産管財人の許可があれば、自分で持ち家を買い取ることができます。
弁護士に依頼した後、申立書の作成に必要な資料を集めるのと並行して、毎月お金を積み立てていくことになるでしょう。

(2)家族に持ち家を購入してもらう

破産管財人の許可があれば、家族に持ち家を購入してもらうこともできます。
購入価額は大手不動産業者の査定から決められ、原則として一括で支払うことになります。

(3)持ち家をリースバックする

破産管財人の許可があれば、持ち家をリースバックすることもできます。
リースバックとは、不動産業者に持ち家を買い取ってもらい、不動産業者に家賃を支払いながら住み続ける方法のことです
不動産業者の言い値で売却せずに、適正価格で購入してもらうことが大切です。
もっとも、家賃は地域相場と関係なく、不動産業者が設定するため高額になりやすく、家賃を滞納すれば強制退去になるおそれもあります。
せっかく自己破産が認められたのに、家賃が家計を圧迫しては意味がありません。
経済生活を立て直すためには、適正な家賃のところに引っ越したほうが良いケースのほうが多いでしょう。

【まとめ】自己破産により持ち家は手放さなくてはいけない可能性が高い。手放したくない場合には民事再生や任意整理の検討を

今回の記事のまとめは、次のとおりです。

  • 自己破産をすると、抵当権のついていない持ち家は換価され、債権者に配当される。
  • 住宅ローンが残っている場合など抵当権がついている持ち家は、抵当権者が抵当権を実行して競売にかけられてしまう。
  • 持ち家の価値が低く、買い手がつかないような場合には、破産管財人により破産財団から放棄してもらえる可能性はある。
  • 持ち家の価格によっては、自分で買い取ることが出来る可能性はある。
  • 持ち家が共有名義の場合には、共有者に持分を買い取ってもらうことが出来れば、自宅に住み続けることが出来る。
  • 共有者が持分を買い取らなければ、破産管財人により破産者の持分は競売にかけられてしまう。
  • 競売により破産者の持ち分を競落した買受人は、他の共有者に対して共有物分割請求などが出来るため、いずれ持ち家から退去しなければいけなくなる可能性が高い。
  • 民事再生や任意整理が出来れば、持ち家を手放さずに借金を減額することが出来る可能性がある。

アディーレ法律事務所では、所定の債務整理手続につき、所定の成果を得られなかった場合、原則として、当該手続に関してお支払いただいた弁護士費用を全額ご返金しております。
また、完済した業者への過払い金返還請求の手続きの場合は、原則として過払い金を回収できた場合のみ、成果に応じた弁護士費用をいただいておりますので、費用をあらかじめご用意いただく必要はありません。(2022年12月時点)

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