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相続税を節税したい!おすすめの対策10個と注意点を解説

作成日:
kiriu_sakura

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「相続税を節税したいと考えているけれど、どのような対策があるのかな?」

相続税の節税対策には、「生前贈与をする」などさまざまなものがあります。

相続税の節税対策をするにあたっては、被相続人となる予定の方に動いてもらう必要があるので、相続が発生する前によく話し合っておくことが大切です。

この記事を読んでわかること
  • 相続税の節税対策
  • 節税対策の注意点
この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

相続税対策1|生前贈与をする

「生前贈与」とは、生きているうちに財産を無償で譲り渡す(贈与する)ことです。
生前贈与を行うことで、相続税が課せられる財産(相続財産)を少なくすることができます。

例えば、生前贈与をしなければ相続財産が2億円だという場合には、基本的にはこの2億円に対して相続税が課せられます。
これに対して、亡くなる前に5000万円の生前贈与をしておけば、相続財産は1億5000万円となり、相続税が課せられる対象は基本的にはこの1億5000万円になります。
相続税が課せられる対象となる財産が減った分、支払わなければならない相続税の額も減ります。

注意点

生前贈与には、次のような注意点があります。

  • 生前贈与には贈与税が課される
  • 生前贈与を税務署に否認されるおそれがある
  • 定期贈与とみなされ贈与税が課せられるおそれがある
  • 死亡前3年以内の贈与に対しては相続税が課せられる

(1-1)生前贈与には贈与税が課される

生前贈与としてまとまった額の財産を譲り渡した場合には、基本的には贈与税が課されます。
贈与税は、財産をもらった個人が支払うものです(財産をあげた人ではありません)。

しっかりと贈与税のことを計算に入れておかないと、生前贈与をしたのに結局多額の贈与税が課されてしまい、生前贈与した意味がなかったということにもなりかねません。

(1-2)生前贈与を税務署に否認されるおそれがある

税務調査が入り、生前贈与を税務署に否認されるおそれがあります。
生前贈与を税務署に否認されると、生前贈与がなかったものとして相続税の計算がなされるので、生前贈与をした分に対しても相続税が課されます。
例えば、5000万円を生前贈与したのに、これが否認されると、この5000万円に対しても相続税が課税されます。

生前贈与が否認されるのはどんな場合ですか?

例えば、現金を手渡しで贈与すると、生前贈与の証拠がないものとして否認されることがあります。

生前贈与が否認されないようにするには、贈与の際に贈与契約書をつくるようにしましょう。
贈与契約書があれば、生前贈与があったことを証明しやすくなります。

また、贈与の際に名義だけ贈与を受ける方(相続人予定者)の口座をつくってその口座にお金を振り込むことは、おすすめできません。
贈与を受ける方(相続人予定者)が普段から実際に使っている銀行口座にお金を振り込むようにしましょう。

(1-3)定期贈与とみなされ贈与税が課せられるおそれがある

年間の贈与額が110万円以下であれば贈与税がかからないため、110万円以下の額で毎年贈与するという方法がありますが、毎年同じ額を贈与し続けると「定期贈与」とみなされて贈与税が課税されるリスクがあります。

「定期贈与」とは、毎年一定額のお金を贈与することがあらかじめ決まっている贈与のことです。
例えば、毎年80万円ずつ、10年にわたって計800万円を贈与すると約束するケースがあります。
この場合、毎年の贈与額は110万円以下ですが、約束をした年に贈与の合計額である800万円に対して贈与税が課税されます。

定期贈与とみなされないための対策としては、贈与の都度贈与契約書を作成したり、贈与の金額や日時も毎年ばらばらにしたりする、という方法があります。

(1-4)死亡前3年以内の贈与に対しては相続税が課税される

死亡前3年以内に行った生前贈与に対しては、その贈与を相続財産に含めて相続税が計算されるため、相続税が課税されることとなります。
このルールを、「生前贈与加算」と言います。

このことから、できるだけ早いうちから生前贈与を行っておくことが必要だと言えます。

なお、生前贈与加算は2023年1月時点では死亡前「3年」以内の贈与が対象となりますが、税制改正により、2024年1月1日以降の贈与からは死亡前「7年」以内の贈与を対象とするように、範囲が拡大されます。

相続税対策2|生命保険に入る

生命保険金には、相続税が非課税となる枠が設定されています。
生命保険金の相続税非課税枠は、次の式により求めることができます。

非課税枠=500万円×法定相続人の数

例えば、法定相続人が3人の場合、相続税の非課税枠は1500万円です。
生命保険金が8000万円であれば、8000万円-1500万円=6500万円に対して相続税が課税されます。

非課税枠だけでは十分に節税しきれないようなのですが、いい対処法はありますか?

生命保険金を一時所得として受け取るようにするという方法があります。

生命保険金は、保険料負担者と保険金受取人とが同じ人である場合には、相続税ではなく所得税が課せられます。
例えば、被保険者(財産を遺したい人)が父親で、保険料負担者・保険金受取人(財産を受け継がせたい人)が子どもであるという場合には、所得税が課せられます。

この場合、保険金を受け取ったら、その保険金は一時所得として所得税が課税されます。
一時所得にかかる税金は、次のように課税所得金額を求めてから一定の税率をかけて計算します。

課税所得金額=(一時所得の金額-必要経費-特別控除額〔最大50万円〕)×2分の1

すなわち、一時所得の金額全てに対して所得税が課せられるわけではないのです。
このことから、保険金を一時所得として受け取ることで、節税につなげることができます。

なお、財産を受け継がせたい人(相続人予定者)に対して一定の資金を生前贈与することで、保険金の原資をつくることができます。

注意点

この方法の場合、保険金の原資をつくるために財産を受け継がせたい人(相続人予定者)に対して一定の資金を生前贈与することとなります。
この際、生前贈与についてご説明したように、定期贈与などとして税務署に否認されないように注意する必要があります。

相続税対策3|「小規模宅地等の特例」を利用する

「小規模宅地等の特例」とは、一定の要件を満たすことで、土地の相続税評価額を最大80%減らすことができる制度です。
土地の相続税評価額を減らすことができれば、その分その土地にかかる相続税は少なくなります。

例えば、父親が所有する土地に父親と子どもが2人で住んでいたという場合に、父親が亡くなって同居していた子どもが土地を相続し、住み続けた場合には、小規模宅地等の特例が適用されて土地の評価額を減らすことができる可能性があります。

小規模宅地等の特例の対象となるか、いくら減税されるかは、面積と用途で決まります。
例えば、特定居住用宅地等の場合、限度面積は330㎡、減額率は80%です。

小規模宅地等の特例の対象となる土地は、次の3種類です。

  • 特定居住用宅地等
  • 特定事業用宅地等
  • 貸付事業用宅地等

特定居住用宅地等とは、住宅地として使われていた土地です。
特定事業用宅地等とは、事業で使われていた土地です。
貸付事業用宅地等とは、不動産貸付業に使われていた土地です。

このように、実際に住宅地として住んでいた土地以外にも小規模宅地等の特例の対象となる土地はあります。

注意点

故人が亡くなる前に老人ホームに入居していた場合には、注意が必要です。
この場合、一定の要件を満たせば小規模宅地等の特例を受けることができますが、要件を満たさなければ特例を受けられません。
一定の要件とは、次のとおりです。

  • 要介護認定・要支援認定を受けていること
  • 自宅を賃貸物件として貸し出していないこと
  • 老人ホームが、届出がなされている老人ホームであること

例えば、老人ホームに入ったから自宅を賃貸物件として貸し出しているという場合には、基本的には小規模宅地等の特例が適用されません。

相続税対策4|「住宅取得等資金の贈与の非課税措置」を利用する

住宅取得等資金を贈与することで、相続財産を減らし、課税される相続税の額を減らすという方法もあります。

「住宅取得等資金の贈与の非課税措置」とは、親や祖父母などから18歳以上の子や孫が住宅の購入・増改築のためのお金をもらっても、一定額までは贈与税がかからない制度です。

非課税となる贈与の額は、省エネ等住宅の場合には1000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までです。

注意点

贈与を受ける者が、贈与者の子や孫である必要があります。
このため、配偶者の親(祖父母)から贈与を受けたとしても、要件を満たさず特例の対象外となります。

相続税対策5|養子を増やす

養子を増やすことで、各種の非課税枠(相続税の基礎控除額、生命保険金の非課税枠、死亡退職金の非課税枠など)を増やすことができます。

例えば、相続税の基礎控除額は、次の式で計算できます。

基礎控除額=3000万円+(600万円×法定相続人の数)

もし実子が1人のみであった場合には基礎控除額は3600万円ですが、養子を1人とることで法定相続人の数が2人となれば、基礎控除額は600万円増えて4200万円となります。

注意点

相続税法上認められる養子の数には限りがあり、無制限に何人でも養子を増やして非課税枠を増やせるわけではありません。
実子がいない場合には2人まで、実子がいる場合には1人までしか、養子を法定相続人に含めることができません。

もっとも、特別養子縁組による養子や配偶者の連れ子を養子にした場合などは相続税法上実子とみなされ、人数制限の対象とはなりません。

相続税対策6|空き地にマンション・アパートを建てる

空き地(更地)を所有している場合には、その空き地の上に賃貸マンション・アパートを建築することで、相続税を下げられます。
これは、賃貸に出している分土地の評価額が下がり、また賃貸物件も年月が経つにつれて評価額が下がり、結果として相続財産の評価額が下がるからです。
さらに、賃貸収入が見込めるというメリットもあります。

注意点

賃貸マンション・アパートの空き室が多かったり、家賃滞納などのトラブルが発生したりした場合には、かえってマイナスとなることも少なくありません。
また、修繕費の積み立てもきちんと用意しておく必要があります。
賃貸マンション・アパート経営による採算がとれるのか、実際に経営を行えるのか、しっかりと事前に確認しておくことが大切です。

相続税対策7|タワーマンション節税を利用する

タワーマンション節税を利用するという方法があります。
これは、現預金資産でタワーマンションを購入し、それにより相続税の節税につなげるというものです。

タワーマンション節税が可能となるのは、固定資産税評価額と時価に開きがあること、土地の相続税評価額が低いことなどによります。

もっとも、このタワーマンション節税は、次にご説明する注意点のようなリスクがあることから、2023年1月現在はあまりおすすめできる方法ではなくなってきています。

注意点

タワーマンション節税は、税務署に否認される可能性があります。
タワーマンションを購入する目的がただ節税だけであれば、否認される可能性は高まります。

また、2023年度税制改正大綱では、タワーマンション節税が課税の公平性を大きく損なうものであるとして問題視され、タワーマンション節税を封じるための制度の見直しが検討されています。
具体的な制度改正は2023年1月の時点では発表・実施されていませんが、近いうちにタワーマンション節税が使えなくなるよう封じられる可能性は高いといえるでしょう。

相続税対策8|墓や仏壇を生前に購入する

墓地、仏壇、仏具などは相続税が非課税のため、墓や仏壇を生前に購入すれば、相続財産を減らすことができます。

注意点

仏具が過度に豪華な純金製であるなど、社会通念上度が過ぎた相続税対策のための購入であれば、税務署に否認され相続税の対象となることがあります。

もっとも、単に純金製であるというだけで否認されるわけでなく、実際に日常的に使用しているのか、それとも節税・転売目的なのか、ということなどを考慮して判断されます。

相続税対策9|生前にリフォームする

相続開始後に相続人が済む予定があり、リフォームをする必要がある場合には、生前に被相続人の費用負担でリフォームをすれば相続財産を減らせます。
また、建物の固定資産税評価額は、年数が経つにつれて減っていくため、相続税対策になります。

注意点

相続後に住む予定の相続人とお金を出す被相続人予定者とが、リフォームの内容についてしっかりと話し合っておかなければ、せっかくリフォームしても相続人が住みづらいということになってしまう可能性があります。

相続税対策10|相続の回数を減らす

例えば、あなたから見て、被相続人(亡くなった方)が父親、相続人(財産を受け継ぐ方)が母親、相続財産が自宅という場合、父が亡くなってから母に相続させることも可能ですが、母が亡くなってから再びあなたが相続することになります。
このケースでは、2回相続が発生して、相続税もその都度発生する可能性があります。
また、不動産であれば相続登記の手数料もかかってしまいます。

最終的にあなたが相続することが決まっているのであれば、父死亡時にあなたに相続させるようにすれば、相続の回数を減らせます。

注意点

代襲相続の場合を除いて、1.親等の親族(親・子ども)や配偶者以外の者が相続した場合、相続税は「2割増し」となります(相続税額の2割加算)。

このようなことから、もし最終的に財産を受け継ぐ方が1.親等の親族などではないという場合には、相続税額の2.割加算がなされることを織り込んで相続税の負担を計算しなければなりません。

【まとめ】相続税の節税方法にはいろいろある!注意点も踏まえて賢く節税しましょう

この記事のまとめは次のとおりです。

  • 相続税の節税対策には、例えば、生前贈与などさまざまなものがある。
  • 相続税の節税対策は、どの方法にも注意すべき点がある。節税に失敗しないように、注意点をよく踏まえてどの節税対策を選ぶか検討することが大切。

相続税の負担はできるだけ減らしたいもの。
相続税の節税対策を上手に活用して、うまく節税を図りましょう。
もっとも、節税を意識するあまり、注意点を見過ごして失敗してしまうと残念な結果に終わってしまいます。
しっかりと注意点を踏まえて節税するようにしましょう。

相続税の節税対策で分からないことがあれば、相続や相続税について詳しい弁護士・税理士に相談するようにしましょう。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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