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配偶者「特別」控除とは?配偶者控除との違いなどをわかりやすく解説

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s.miyagaki

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「配偶者特別控除とはどのような制度?配偶者控除との違いは?」

「配偶者特別控除」とは、配偶者控除が受けられないときに受けられる可能性がある所得控除のことです。

今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 「配偶者特別控除」と「配偶者控除」の違い
  • 「配偶者特別控除」を受けるための条件
  • 「配偶者特別控除」の控除額と計算例
  • 「配偶者特別控除」の申請方法
この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

配偶者「特別」控除とは?配偶者控除との違いは?

「配偶者特別控除」の概要と、「配偶者控除」との違いについてご説明します。

(1)「配偶者特別控除」とは

「配偶者特別控除」とは、配偶者の所得金額に応じて受けられる可能性がある「所得控除」のことです。

配偶者に48万円(※)を超える所得があるため、「配偶者控除」の適用が受けられないときでも、「特別控除」を受けられるという特徴があります。※令和元年分以前は38万円です。

「所得控除」とは、所得税等の計算の際、計算の基礎となる所得の金額から、控除の種類に応じて一定の金額を差し引くものです。「所得控除」により、支払う税金の額が低くなります。

(2)「配偶者特別控除」と「配偶者控除」の違い

配偶者特別控除と配偶者控除との違いは、「どういう場合に控除されるのか(条件)」と「いくら控除されるのか(控除額)」という点です。

(2-1)違い1|条件

「配偶者控除」とは、年間の合計所得金額が48万円以下(2019年分以前は38万円以下)であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること)などの一定の条件を満たした配偶者がいる場合に、受けることができる所得控除のことです。

これに対して、「配偶者特別控除」は、配偶者控除を受けられない方のための制度ともいえます。

すなわち、配偶者特別控除は、所得が多すぎて配偶者控除を受けることができない場合でも、所得に応じて一定額の控除を受けられる所得控除です。

※ただし、一定の所得を超えるなどの条件を満たさなくなると配偶者特別控除も受けられません。

(2-2)違い2|控除額

「配偶者控除」を受ける場合は、配偶者特別控除を受けた場合と同額か、それよりも大きい額が控除されます。また、配偶者控除の場合、納税者本人の所得に応じて控除額が異なります。

他方で、「配偶者特別控除」の場合は、納税者本人のみならず、配偶者の所得額がいくらかによっても控除額も変わります。

(3)「配偶者控除」を受けられない場合に「配偶者特別控除」を確認

「配偶者特別控除」と「配偶者控除」は、同時に受けることはできません。まず配偶者控除の対象となる場合には配偶者控除を受けます。

配偶者控除の対象とならない場合には、配偶者特別控除を受けられないか確認します。

「配偶者特別控除」を受けるための条件

「配偶者特別控除」を受けるための条件は、次のとおりです。条件は、その年の12月31日の時点で全て満たしていることが必要です。

  • 納税者本人の合計所得金額が1000万円以下であること
  • 民法上の配偶者であること
  • 配偶者が納税者本人と生計を一にしていること
  • 青色申告者または白色申告者の事業専従者でないこと
  • 年間の合計所得金額が「48万円超133万円以下」(※)であること
  • 配偶者が自らも配偶者特別控除を受けていないこと

※2020年分以降の数字です。2018~2019年分までは「38万円超123万円以下」、2017年分までは「38万円超76万円未満」となります。

それぞれの条件についてご説明します。

(1)民法上の配偶者であること

「民法上の配偶者」とは、婚姻届を役所に提出して、法律婚をしている方のみを指します。内縁関係・事実婚関係の方を含みません。

(2)配偶者が納税者本人と生計を一にしていること

「生計を一にしている」とは、生計が同じということを意味します。簡単に言えば、同じ「財布」(家計)から生活費を出しているということです。

「生計を一にしている」という条件を満たすためには、必ずしも同居している必要はありません。

単身赴任などの理由により別居している場合であっても、同じ「財布」から生活費を出しているという関係にあるのであれば、「生計を一にしている」という条件を満たす可能性があります。

(3)青色申告者または白色申告者の事業専従者でないこと

「事業専従者」とは、配偶者が納税者本人の経営する事業に従事して、給与の支払を受けている場合のうち、一定の要件を満たす方のことです。

例えば、夫が事業を経営して、妻がその事業のために夫から給与を受けて働いている場合などがこれにあたり得ます。

(4)年間の合計所得金額が「48万円超133万円以下」であること

年間の合計所得金額が48万円以下の場合には、配偶者控除を受けられます(数字は2020年分以降のものです)。

48万円を超えると配偶者控除は受けられなくなりますが、133万円以下であれば代わりに配偶者特別控除を受けられます。

「合計所得金額」と「給与収入」は、違うものですか?

「合計所得金額」と「給与収入」は違うものです。

「給与収入」とは、源泉徴収などの天引きがされる前の給与の額です(いわゆる「額面」)。

給与収入から「給与所得控除」という控除などを差し引いた後の額が、「給与所得」の額となります。

そして、給与所得とそれ以外の所得を原則全て合計した額が、「合計所得金額」となります。

【年間の合計所得金額が「48万円超133万円以下」】という条件を「収入」に換算してみると、年間の給与収入が103万円超201万6000円未満までであれば、この条件を満たすことになります(配偶者の収入が、給与収入のみの場合)。

(5)配偶者が自らも「配偶者特別控除」を受けていないこと

これは、夫婦両方がそれぞれ配偶者特別控除を受けることはできないということです。

配偶者控除・配偶者特別控除の控除額

配偶者控除・配偶者特別控除の控除額は、納税者本人の合計所得金額と配偶者の所得額に応じて決定されます。令和2年分以降の「配偶者控除」「配偶者特別控除」の控除額は、次の表のとおりです(所得税の場合)。

納税者本人の合計所得金額
(かっこ内は給与収入に換算した場合の額)
配偶者の合計所得金額
(かっこ内は給与収入に換算した場合の額)
900万円以下
(1095万円以下)
900万円超
950万円以下
(1095万円超1145万円以下)
950万円超
1000万円以下
(1145万円超1195万円以下)
1000万円超
(1195万円超)
配偶者控除48万円以下
(103万円以下)
38万円26万円13万円0円
配偶者特別控除48万円超
95万円以下
(103万円超150万円以下)
38万円26万円13万円0円
95万円超
100万円以下(150万円超155万円以下)
36万円24万円12万円0円
100万円超
105万円以下(155万円超160万円以下)
31万円21万円11万円0円
105万円超
110万円以下(160万円超166万8000円未満)
26万円18万円9万円0円
110万円超
115万円以下(166万8000円以上175万2000円未満)
21万円14万円7万円0円
115万円超
120万円以下(175万2000円以上183万2000円未満)
16万円11万円6万円0円
120万円超
125万円以下(183万2000円以上190万4000円未満)
11万円8万円4万円0円
125万円超
130万円以下(190万4000円以上197万2000円未満)
6万円4万円2万円0円
130万円超
133万円以下(197万2000円以上201万6000円未満)
3万円2万円1万円0円
133万円超(201万6000円以上)0円0円0円0円

配偶者特別控除による減税額の具体的な計算例

配偶者控除や配偶者特別控除の控除額は分かりましたが、実際にはどれくらい税金がお得になるのでしょうか?

控除額だけ分かったとしても、具体的なイメージが湧かないですよね。

そこで、具体的な数字に即して、配偶者特別控除による減税額の計算例を紹介します。

ここからご説明するケースでは、基礎控除などのその他の所得控除については除外して、配偶者特別控除のみを計算しています。
なお、所得税についてのみ計算しています。

配偶者控除により減税される額
ケース1ケース2
納税者本人の所得額600万円600万円
配偶者の所得額
(給与収入)
55万円
(110万円)
109万円
(165万円)
配偶者特別控除の額38万円26万円
1.納税者本人の所得税
(配偶者特別控除なしの場合)
77万2500円77万2500円
2.納税者本人の所得税
(配偶者特別控除ありの場合)
69万6500円72万500円
3.減税される額
(1.-2.)
7万6000円5万2000円

各ケースの計算方法をご説明します。

(1)ケース1|納税者本人の所得600万円、配偶者の所得55万円(給与収入110万円)の場合

納税者本人の所得が900万円以下、配偶者の所得が48万円超133万円なので、配偶者特別控除が適用されます。
この場合、先ほどの表により、満額である38万円の配偶者特別控除を受けることができます。

配偶者特別控除がない場合には、所得税の額は77万2500円です。
配偶者特別控除がある場合には、所得税の額は69万6500円です。
差額は、7万6000円です。

(2)ケース2|納税者本人の所得600万円、配偶者の所得109万円(給与収入165万円)の場合

納税者本人の所得が900万円以下、配偶者の所得が105万円超110万円以下なので、先ほどの表により、26万円の配偶者特別控除が適用されます。

配偶者特別控除がない場合には、所得税の額は77万2500円です。
配偶者特別控除がある場合には、所得税の額は72万500円です。
差額は、5万2000円です。

配偶者の所得が多くなったことにより、ケース1と比べると、配偶者特別控除が減少して、納税者本人の減税額も少なくなっています。

もっとも、減税額が少なくなってしまう以上に配偶者の収入が増えているため、世帯で見れば収入は増えています。

配偶者特別控除の申請方法

個人事業主など年末調整のない方の場合、配偶者特別控除の適用を受けるためには、配偶者控除欄に必要事項を記入した確定申告書を納税者本人の確定申告の時に提出します。

確定申告書の配偶者控除欄には、計算した控除額を記載します。配偶者特別控除の場合であっても、確定申告書の「配偶者控除」欄に記入するのでご注意ください。

会社に勤めている給与所得者の方の場合には、年末調整で配偶者特別控除を受けることができます。
この場合、「給与所得者の配偶者控除等申告書」という書類に必要事項を記入して、会社に提出すれば、配偶者特別控除を受けることができます。

なお、会社に勤めている方が年末調整で配偶者特別控除の申請をしなかった場合でも、確定申告により配偶者特別控除を受けることができます。

確定申告について詳しくはこちらをご覧ください。

確定申告とは?対象者や罰則、節税のポイントなどを詳しく解説

参考:No.2672 年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるとき|国税庁

パートで働く場合の年収と、税金・社会保険料との関係

ところで、「103万円」の壁という言葉を聞いたことはありませんか。その他にも「130万円」の壁、「150万円」、「201万円」の壁という話を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。

壁がいっぱい…。この壁って具体的にどういう意味なの?

これは、所得税の負担が重くなったり、社会保険に加入しなければならなくなる、収入の境界線のことです。

パート勤務で働く配偶者の年収と、税金・社会保険料との関係はどのようになるのか、4つの「壁」についてご説明します。

(ここからのご説明では、分かりやすくするために、パート・アルバイトで働く方を妻、フルタイム勤務で働く方を夫として表現します)

4つの「壁」について、詳しくはこちらをご覧ください。

配偶者の扶養内で働くなら知っておきたい5つの「○○万円の壁」

(1)103万円の壁

パート・アルバイトなどで働く妻の給与収入が103万円を超えると、夫は48万円の配偶者控除を受けられなくなります。

また、妻について所得税がかかり始めます。

このことから、妻の給与収入の「103万円」が、夫にとっては配偶者控除を受けられ、妻にとっては所得税がかからない「壁」となります。

(2)130万円の壁

パート・アルバイトなどで働く妻の給与収入が130万円以上になると、社会保険に加入しなければならなくなります。

給与収入が130万円以上になると全ての人が社会保険に加入しなければならなくなるからです。

(なお、給与収入が106万円以上になると、一定の条件を満たした人については社会保険に加入しなければならなくなります。このため、一部の方にとっては、「130万円」の壁の代わりに「106万円」の壁が存在することになります)

社会保険に加入すると、社会保険料を支払わなければならず、その分手取り額が減ります。

このことから、妻の給与収入の「130万円」が、妻が社会保険に加入しなくてもよい「壁」となります。

もっとも、この「130万円の壁」により、保険料の負担を避けるために、労働時間を調整していた人も少なくありませんでした。

そこで、人手不足に対応するため、一時的に年収が130万円以上になった場合でも、事業主の証明により、第三号被保険者でいられることとなりました。(2023年10月から開始された施策。一時的な年収増加を前提としたものである点にご注意ください)

また、施策内容は今後変更される可能性もあります。

参考:年収の壁・支援強化パッケージ|厚生労働省

(3)150万円の壁

パート・アルバイトなどで働く妻の給与収入が150万円までであれば、夫はここまででご説明した配偶者特別控除のうち最も高い額(38万円)の控除を受けることができます。

しかし、配偶者特別控除の額は、妻の給与収入が150万円を超えると、妻の給与収入が上がるのに応じて少なくなっていきます。

このことから、妻の給与収入の「150万円」が、夫が最も高い配偶者特別控除を受けることができるための「壁」となるのです。

このように、収入が増えるにつれ、世帯全体の税金や社会保険料の負担が重くなっていきます。

そのため、配偶者の一方が、パート・アルバイトの場合は、税金や社会保険料の負担も考慮した上で、目指す収入をいくらにするのかあらかじめ考えておく必要があります。

(4)201万円の壁

配偶者特別控除は、配偶者の給与収入が103万円を超えて約201万円までが対象です。
パート・アルバイトによる妻の給与収入が約201万円を超えると、配偶者特別控除の額がゼロになってしまいます。

このことから、妻の給与収入の「201万円」が、配偶者特別控除が適用されなくなる「壁」となるのです。

【まとめ】配偶者控除が受けられない方は、配偶者「特別」控除をチェック

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 配偶者特別控除とは、配偶者に48万円(2019年分以前は38万円)を超える所得があるため「配偶者控除」の適用が受けられないときでも、配偶者の所得金額に応じて受けられる可能性がある所得控除のこと。
  • 配偶者控除とは、年間の合計所得金額が48万円以下(2019年分以前は38万円以下)であること(給与のみの場合は給与収入が103万円以下であること)などの一定の条件を満たした配偶者がいる場合に、受けることができる所得控除のこと。
  • 配偶者特別控除を受けるための要件として、配偶者が納税者と生計を一にしていること、配偶者の年間の合計所得金額が48万円超133万円以下(2020年分以降)であることなどがある。
  • 配偶者特別控除の控除額は、納税者本人の所得額と配偶者の所得額に応じて決定される。

配偶者の所得が多い場合には、もう控除を受けることができないと思ってしまわれるかもしれません。

しかし、配偶者の所得が一定額以上であっても、配偶者特別控除という形で所得控除を受けられる可能性があります。

諦めてしまう前に、配偶者特別控除が受けられないか確認してみましょう。

配偶者特別控除に関して疑問な点がある場合には、所轄の税務署など税についての相談窓口に相談してみてください。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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