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年末調整と確定申告は両方やるの?違いや必要な10個のケースを解説

作成日:更新日:
s.miyagaki

「会社で年末調整してるから、確定申告は必要ないよね?」

会社で年末調整をしている方でも、確定申告が必要なケースがあります。例えば、医療費控除を受けるためには確定申告が必須です。

また、副業収入のある方が確定申告せずにいると、元々払うべきだった金額に「無申告加算税」などのペナルティを上乗せされてしまうおそれもあります。

受けられたはずの控除や還付が受けられない・支払うべき金額が増えてしまうといったデメリットを回避するには、年末調整が必要かどうかしっかり押さえておく必要があります。

この記事では、

  • 確定申告と年末調整の違い
  • 年末調整をしていても、確定申告が必要な10個のケース
  • 確定申告しなかった場合のデメリット

について弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

目次

年末調整と確定申告の違いとは?

年末調整とは、勤務先が行うもので、天引きされた所得税の過不足を調整するための手続きです。会社員など、給与所得がある人のための手続きです。

一方、確定申告とは、1年間の収支や支払うべき額について自分で申告し、支払うべき額を払い、受けるべき控除や還付があれば受けるという手続きです。

年末調整を受けないフリーランスや自営業の方が主な対象ですが、年末調整を行っている方でも確定申告が必要な場合はあります。

それでは、年末調整と確定申告の概要をご説明します。

(1)年末調整とは

年末調整とは、給与から天引きされた所得税を再計算し、過不足があれば調整するための手続きです。支払い過ぎた金額があれば12月や1月の給与がいつもより増え、逆に不足額があれば12月や1月の給与が減ります。

勤務先が行う手続きで、会社員など給与所得のある方のみが対象となります。
※年末調整の手続きそのものは勤務先が行ってくれますが、手続きに必要な書類を勤務先に提出しなければならないことがあります。

(2)確定申告とは

確定申告とは、1年間(1月1日~12月31日)の収支や支払うべき額について税務署に申告し、支払うべき額を支払い、受けるべき控除や還付があれば受ける手続きです。

個人の方の場合、確定申告をしなければならない人の多くは個人事業主です。会社員の方の場合、年末調整だけで済むという方も少なくありません。

ただし、会社員の方でもその年中に支払うべきことが確定した給与等が2000万円を超えている場合、確定申告は必須です。その年中に支払うべきことが確定した給与等が2000万円を超える方は、年末調整を受けられないからです。

確定申告について、詳しくはこちらをご覧ください。

確定申告とは?対象者や罰則、節税のポイントなどを詳しく解説

年末調整をしていても確定申告が必要な10個のケース

年末調整をしていて、税抜き前の収入が2000万円以下の人なら「確定申告は必要ない」とは限りません。

例えば、次の10個のケースのうちどれかに当てはまっている場合、確定申告が必要な場合があります。

<確定申告をする法的義務はないが、しておくとメリットのあるケース>

  • 医療費控除を受けたいケース
  • ふるさと納税をして、控除や還付を受けたいケース
  • 寄付金や雑損などの控除を受けたいケース
  • これから住宅ローン控除を受けようとするケース
  • 年末調整の書類に不備があったケース

<法律上、確定申告をする義務があるケース>

  • 副業で20万円超の利益があったケース
  • 「源泉徴収ありの特定口座」を利用しない株取引で、20万円超の利益があったケース
  • 転職前の職場の収入を、年末調整に反映できていないケース
  • 不動産を売却することで利益が出たケース
  • 一定の保険金を受け取ったケース

それぞれについてご説明します。

(1)確定申告をする法的義務はないが、しておくとメリットのあるケース

まず、確定申告をする法的義務はない(しなくてもペナルティがあるわけではない)ものの、確定申告をすれば控除により税金が安くなる・還付が受けられるなどのメリットがあるケースについてご説明します。

(1-1)医療費控除を受けたいケース

年末調整では医療費控除を受けられないため、医療費控除を受けたい場合には、確定申告をする必要があります。

自分や一定の範囲の家族のために、

10万円超の医療費
(総所得金額が200万円以下:総所得金額の5%超)


を負担した場合、確定申告を通じて医療費控除を受けられれば、所得税や住民税が減額されます。

「今年は医療費が結構かかったな」と思われた方は、特に注意が必要です。

医療費控除について、詳しくはこちらをご覧ください。

確定申告における医療費控除とは?対象となる金額や注意点を解説

(1-2)ふるさと納税をして、控除や還付を受けたいケース

ふるさと納税による控除や還付を受けたいケースでも、確定申告が原則として必要です(次にご説明する「ワンストップ特例」を利用するケースを除きます)。

参考:ふるさと納税のしくみ 税金の控除について|総務省

※「ワンストップ特例」を利用すれば、ふるさと納税については確定申告不要

ただし、「ワンストップ特例」を利用すれば、ふるさと納税についての確定申告は不要となります。ワンストップ特例を利用できるのは、次の条件を全て満たしている場合です。

  • ふるさと納税の寄付先の自治体が、1年間で5個以内である
  • もともと確定申告をする必要がない
  • それぞれの自治体へのふるさと納税の際に、特例についての申請書を漏れなく提出した

参考:ふるさと納税トピックス|総務省 ふるさと納税ポータルサイト

(1-3)寄付金や雑損などの控除を受けたいケース

医療費控除やふるさと納税以外でも、寄付金や雑損(※)などの控除を受けたい場合には、原則として確定申告が必要です。

※雑損控除:災害や盗難、横領などで、納税者本人や一定の範囲の家族の自宅や生活に欠かせない家財といったものに損害が出た場合、一定の額を課税所得から控除できるというものです。課税所得が下がった分、所得税や住民税の節税につながります。

(1-4)これから住宅ローン控除を受けようとするケース

住宅ローン控除(※)を受けたい場合、始めの年には確定申告が欠かせません。

2年目以降であれば、年末調整の際に必要書類を提出すればよいのですが、始めの年には確定申告を通じて「住宅ローン控除を受けたいです」と示す必要があるのです。

※新しく家を建てたり、取得した場合は「住宅借入金等特別控除」です。一方、バリアフリーや省エネなどのために一定の増改築をした場合は「特定増改築等住宅借入金等特別控除」となります。

(1-5)年末調整の書類に不備があり、年末調整の期限を過ぎたケース

年末調整の時に提出した書類に不備があると、確定申告が必要となるケースがあります。

年末調整の期限までに修正して再提出すれば確定申告は不要ですが、過ぎてしまった場合、修正のためには確定申告が必要となるのです。

例えば、扶養家族が増えた場合、年末調整のときに扶養控除等申告書を不備なく作成・提出できれば確定申告をしなくても扶養控除を受けられます。

しかし、不備があって年末調整の期限を過ぎてしまった場合、扶養控除を受けるためには確定申告が必要となります。

(2)法律上、確定申告をする義務があるケース

次に、法律上、確定申告をする義務があるケース(しないでいると、本来支払うべきだった額に加えて、無申告加算税などのペナルティーが発生する可能性のあるケース)についてご説明します。

(2-1)副業で20万円超の所得があったケース

副業で20万円を超える所得があったケースでも、基本的に確定申告が必要です(所得税法121条1項1号)。

所得とは、入ってきたお金(収入)から必要経費を引いた額です。次の金額の合計が20万円を超えている場合に、原則として確定申告が必要となります。

  • 利子所得:預貯金に発生した利息など
  • 配当所得:株の配当など
  • 不動産所得:土地や建物を貸した場合の賃料など
  • 事業所得:事業によって得られた所得
  • 山林所得:山林を譲渡して得られた所得(※1)
  • 譲渡所得:土地や建物などの資産を譲渡して得られた所得
  • 一時所得:競馬の払戻金や生命保険の一時金など(※2)
  • 雑所得:上のいずれにも当てはまらない所得

※1…山林を取得してから5年以内に伐採・譲渡した場合には、事業所得か雑所得として扱われます。
※2…営利目的で継続的にしている行為によって生じたものを除きます。

また、2ヶ所以上で給与をもらっている方の場合、副業先の給与が20万円を超えている場合には、原則として(※)確定申告をする義務があります。

※次の2つを両方満たしている場合を除きます。

  • 給与所得の合計額から、所得控除の合計額(雑損控除、医療費控除、寄付金控除、基礎控除を除く)を引いた金額が150万円以下
  • 所得金額の合計額(給与所得や退職所得以外)が20万円以下

もっとも、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出していない勤務先(基本的に副業の方)では、原則として年末調整が行われません。そのため、正確な所得税の額を算出するためには、確定申告が必要となります。

(2-2)「源泉徴収ありの特定口座」を利用しない株取引で、20万円超の利益があったケース

株取引で20万円を超える利益が出た場合、基本的に確定申告が必要です。

ただし、源泉徴収ありの特定口座(源泉徴収選択口座)を利用している場合には、確定申告は基本的に必要ありません。源泉徴収ありの特定口座の場合、証券会社や銀行が税金の計算や納税を済ませてくれるからです。

株取引や副業で損をして、他に確定申告が必要な収入もない赤字の場合、法律上は確定申告が不要です。

もっとも、赤字について確定申告をすることで、損失を繰り越して、今後3年間の節税につなげられる可能性はあります(純損失の繰越控除)。

このように、赤字であっても確定申告をするメリットがあるケースもありますので、確定申告した方がよいかどうか念のため検討してみることをおすすめします。

※株や副業などの利益が20万円以下でも、住民税の申告は必要

源泉徴収ありの特定口座を利用していない場合でも、「株取引や、その他の副業などによる所得が20万円以下」であれば、確定申告は基本的に必要ありません(所得税法121条1項1号)。

しかし、このような場合であっても住民税の申告は必要です。住民税の場合、確定申告によって支払う所得税とは異なり、「20万円以下なら発生しない」という特例がないからです。

住民税の申告方法については、お住まいの自治体のホームページなどをご確認ください。

株式投資と確定申告について、詳しくはこちらをご覧ください。

株式投資で確定申告が必要なケースとは? ペナルティや節税対策も解説

参考:住民税の申告|豊島区公式ホームページ

(2-3)転職前の職場の収入を、年末調整に反映できていないケース

転職をした方で、転職前の職場での収入を年末調整に反映できていないケースでは、原則確定申告が必要となります。

転職前の職場から源泉徴収票をもらい、転職後の職場にその源泉徴収票を提出すれば、「転職前の職場での収入」についての確定申告は基本的に必要ありません。転職後の職場での年末調整の際に、転職前の職場の収入も反映されるからです。

しかし、このような処理ができなかった場合には、転職前の職場での収入について自分で確定申告をしなければなりません。

(2-4)不動産を売却することで利益が出たケース

土地やマンションなどの不動産を売却することで利益が出たケースでも、原則として確定申告が必要です。

具体的には、次のような計算をした値がプラスとなる場合に、その額を「課税譲渡所得金額」として確定申告を行う必要があります(所得税法33条3項)。

譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-(一定の場合:特別控除額)


取得費:不動産の購入代金や仲介手数料など
譲渡費用:仲介手数料や取壊し費用など
特別控除額:例えばマイホームを譲渡した場合、基本的に3000万円

(2-5)一定の保険金を受け取ったケース

満期保険金や解約返戻金など、保険金を受け取った場合には、確定申告が必要となるケースがあります。

「保険料を支払った人=お金を受け取った人」の場合(※)、受け取ったお金について所得税が発生します。そのため、お金を受け取った人は確定申告をする必要があります。

※保険料を支払った人と受け取った人が違う場合、所得税ではなく、贈与税や相続税などが発生します。そのため、確定申告ではなく、これらの税金についての申告をする必要があります。

確定申告しないでいるとどうなる?

「年末調整すら面倒だったのに、確定申告なんてできない」と思われる方もいらっしゃることと思います。ですが、確定申告をしないでいると次のようなデメリットが生じるおそれがあります。

  • 支払うべき金額が増えてしまうおそれ
  • 控除や還付を受けられない

それぞれについてご説明します。

(1)支払うべき金額が増えてしまうおそれ

確定申告をしないでいるデメリットの1つめが、「支払うべき金額が増えてしまうおそれがある」ことです。

副業など、確定申告が必要な収入源のある方が確定申告をしないでいると、所得税などの支払うべき税金を滞納していることとなってしまいます。

そのため、本来確定申告を通じて支払うべきだった金額に、次のような金額がペナルティとして上乗せされてしまうおそれがあるのです。

  • 無申告加算税➡原則、未払いの額の15%
    (未払い額が50万円を超える場合、超過部分については20%)
  • 延滞税➡滞納の期間が長引くほど高くなる
  • 【無申告が特に悪質だと】重加算税➡原則、未払い額の40%

こうしたペナルティの上乗せを避けるために、申告期間中に確定申告を終えましょう。

(2)控除や還付を受けられない

確定申告が必要な収入源は特にないという方でも、確定申告せずにいると控除や還付などを受けられなくなってしまいます。

例えばふるさと納税の場合、単に自治体を支援するという目的だけでなく、所得税や住民税の節税も兼ねて行なっている人がほとんどなのではないでしょうか。

「ワンストップ特例」を利用しない限り、条件を満たしていても、肝心の確定申告をしなければ、控除や還付を受けることはできません。ふるさと納税だと、本来の価格の何倍もかけて返礼品を買っただけということになります。

先ほどご説明したような上乗せペナルティこそないものの、経済的に見て損することとなる点は変わりませんので、確定申告するようにしましょう。

確定申告をしなかった場合のペナルティやデメリットについて、詳しくはこちらをご覧ください。

確定申告をずっとしてないとどうなる?ペナルティや対処方法を解説

【まとめ】年末調整した人でも、確定申告が必要な場合はある

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 確定申告とは、1年間(1月1日~12月31日)の収支や支払うべき額について税務署に申告し、支払うべき額を支払い、受けるべき控除や還付があれば受ける手続き
  • 年末調整とは、給与から天引きされた所得税を再計算し、過不足があれば調整するための手続き
  • 次の10個のケースのうちどれかに当てはまっている場合、年末調整を受けている方でも確定申告が必要となる場合がある。

<確定申告をする法的義務はないが、しておくとメリットのあるケース>
〇医療費控除を受けたいケース
〇ふるさと納税をして、控除や還付を受けたいケース
〇寄付金や雑損などの控除を受けたいケース
〇これから住宅ローン控除を受けようとするケース
〇年末調整の書類に不備があり、年末調整の期限を過ぎたケース

<法律上、確定申告をする義務があるケース>
〇副業で20万円超の利益があったケース
〇「源泉徴収ありの特定口座」を利用しない株取引で、20万円超の利益があったケース
〇転職前の職場の収入を、年末調整に反映できていないケース
〇不動産を売却することで利益が出たケース
〇一定の保険金を受け取ったケース

確定申告せずにいると、次のようなデメリットが生じるおそれがある。
●支払うべき金額が増えてしまうおそれ
●控除や還付を受けられない

「面倒だから」と放置して思わぬ損をしないよう、確定申告が必要な方はしっかり確定申告をすることがおすすめです。

確定申告の方法についてご不明点のある方は、国税庁の相談窓口へお問い合わせください。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年3月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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