「FX取引をしているけれど、確定申告は必要なのかな?」
実は、FXをしている場合には、確定申告を行う必要がある人とそうでない人がいます。
FXで利益が出た場合には、確定申告を行う必要があります。また、FXで損失がでていたとしても、確定申告をしたほうがよいケースもあります。
このことを知っておくと、適切に確定申告をすることができ、場合によっては節税をすることができる可能性があります。
今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- FXの確定申告とは
- FXの確定申告が必要なケース
- FXで損失が出ている場合の確定申告
- FXの確定申告で経費計上できるもの
- FXの確定申告のやり方
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
FXの確定申告とは?
FXで利益が出た場合には、確定申告を行う必要があります。
「確定申告」とは、年間の所得(利益)を計算したうえで、その所得にかかる税金を計算し、申告する手続きのことです。
FXの場合には、為替差益やスワップポイントなどにより得た利益が対象となります。FXで利益が出た場合には、FXで得た利益はほかの所得とは区別し、「先物取引に係る雑所得等」として課税されます。
税率は、「所得税15%+地方税5%=合計20%」です(なお、2017年から2037年までの確定申告においては、復興特別所得税も加わります)。
参考:No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係|国税庁
確定申告について詳しくはこちらをご覧ください。
FXの確定申告が必要なケース
FXの確定申告が必要なケースを、主たる所得別にご説明します。
(1)給与所得がある人
会社員などの給与所得がある人の場合、一般的には確定申告をする必要がないケースが多いです。
しかし、給与所得がある人のうち、給与所得や退職所得を除いた所得の合計額が20万円を超える人については、確定申告をしなければなりません。
このことから、会社員などが副業でFXをやっている場合には、FXで得た所得(利益)が20万円を超える場合には、確定申告をする必要があります。
また、FXで得た所得以外にも、給与所得・退職所得以外の所得がある場合(たとえばFX以外の副業をしていて利益が出ている場合など)には、その所得とFXで得た所得との合計額が20万円を超える場合には、確定申告をする必要があります。
「FXで得た利益(+その他の副業等で得た利益)>20万円」の場合は、確定申告の必要あり
(2)給与所得などがなくFXによる所得のみがある人
給与所得などがなくFXによる所得のみがある人の場合、FXによる所得の額から「基礎控除」などの所得控除を差し引いて、課税される所得金額がプラスである場合には、確定申告をする必要があります。
「基礎控除」とは、原則として全ての人が所得から差し引くことのできる控除のことです。基礎控除の額は、原則として48万円です。
このことから、FXで得た所得が48万円以下の場合には、確定申告をする必要がないということになります。
所得控除には、基礎控除以外のものもあるので、全ての所得控除の合計額よりも、FXで得た所得の額のほうが大きいという場合に初めて確定申告をする義務が生じることになります。
(3)公的年金等に係る雑所得のみがある人
「公的年金等に係る雑所得」とは、老齢年金などの公的年金による所得のことです。公的年金等に係る雑所得のみがある人の場合には、次の要件をいずれも満たす場合以外は、確定申告が必要となります。
- 公的年金等の収入の額が400万円以下であること
- その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となること
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であること
つまり、少なくともFXでの所得が20万円を超える場合には、確定申告をする必要があるということになります。
FXで損失が出ている場合の確定申告について
基本的には、FXで損失が出ている場合(利益が出ていない場合)は、確定申告の必要はありません。
しかし、FXの場合には、損失が出ている場合であっても確定申告をしたほうが良いケースがあります。このことについてご説明します。
(1)損失の繰越控除により翌年以降の利益と相殺できる
FXの場合、一定の要件を満たした確定申告をすれば、3年にわたって損失を繰り越すことができる「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」を利用することができます。
本来FXで利益が出れば課税の対象となります。しかし、例えば利益が出た年の前年に損失が出ていた場合に、一定の要件を満たした確定申告をしていれば、損失を繰り越して利益と相殺することができます。
これにより、損失と利益とを相殺しない場合と比べて、支払う税金の額を低く抑えることができます。「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」について、詳しくは次のページをご覧ください。
参考:No.1523 先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除|国税庁
(2)損益通算により利益と損失を相殺できる
複数の会社でFXの取引をしている場合には、各社の損失と利益を相殺することができます(損益通算)。
「損益通算」
複数社でFX取引➡各社の損失と利益を「相殺」できる
例えば、A社で80万円の利益、B社で10万円の損失が出ている場合を考えてみましょう。
この場合に、損益通算をしなければ、80万円の利益に対して税金がかけられることとなり、税額が高くなってしまいます。
これに対して、損益通算をすれば合計での利益は70万円であるとみなされることとなり、税金の額は損益通算をしなかった場合と比べてより少なくなります。
このように、損益通算をすることで納める税金の額を抑えることができます。なお、FXでの損失は、FX以外の所得との間で損益通算をすることはできません。
また、国内FX会社と海外FX会社との間では損益通算をすることはできません。国内同士、海外同士の会社であれば損益通算をすることができます。
FXの確定申告をする際に経費計上できるもの
確定申告に際して、かかった経費をしっかりと計上することで、課税対象となる所得の金額を抑えることができます。これにより節税につなげることが可能となります。
FXの場合には、次のものなどが必要経費として計上できる可能性があります。
- 通信費:FX取引で使用しているインターネットの接続料やプロバイダ料金など
- 図書費:新聞代、関連雑誌代
- 取引手数料:FX取引の際にFX会社に支払う手数料など
もっとも、これらであってもFX取引と直接関係しないものは、必要経費として計上できないので注意しましょう。
FXの確定申告のやり方
FXの確定申告の流れは、次のとおりです。
必要書類の準備
確定申告書の作成
確定申告書の提出
税金の納付
これらについてご説明します。
(1)必要書類の準備
まずは必要書類を準備します。必要書類としては、次のものなどがあります。
- 確定申告書B
- 所得税申告書第三表(分離課税用)
- 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書
- (FX損失の繰越控除を使う場合)所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)
- 年間取引報告書(年間損益報告書)
- (給与所得がある場合)源泉徴収票
(2)確定申告書の作成
確定申告書は、自分で作成することもできますが、税理士などの専門家に依頼する方法もあります。
自分で作成する場合には、国税庁ウェブサイトの「確定申告書等作成コーナー」で作成することができます。そのほか、確定申告用のPCソフトウェアを使用して作成する方法もあります。
(3)確定申告書の提出
必要書類がそろい、確定申告書の作成が完了したら、所轄の税務署等に確定申告書を提出します。提出方法には、次のものがあります。
・税務署の窓口に持参する
・税務署の時間外収集箱に投函する
・書留などにより税務署に郵送する
このほか、e-Taxを利用して電子申告をするという方法もあります。
e-Taxとは、正式名称を「国税電子申告・納税システム」といい、国税庁が運営する納税等に関するオンラインサービスのことです。e-Taxを利用するには、事前登録が必要です。
参考:【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)|国税庁
(4)税金の納付
確定申告の結果、納付するべき所得税等の税金が発生した場合には、納税します。納税の方法としては、次のものがあります。
納付の方法 | 概要 |
---|---|
ダイレクト納付 | e-Taxによる操作で、預金口座等からの振替により納付する方法 |
インターネットバンキング等 | インターネットバンキング等から納付する方法 |
クレジットカード納付 | クレジットカードを使い、民間の納付受託者に納付を委託する方法 |
コンビニ納付 | コンビニの窓口で納付する方法 |
振替納税 | 預金口座等からの振替により納付する方法 |
窓口納付 | 所轄の税務署や金融機関の窓口で納付する方法 |
【まとめ】FXで利益が出た場合には、確定申告を行う必要がある
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- FXで利益が出た場合には、確定申告を行う必要がある。
- FXの税率は、原則「所得税15%+地方税5%=合計20%」。
- 会社員など給与所得がある人の場合、給与所得や退職所得を除いた所得の合計額が20万円を超える人については、確定申告をしなければならない。このことから、「FXで得た利益(所得)が20万円を超える場合」には確定申告をする必要がある。
- 給与所得などがなく、FXによる所得のみがある人の場合、「FXによる所得の額から「基礎控除」などの所得控除を差し引いて、課税される所得金額がプラスである場合」には、確定申告をする必要がある。
- 公的年金等に係る雑所得のみがある人の場合には、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下であることなど、一定の条件を満たさない場合には、確定申告を行う必要がある。このことから、少なくとも少なくとも「FXでの所得が20万円を超える場合」には、確定申告をする必要がある。
- 基本的には、FXで損失が出ている場合(利益が出ていない場合)には、確定申告の必要がない。しかし、FXの場合には、損失が出ている場合であっても確定申告をしたほうが良いケースがある。
- FXの場合、3年にわたって損失を繰り越すことができる「先物取引の差金等決済に係る損失の繰越控除」を利用して、支払う税金の額を低く抑えることができる。この制度を利用するためには、一定の要件を満たした確定申告をすることが必要。
- 複数の会社でFXの取引をしている場合には、各社の損失と利益を相殺することができる(損益通算)。
- 確定申告に際して、取引手数料などのかかった経費をしっかりと計上することで、課税対象となる所得の金額を抑えることができる。これにより、節税につなげることが可能。
- FXの確定申告の流れは、「必要書類の準備→確定申告書の作成→確定申告書の提出→税金の納付」という流れ。
FXで利益が出ると、ついFXに熱中して確定申告をおろそかにしがちになってしまうかもしれません。しかし、FXで利益が出た場合には、しっかりと確定申告をしなければなりません。
FXに専念できるように、この記事でFXの確定申告について確認し、確定申告の不安を解消しましょう。
確定申告について分からないことがある場合には、税についての相談窓口などに相談してみてください。