「自動車税っていつ払うんだっけ…。年度の途中で廃車にしたらどうなるのかな?」
自動車を購入・保有する場合には、自動車に関するいろいろな税金を支払わなければいけませんよね。
直接税(税を納める人と負担する人が同じ税金)として、購入時の『自動車取得税(2019年9月末まで)』や『環境性能割』(2019年10月以降)』、新規登録時や車検時の『自動車重量税』、そして、毎年かかる『自動車税(種別割)』(軽自動車の場合は『軽自動車税(種別割)』)などがあります(本記事では、単に「自動車税」、「軽自動車税」といってご説明します)。
また、間接税(税を納める人と負担する人が異なる税金)としては、自動車購入時の消費税や燃料購入時のガソリン税(揮発油税及び地方揮発油税)や軽油引取税などもあります。
今回は、自動車にかかる税金のうち、「自動車税」について次のことを弁護士がご説明します。
- 自動車税の性質
- 自動車税の納付時期や支払方法
- 自動車税の税額
- 年度途中に購入・廃車にした場合
- 自動車税を滞納した場合のデメリット
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
自動車税って何?誰がどこに払うもの?

自動車税とは、4月1日時点の自動車(*二輪の小型自動車、軽自動車及び特殊自動車を除く。単に「自動車」と言ってご説明します)の所有者が、都道府県に納めなければいけない税金です。
なお、軽自動車の場合には、4月1日時点の所有者が市区町村に対して「軽自動車税」を納めなければいけません。
自動車税・軽自動車税は年税ですので、1年に1回、4月1日から翌3月31日までの分を原則として一括納付します。
自動車税や軽自動車税は、いずれも車を保有していること自体に課税される地方税として、地方公共団体の重要な財源となっているのです。
自動車税の納付時期はいつ?どうやって払う?
自動車税や軽自動車税は、(各地方公共団体によって若干違いますが)多くの場合はゴールデンウイーク明け頃に納税通知書(通常は、納付書と領収書がセットになったもの)が届きます。
納付期限は、原則として毎年5月末日です(*一部、6月末日を納付期限とする地方公共団体もあります)。
自動車税や軽自動車税は「普通徴収」ですので、納付書を受け取った後、金融機関などでご自身が納付をしなければいけません。
納付書を紛失してしまったのか、見当たりません。
どうしたら良いですか?
納付書は再発行してもらえます。
- 自動車税の場合は、各都道府県の自動車税事務所
- 軽自動車税の場合は、各市区町村の役所の窓口
に連絡をして紛失したことを伝えましょう。
近年ではクレジットカードや電子マネーで支払いができる地方公共団体も増えています。納付期限を過ぎると延滞金がかかりますので、納付期限を守って支払いをすることが大切です。
自動車税はいくら?
自動車税の税額は、総排気量によって異なります。
総排気量ごとの自動車税は次の表のとおりです。
乗用車(自家用)の自動車税
総排気量 | 税額 | |
---|---|---|
2019年9月30日以前に新車登録された場合 | 2019年10月1日以降に新車登録された場合 | |
1000cc以下 | 2万9500円 | 2万5000円 |
1000cc超~1500cc以下 | 3万4500円 | 3万0500円 |
1500cc超~2000cc以下 | 3万9500円 | 3万6000円 |
2000cc超~2500cc以下 | 4万5000円 | 4万3500円 |
2500cc超~3000cc以下 | 5万1000円 | 5万0000円 |
3000cc超~3500cc以下 | 5万8000円 | 5万7000円 |
3500cc超~4000cc以下 | 6万6500円 | 6万5500円 |
4000cc超~4500cc以下 | 7万6500円 | 7万5500円 |
4500cc超~6000cc以下 | 8万8000円 | 8万7000円 |
6000cc超 | 11万1000円 | 11万0000円 |
なお、軽自動車税は、自家用(四輪車)の場合は一律1万800円です(2015年4月1日以降に新規検査を受けた場合。それ以前は7200円)。
排気ガスの出ない電気自動車の場合はいくらですか?
電気自動車は「総排気量1000cc以下」に該当しますので2万5000円です(2019年10月1日以降に新車登録された場合)。
自動車税に関する「グリーン化特例」について
現在(*2022年5月時点)、「グリーン化特例」といって、燃費や排ガス性能によって自動車税・軽自動車税の負担が時限的に、軽減又は重課されています。
自動車税が軽減される自動車(自家用車の場合)
グリーン化特例の軽減措置の対象となる自動車は、次のとおりです。
- 電気自動車
- 燃料電池自動車
- 天然ガス自動車
(平成21年排出ガス規制NOx10%以上低減又は平成30年排出ガス規制適合) - プラグインハイブリッド自動車
これらの車については、2021年4月1日~2023年3月31日の適用期間中に新車登録等を行った場合に限り、翌年度分について自動車税がおおむね75%軽減される特例措置が適用されます。
例えば2021年5月1日に電気自動車を購入・新車登録をした場合、本来の自動車税は2万5000円ですが、翌年の自動車税は6500円になります。
減税される自動車税は、翌年1年分だけです。
自動車税が重課される自動車(自家用車の場合)
他方、次の車については、「グリーン化特例」により自動車税が重課されます。
税金が重課される車
- 新車登録から13年を超えたガソリン車・LPG車
- 新車登録から11年を超えたディーゼル車
これらの車については、2021年4月1日~2023年3月31日の適用期間中、自動車税がおおむね15%重課されます。
※電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、ガソリンハイブリッド自動車、一般乗合バス及び被けん引車については、重課の適用外です
※バス(一般乗合バスを除く)及びトラック(被けん引車を除く)については、おおむね10%重課されます。
例えば、2005年に購入・新車登録をした排気量1500ccの自家用自動車(ガソリン車)の場合、本来の自動車税は3万4500円ですが、グリーン化特例により、2021年4月1日~2023年3月31日の適用期間中はおおむね15%重課された3万9600円になります。
なお、グリーン化特例の重課は、軽減とは違い1年間に限らず、永久登録抹消するまで重課されることになります。
軽自動車税が軽減される軽自動車(自家用車の場合)
「グリーン化特例」は軽自動車にも適用されます。
次の軽自動車(自家用)については、「グリーン化特例」により軽自動車税が軽減されています。
- 電気自動車
- 天然ガス自動車(平成21年排出ガス規制NOx10%以上低減又は平成30年排出ガス規制適合)
これらの車については、2021年4月1日~2023年3月31日の適用期間中に最初の新規検査を受けた場合に限り、翌年度の1年分に限り、軽自動車税がおおむね75%軽減される特例措置が適用されます。
例えば2021年5月1日に軽電気自動車を自家用車として購入・新規検査を受けた場合、本来の軽自動車税1万800円のところ、軽減措置により2700円になります。
軽自動車税が重課される軽自動車(自家用車の場合)
他方、次の軽自動車は、軽自動車税が重課されます。
- 初めて車両番号の指定を受けてから13年を経過した三輪以上の軽自動車
これらの車については、2021年4月1日~2023年3月31日の適用期間中、軽自動車税がおおむね20%重課されます。
※電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、ガソリンハイブリッド自動車及び被けん引車は除きます
地方公共団体によっては、上でご紹介したグリーン化特例よりもさらに自動車税・軽自動車税が優遇されていることもあります。
また、その他、地方公共団体によって、障害のある方や生活保護を受けている方などの自動車税・軽自動車税の減免制度などもありますので、お住まいの地方公共団体の特例についても個別に調べてみてください。
年度途中で車両を購入した場合は?
それでは、年度途中で自動車や軽自動車を購入した場合の自動車税・軽自動車税についてご説明します。
自動車税について
先ほどご説明したとおり、自動車税は本来年税ですが、年度の途中で自動車(新車)を購入・新規登録をした場合には、「月割課税」といって、新規登録をした日の翌月から年度末までの月数に応じて課税されます。
課税される金額は、先ほどご紹介した自動車税の年額を12で割った金額×課税される月数です(*100円未満は切り捨て)。
例えば、2021年5月15日に1500ccの新車(ガソリン車)を購入して新車登録をした場合、2021年6月~2022年3月までの10か月分として2万5400円が課税されます(3万0500円÷12×10=2万5416.666…、100円未満切り捨て)。
中古車を購入して名義変更した場合はどうなりますか?
中古車を購入して名義変更をする場合、4月1日時点の所有者がその年度の自動車税を支払い済みのはずです。名義変更をしても自動車税は還付されませんから、通常は購入した月に応じて、前の所有者に月割りした自動車税相当額を支払うことが多いです。
軽自動車税について
他方、軽自動車税は、年度途中に新車を購入・新規検査を受けた場合(4月2日以降ということです)には、その年の軽自動車税は発生しません。
ですから、翌年度まで軽自動車税を支払う必要はありません。
え、それでは、3月に軽自動車を購入・新規検査を受けたら損ですね。
数日待って、4月2日以降に購入します!
もともと軽自動車税は、一律1万800円(自家用車の場合)とそこまで高くありません。
とは言え、3月に購入しても4月以降に購入してもどちらでも良いという場合には、4月2日以降に購入すればその年の軽自動車税を支払う必要はないのでお得です。
年度途中で車を廃車・売却した場合は?
それでは、年度の途中に自動車や軽自動車を廃車にしたり、売却した場合の自動車税・軽自動車税についてご説明します。
自動車税について
まず、いったん自動車税を支払った後に自動車を「廃車」にする場合には、廃車手続をした日の翌月から翌年3月分までの自動車税が還付されます。この時の計算方法は、年度途中で自動車を購入した場合と同じです。
4月に廃車にした場合はどうなりますか?例えば、4月2日に廃車にしても自動車税はかかりますか?
たとえ4月2日に廃車にしていたとしても、4月の1か月分の自動車税を支払う必要があります。4月1日時点で、車検証上、自動車を所有しているかどうかが基準となるのです。
その場合、1年分の自動車税を払った上で、11か月分の還付を受けないといけないんですか?わざわざ納付して還付を受けるより、1か月分だけ納付した方が楽なのですが…。
各都道府県によって扱いが異なりますので一律には言えませんが、4月の前半に廃車にした場合には、4月の1か月分の自動車税の納税通知書を送るという運用をしている都道府県もあるようです。1年分の納付書が届いた場合には、廃車証明書などをもって、自動車税事務所に相談されると良いでしょう。
他方、年度途中に自動車を第三者に「売却」する場合には、都道府県からの還付は受けられません。
ただし、この場合には新所有者から年度途中の自動車税相当額が支払われるのが通常です。
4月中に自動車を売却する予定です。その場合にも1年分の自動車税を払わないといけないんでしょうか。
そうなのです。売却の場合、あくまでも4月1日時点の所有者が1年分の自動車税を払わなくてはいけません。
売却後の自動車税の負担は、買い取った方との話合いで解決する必要があります。
軽自動車を廃車・売却した場合
軽自動車の場合、年度途中で廃車にした場合であっても、軽自動車税の還付はありません。
ですから、仮に4月中に軽自動車を廃車にした場合であっても、その年度分の軽自動車税は支払わなくてはいけません。
また、年度途中の軽自動車の売却についても、やはり軽自動車税の還付はありません。
うーん、それは損ですね。
何とか、3月中に処分します!
そうですね。ただ、3月は手続きが混み合うので、車検証を返納する際は余裕をもってスケジュールを組まれることをお勧めします。
自動車税を払わないと、どんなデメリットがある?
それでは最後に、自動車税や軽自動車税を支払わない場合のデメリットについてご説明します。
自動車税や軽自動車税を滞納した時に生じうるリスクは、主に次の4つです。
自動車税・軽自動車税を滞納した時のリスク
(1)車検をとおせない
(2)車両の売却が困難になる
(3)延滞金が発生する
(4)財産が差し押さえられる可能性がある
(1)車検をとおせない
車を運転される方には釈迦に説法ですが、自動車であっても軽自動車であっても、定期的に車検(自動車検査)を受けなければいけません。
この時、自動車税・軽自動車税の未納があると、車検はとおりません。
万が一、車検が切れた車両を運転した場合には、道路運送車両法という法律により、6月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科される可能性があります(道路運送車両法第58条1項、第108条1号)ので、絶対に運転してはいけません。
(2)車両の売却が困難になる
自動車税や軽自動車税を納付すると、「納税証明書」が発行されます。
車を売却する際は、通常はこの「納税証明書」が必要です。
もっとも、納税証明書がなければ法律上売却できないというわけではなく、あくまでも事実上の話ですので、自動車税・軽自動車税が未納であっても買いたいという第三者がいれば売却は可能です。
ただし、通常は税金が未納になっている車両を購入しようとする相手は多くはありませんし、場合によっては足元を見られるリスクがあります。
(3)延滞金が発生する
自動車税・軽自動車税を納付期限までに支払わないと「延滞金」が発生します。
延滞金の率は、各地方公共団体や年度によって異なりますが、通常は、納付期限から1か月以内に支払う場合には大体3%未満、1か月を超えると9%未満程度になります(2022年5月時点)。
(4)財産が差し押さえられる可能性がある
自動車税も軽自動車税も「税金」ですから、滞納した場合にはそのまま放っておいてはもらえません。
自動車税や軽自動車税について規定する地方税法によれば、それらを滞納した場合には、いずれも「督促状」を発送し、それでも納付がなければ財産を差し押さえなければならないとされています。
「差押え」は、裁判をしないとできないと聞いたことがあるのですが、違うのですか?
通常の借金などは、財産を差し押さえるためには債務名義と言って、確定判決書などが必要なのですが、税金を滞納した場合には、差押えのために裁判などは必要ありません。
ですから、都道府県なり市区町村なりが差押えをしようとすれば、通常の借金などよりも迅速に財産を差し押さえられるリスクがあります。
自動車税を滞納した場合のリスクについて詳しくは、こちらの記事もご参照ください。
自動車税が払えない!滞納した場合のリスクや猶予制度について解説
【まとめ】 自動車税の納期限は、通常は毎年5月末日。燃費や排ガス性能によって軽減措置がある
今回の記事のまとめは、次のとおりです。
- 自動車税や軽自動車税は年税。4月1日時点での所有者が、4月1日から翌年3月31日までの分を支払う。
- 自動車税には「グリーン化特例」と言って、燃費や排ガス性能によって、軽減又は重課措置がある。
- 自動車税や軽自動車税は地方税。各地方公共団体によっては、グリーン化特例よりもさらに軽減されたり、身体障碍者割などの軽減措置がある。
- 年度途中に自動車(新車)を購入・登録した場合には、購入した翌月分から年度分の自動車税が課税される。
- 年度途中に軽自動車(新車)を購入・登録した場合には、その年度の軽自動車税は課税されない。
- 年度途中に自動車を廃車にした場合、廃車にした翌月から年度分の自動車税が還付されるが、売却した場合には還付はなく、新所有者との話合いによる。
- 年度途中に軽自動車を廃車にした場合や売却した場合には、自動車税の還付はない。
- 自動車税・軽自動車税を滞納した場合には、次のリスクがある。
(1)車検がとおらない
(2)売却が困難になる
(3)延滞金が発生する
(4)財産が差し押さえられる可能性がある
自動車税・軽自動車税に関する相談は、自動車税事務所(自動車税の場合)や市区町村の担当窓口(軽自動車税の場合)にお問い合わせください。